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ノウルーズ(新年)で結ばれるイラン、クルド、中央アジア、ウイグルの人々

 イラン暦の元日にあたるのは、日本の春分の日で、この日(ノウルーズ「新しい日」)は家族や親戚が集まって新年を祝う。ノウルーズを前にすると、街のいたるところに、新年の縁起物である金魚や、大麦を発芽させた小さな鉢を目にする。大麦の種は、ノウルーズの15日前に蒔かれるとされ、その新芽は新年を象徴するものと考えられている。イランでは新年の前に、多くの家庭で大掃除を行う。日常生活に不可欠な絨毯は日干しにしたり、埃を叩いて出したり、あるいは水洗いにしたりする。歴史都市イスファハーンでは、人々が市の中心を流れるザーヤンデ川の岸で絨毯をせっせと洗う光景を見かけたことがある。

ウズベキスタン・タシケントで https://www.pinterest.jp/pin/243687029806945851/


 オマル・ハイヤームが創作されたと伝えられる『ノウルーズ(新年)の書』には次のようにかかれている。

 至高なる神は〔自らの〕光から太陽を創り、太陽によって諸々の天と諸々の大地を〔明るく照らし、植物を〕育んだ。大地に住む者たちは、至高なる神の光の1つである太陽に目を向け、畏敬と尊崇をもって太陽を見つめる。なぜなら、至高なる神は、太陽の創造において他に比類なき恩恵を施しているからである。
(伝ウマル・ハイヤーム著『ノウルーズ(新年)の書』訳注・校訂:守川知子・稲葉穣)
http://www.kita.zinbun.kyoto-u.ac.jp/wp-content/uploads/2011/10/nawruz.pdf

 イラン暦のノウルーズは、イランがイスラム化する以前から行われていた行事で、ゾロアスター教の暦に基づくものだ。
国連総会は、2010年2月にペルシア文化に影響を受けた人々が祝う「3月21日」を「ノウルーズ国際デー」として認めた。イランではイスラム誕生以前に起源をもつ唯一の国家祭日で、中央アジア5カ国も国家の祝日としている。トルコでは、ノウルーズを祝うクルド人との融和のために、国民の休日となっている。

 ノウルーズは、このように太陽の恵みを強く感ずる機会でもあるが、ペルシア文化の影響を受けた国や地域で祝われ、その地理的範囲はイラン、アフガニスタン、トルコ、カフカス、ウズベキスタンなど中央アジア、新疆ウイグル自治区など中国に及ぶ。

 ノウルーズではハフト・スィーン(スィーン[ペルシア語でSの音を表す文字]で始まる七つのもの)、すなわちリンゴ、ニンニク、酢、コイン、ウルシの実、青草、とサマヌー(甘いプディング)が飾られる。青草の大麦の種は、ノウルーズの15日前に蒔かれるとされ、その新芽は新年を象徴するものと考えられている。

ノウルーズの供え物 ハフト・スィーン https://surfiran.com/nowruz-joyous-celebration-life-family/


 さらに、ノウルーズを迎えるにあたって、過去にあった不和は帳消しにすべきと考えられている。つまり、新年は気分が一新され、他者に対して寛容になれる機会ともなるのだ。ノウルーズを迎える前の最後の火曜日午後から水曜日未明にかけて「チャハール・シャンベ・スーリー」と言って灌木を燃やしてその上を飛び越える行事が行われ、皆で健康を祈願する。


チャハール・シャンベ・スーリー https://pasargad-tours.com/articles/chaharshanbe-suri-festival-of-fire/

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