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#トリノよいとこ一度はおいで  その3「アンティケセーレの世界一のパンナコッタ」

イタリアでのロックダウン解除後初めて、自分の住むピエモンテ州から外へ、2泊3日で出かけていて、目指していた最低週一の更新ができなかった。汗汗

イタリア猛暑の中、特に暑くて悪名(?)高いパダナ平原のエミリア・ロマーニャ州モデナは、パルミジャーノ・チーズやバルサミコ酢、そしてフェラーリやマセラッティの生まれ故郷だ。

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↑こんな色のフェラーリに遭遇したり

↓パルミジャーノ・チーズの生産者の中でもビオ、高品質で知られるCaseificio Reggianiの熟成庫

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でも私が目指したのはスーパーカーではなくて、世界最高峰レストランの一つ「オステリア・フランチェスカーナ」。でもその話はまた別の機会にして、今回もトリノの「オステリア・アンティケセーレ」第2回、続きます。

アンティケセーレのパスタ料理

前回はアンティケセーレの前菜の数々が、どれだけ美味しいかという話で3000文字も書いちゃった。

https://note.com/miyamoto_madamin/n/n0dbcae6c2199

その前菜たちに比べると、実はパスタ類はポテンシャルがちょっと下がる。と言っても「比べるとちょっと下がる」だけで、パスタ類もほっこりとした味わいで、マンマなおいしさは健在。ピエモンテ州の手打ちパスタ「タヤリン」の、サルシッチャ(生ソーセジ)をほぐして作ったミートソースあえとか、季節野菜(アスパラガスとかポルチーニとか)のソースとか。

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↑秋にはフレッシュポルチーニを使ったタヤリン(タリオリーニ)

それからピエモンテ風肉詰め入りパスタ「Agnolottiアニョロッティ」
(ラビオリ)は、スーゴ・ディ・アロースト(ロースト肉を作った時の
グレービーソース)であえてある。香味野菜と肉の旨味がとろとろに溶け出して混ざり合った、イタリア人が大好きなソースだ。それからジャガイモのニョッキはトマトソースかゴルゴンゾーラであえたヤツ。胃袋のキャパの関係上、どうしても優先順位をつけなきゃならないなら、前菜とデザートは絶対、そして肉料理、パスタの順番かな。(お財布のキャパを心配するなら、ここはフルで食べて飲んでも一人50ユーロぐらい)

そしてジューシーな肉料理たち

この店のセコンド料理は、海のないピエモンテの郷土料理店だから魚はなくて、ほぼ100%肉料理のみ。その中で私のイチ押しは「Stinco di maiale al fornoスティンコ・ディ・マイアーレ・アル・フォルノ」豚のスネ肉 オーブン焼き。

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↑前回に引き続き、写真がプロ級にうまい赤間博斗シェフからお借りしたスティンコのカット。

はじめ人間ギャートルズのお肉みたいな風貌のそれは、醤油使ってない? と勘ぐりたくなるほど、香味野菜をしっかり焼いた、いい味といい色がのった豚のすね肉。ナイフを入れるとするり、と骨から外れるほどよく火が通ったひと口は、ジューシーで甘しょっぱく、とびきりおいしい。付け合わせには、トロトロに焼けたポテトのオーブン焼きがぴったり。

うさぎの白ワイン煮込み

そして「Coniglio al vino bianco コニッリョ・アル・ヴィーノ・ビアンコ」
うさぎの白ワイン煮込み。クセのない白身のうさぎ肉に、塩と香味野菜とワインで煮込んだ味がしっとりと染みている。マンマの料理だから、おしゃれなソースやデコレーションはまったくなくて、そっけない見かけが、逆に期待感をますます盛り上げる。

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↑このソースだけでご飯が3倍食べられる? 写真:赤間博斗シェフ

うさぎというと、臭いんじゃない? と引く人がいるけれど、匂いが強烈なのはジビエの野うさぎ=イタリア語でレープレ。一方、養殖うさぎのコニッリョは、言われなければ鶏肉と見分けられる人は少ないと思う、あっさりと優しい味だ。もちろん私も見分けられない。笑

そしてついに、お待ちかねのアレ登場

さて。アンティパストを堪能して、セコンドも食べたら、どんなにお腹がいっぱいでも、最後に食べなければここに行く意味がないものがある。
それは。

世界一と言われるパンナコッタだ。誰が世界一と言ったかというとたぶん私なんだけど(笑)、とにかくおいしい。こんなエピソードがある。

謝るぐらいおいしかったという話

もう何年も前に、日本の某食企業の偉い人が、トリノに視察に来たいというので「じゃあ、世界一のパンナコッタを食べにお連れいたします」と日本にメールを送った。その方は内心、なーにをトリノあたりで、と思われたのか、当時東京一と言われていた東京の某高級ホテルのパンナコッタをイタリア出発前に食べていらしたそうだ。「くらべてやろうと思ったんですよ」とは後で白状してくれた話。でもアンティケセーレのパンナコッタを食べたら、

全然違います! 驚いた! ごめんなさい!! 

としきりに恐縮して、そして感動していらした。そしてついには、レシピを買い取って日本で商品化したいというプロジェクトまで飛び出したのだが、いろいろな事情が絡んで、実現はしなかった。でもそれぐらい、おいしいということ。

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↑これもピエモンテのデザート「ザバイオーネ」。卵黄に砂糖とマルサラ酒を入れて泡立てただけのシンプルデザート。卵酒風でもある。ビスケットですくってビスケットごと食べるのが王道。写真はトルチェッティという、やっぱりこれもピエモンテのビスケット。

このおいしさの秘密っていったい??

私はその企業の方の通訳として同行し、作るところを一緒に見ていたし、レシピも見たけれど、拍子抜けするほど作り方は普通だった。ピエモンテ州はアルプス山脈のお膝元だから乳製品の質がいいというのはあるけれど、でもあのパンナコッタの材料は、スーパーで買ってくる普通の生クリームと普通の牛乳、その他の材料も全然普通のものばかり。なのに何故あんなにおいしいのかわからない。似たような配合で似たようなおいしさには作れるけれど、何かがちょっとだけ違う。何だろう、何だろうと思いながら、毎回行くたびに食べている。


型から外してお皿にドン、と出しただけのパンナコッタは、
立っていられるギリギリの柔らかさで、
お皿を動かすとブルンブルンと揺れる。
他にもピエモンテのデザート「ザヴァイオーネ」や「ボネ」など
いろいろデザートあるけれど、
有無を言わさずパンナコッタ一点買いがおすすめです。

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ほぼアンティケセーレのパンナコッタのレシピ


さっきも書いた通り、某食企業の仕事を手伝った私は、アンティケセーレのパンナコッタのレシピを持っている。でもそれをここで公開することはできない。代わりに、その仕事をするよりもずっと前、初めてアンティケセーレに料理人仲間たちと行って食べて感動し、研究したレシピを特別公開。24年前、スマホもなかった時代に、食べたものの絵を描いたりメモを取ったり、あーだこーだと言いながらイタリア料理を自分の中に取り入れようと格闘していた日々。中でも秀逸で、ほぼアンティケセーレのパンナコッタに近いものが作れるレシピがこれ!

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