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055.食べて笑って生きていく #呑みながら書きました

おじいちゃんのこと。

お見舞いにいった病室でわたしの顔を見ると、手を握ってくれた。
それは思った以上に力強く、「また会いにくるからね。大好きだよ」と言いながらその手をいつまでも握り返していたのだった。

翌日、母からの着電で飛び起きる。

「いま、おじいちゃんが亡くなったの。眠ってるような穏やかな顔だったわ」
泣き声の母は続ける。
「来てくれてありがとうね、さおりの顔見られて安心したんだと思うよ」

「そんなことを言わないでよ、そしたらお見舞いに行かなきゃ良かったじゃないの。最後の最後に引導を渡したみたいじゃないの」
そう返しながらも、わたしも母も思っていたのはおじいちゃんは本当に会いたいと思っていたのだろうということ、会いに行くまで待っていてくれていたんだろうなって。

食事量が減少し、徐々に衰退していくように穏やかな最後でした。
それは穏やかな性格の祖父らしい最期でした。

祖父母宅へ向かう車内で「ジュージュー/よしもとばなな著」を読む。
無意識に選んで持参したこの本。

ざっくりとあらすじを書くと「ジュージュー」というステーキハウス(ステーキとハンバーグのお店)が舞台のお話。主人公美津子の母親が亡くなり、そのお店は美津子の父と遠い親戚の子、進一、美津子の3人で営んでいる。

美津子が恋する宮坂さんは母親を、進一は存在はしているが両親を喪失している。進一の妻夕子もまた、喪失を抱えている。
登場人物皆が、なにかしらをなくしている物語。

***

「いいかい?ステーキハウスに行ったらね。そりゃステーキは美味しいよ。でも俺はハンバーグが好きなんだよ」
祖父はそんなふうに言う。祖父が言うには美味しいお肉のお店のハンバーグはお肉の選りすぐりだから、さらに美味しさが増すのだと。

大人になる前からこの話を聞かされていたので、今でもハンバーグを選んでしまう。ナイフを入れると肉汁がジュワーと出てくるところ、目玉焼きとかアボガトとかのトッピング、なによりジュージューの鉄板で提供されるハンバーグは大人になった今でも歓声をあげたくなる。

お肉に限らないけど、食べることは命をいただくことだ。
どうぶつの肉をミンチにして食べている。その肉を捏ねて焼いていただきます。

これからおじいちゃんも焼いて骨になる。
生きているおじいちゃんにはもう会えない。

そんな時に孫はジュージューかよ、困った顔で笑うわたしに「それでいいんだよ」というおじいちゃんの声が聞こえてきた気がする。

***

作中の中で美津子はこんなふうに語るの。

私はものすごく現実的だから、進一も夕子さんも雲をつかんでるみたいな人たちに見えて、ちょっと憧れるけど、もっと体を動かしていたい。
ママみたいにちゃきちゃきとしていたい。私が店でテーブルを拭くとき、そこにママの手が見える。
ジュージューいう鉄板の湯気の向こうにお客さんの笑顔が見えるとき、そこにはママもいる。お仏壇で見る写真よりもよほど近くに感じる。そういう実感で生かされている。

身体を動かして感じることはある。
身体を動かすことは生きているそのもの。

正直でいて、その場を楽しくすること。ほんとうはきつくても、人生をまるで遊びみたいに泳いでいるふりをすること。
つらそうな人にも陽気に挨拶して、きらきらしたものを発散すること。

それでみんなの顔が照らされたみたいに明るくなるとき、あ、ママの前にいる人たちの表情と同じだ、と思ってちょっと胸があたたかくなる。
もらってる、残ってる。

母もわたしも、鰻とお稲荷さん(どちらも祖父の好物)を用意するたび、食べるたびに祖父のことを思い出している。お互いに思い出していることを感じ合っていることが親子だなって思う。

毎晩の晩酌(日本酒)を欠かさなかったおじいちゃん。
おばあちゃんお手製の梅酒で晩酌につきあうと、「孫と飲むと美味しいなあ」ていつも言ってくれた。
そうそう、鰻を食べるときには梅酒を飲んじゃいけないって教えてくれたのもおじいちゃんだ。(迷信だけどね、今でも守ってるよ)

今でも心細くなったり、はじめてのことを行う前日とかに、「お願い、おじいちゃん」って思う。

あ、守ってもらってるそう感じるときがある。
空を見上げる時とか、夕刻に飲み始めるビールとか。
亡くなってからのほうが、身近に感じるのは今までもこれからも愛されて守ってもらえているという実感があるからだろう。

飲むときには、ピッと背筋を伸ばしてしっかり味わう。
今日も一日、おつかれさま。まっとうに生きたおじいちゃんの孫に恥じないように、美味しくいただきます。

それでいいんだよね?おじいちゃん。
うんうんとうなづくおじいちゃんの優しい顔が浮かぶ。

あとがきのようなもの

懐かしいおじいちゃんのこと、思い出して書いたよ。けっこう真面目に書いちゃった。今日はビールからの梅酒ロックで。お家で飲むと濃ゆく作れるから良いね。
読書が好きな孫娘は書くのも好きで、こうやっておじいちゃんのことを伝えたりできるんだよ。えへへ。
そしたらね、文章で人とつながれるの。言葉ってすごいね、いつも好きをありがとう。

#呑みながら書きました




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たまらなく好き。のたまらなくを言葉にしたい。美しいものを美しいと思える、そんな人でありたい。「すいか」「カルテット」「逃げ恥」が忘れられない大好きドラマ。吉本ばなな/木皿泉/キャラメルボックス/ビールとワイン/お腹がすいたらスンとなる。そんな日常を愛しています。

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