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みやまる・スポーツブックス・レビュー

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#ミステリ

著者特有の「汗臭さ」と「スポーツ賛歌」が光る名著:本城雅人『騎手の誇り』

著者特有の「汗臭さ」と「スポーツ賛歌」が光る名著:本城雅人『騎手の誇り』



本城雅人といえば、野球(『ノーバディノウズ』など)やサッカー(『誉れ高き勇敢なブルーよ』など)など様々な競技で名作を書いてきた、赤瀬川隼や海老沢泰久らと並ぶスポーツライティング界を牽引する名手として言って差し支えないだろう。そして著者特有のハードボイルチックの「汗臭さ」が味わい深い。なので、競馬という、お金が直接関わってくる、ギャンブルという、より男っぽい競技の小説なら絶対面白いはずだと思って

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女騎手

女騎手



(初出:旧ブログ2017/01/15)

 騎手以外にも、馬主・調教師・厩務員といった選手以外の人々が競技を成り立たせているのは他のスポーツと同じだが、競馬はその中心に人智の及ばない動物がいることである。そして馬が中心にいることで「女騎手」は事件を複雑化させている競馬ミステリーである。

 女性ジョッキー、紺野夏海が優勝したレースで幼なじみの騎手岸本陽介が落馬し、調教師である、その父・圭司が重

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誉れ高き勇敢なブルーよ

誉れ高き勇敢なブルーよ



(初出:旧ブログ2015/12/30)

 友人が「日本のサッカー界は今"幕末"である」と発言したことがあった。代表監督は海外から呼ぶべきという「開国派」、日本人監督を育てるべきという「攘夷派」、Jリーグなんてまだまだという「倒幕派」とJリーグ最高という「佐幕派」。そこまで日本史に詳しくないけどこの指摘はなるほどと思った。

 この本の主人公、望月はJ3クラブのGM。過去に寸前で記者にリーク

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