さくら
春が、来る。
雪をかきあつめる。
鼓動をあなたに合わせるようにして、ひとつ、ひとつ。
桜が咲く。
耐えかねた想いを吐き出すように。
左手は胸に、右手は遥か彼方へ。
呼吸を重ね、その想いはあふれ出て、果てる。
どこにあるの。
どこへいったの。
輪郭など失せる。
ならば桜はまだここにいて。
嫌。待って。おいていかないで。
苦しい、悲しい、嬉しい、楽しい、寂しい、切ない、、、、、
(呼吸を吸う音)
桜が体内を満たしていく。
わたしを桜に変えていく。
わたしも桜も、やがて終わる。
散らない桜を願うのは、
咲かない桜を願うこと。
桜がとけていく。
私がとけていく。
抱いた桜の花びらをほどいてゆく。
『いつまでも、ここにいるよ。』