マガジンのカバー画像

宝塚歌劇雑文集

32
宝塚歌劇関連の雑文
運営しているクリエイター

#宝塚

れいちゃん

柚香光さんが宝塚を卒業した。 柚香光さん、れいちゃんのことは、花組配属になった時からずっと観て来たから、柚香光版の『ALL BY MYSELF』を頭の中で構成できるくらい思い出の舞台は数多くある。 好きな作品は、『はいからさんが通る』 『DANCE OLYMPIA』『NICE WORK IF YOU CAN GET IT』『Cool Beast!!』『元禄バロックロック』『The Fascination(ザ ファシネイション)!』『Fashionable Empire』『

配信で『アルカンシェル』花組千穐楽を

配信で『アルカンシェル』花組千穐楽を見ました。 せめてこれが『アデュー・マルセイユ』のようなショーとの二本立てだったらまだ納得できたけれど…。なぜ一本物にしたんだろう。少なくとも小池修一郎さんは「できる」と思ったのですよね? このストーリーで。全く理解できない。 タイトルと設定を見た段階で、トリュフォーの『終電車』やジョゼフ・ロージーの『パリの灯は遠く』あたりの映画を想像した。小池さんが参考にしていてくれていたらいいなと思っていたのだけど、いつもどおり、厚みのない小池修一

宝塚宙組『カルト・ワイン』

 観劇は、行先の分からないクルマに乗るようなもの。初めての演出家の作品ともなれば、そのドキドキ感はなおさらだ。  でも、ドライバーの運転技術が確かかどうかは、はじめの数分でたいてい分かる。この『カルト・ワイン』も、何の心配もなく、舞台上で起こることを観ていればいいことがすぐに分かった。あらかじめ、行き先を示すヒントが出され、語り口は軽快。テンポもいい。音楽もいい。芝居も見せる。一気に物語の世界に引き込まれ、痛快なラストにうならされる快作だった。  作・演出は栗田優香さん

宝塚歌劇の雪組の『CITY HUNTER』の新人公演

 作品と演出家と劇団には書きたいことがたくさんあるけど、ちょっと後回し。新人公演のレビューです。  新公チーム全員が本当に楽しそうに演じていて、舞台上はキラッキラ。本役さんにとらわれることなく自由に表現している子が多くて、それが気持ちよかった。芝居を深めることより、段取りやキャラ作りなどに奔走することが多そうなので、新公ではやりやすかったのかもしれない。  キャスティングがドンピシャ。役が多いのに、上手いこと割り振っていて、それを見ているだけでも楽しく、新たな面を見つけた

タカラヅカのショーはドレスで決まる▽宝塚宙組『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』

 ひー。楽しかった。  よく分からない幸せ感に満たされて、観劇帰りにデパ地下でお菓子を山のように買い込んでしまった。タカラヅカのショーって本当に人生のデザートだよなあ、なんてしみじみ思いながら。  不要不急とはいえないけれど、こういう気晴らしや楽しみがなかったら、いつか息ができなくなってしまうかもしれない。宙組の『Délicieux(デリシュー)!-甘美なる巴里-』は、つつがなく続いていく日々に欠かせない「デザート」であり「気晴らし」だったと、パンデミックを知ったいま、実感し

2021年の『ヴェネチアの紋章』。ヴェネチアの海は深いブルー。

 雪組全国ツアーの初日に行ってきました。彩風咲奈、朝月希和の新トップコンビのプレお披露目となる日。客席に入る前に拍手が鳴っていて、もしや、と思ったら、望海風斗さん、真彩希帆さんの前トップコンビがそろって客席に座っていらっしゃる。なんとも心強い船出。みんな、うれしかっただろうなあ。  だいもんもまあやさんも、在団中とちっとも変わらない雰囲気。客席からさっそく雪組の舞台を楽しんでいるようでした。だいもんの、何事においてももったいつけたり思わせぶりなことをしないところが好きです。

礼真琴さんと舞空瞳さんの『ロミオとジュリエット』

5月23日、星組の『ロミオとジュリエット』が大千穐楽を迎えた。 東京公演中にCOVID-19の感染拡大による緊急事態宣言が出て、2週間上演が中断してしまったけれど、再開後は無事に最後まで上演でき、関係者の皆さんは安堵したことだろう。 わたしは、配信では、A日程、B日程合わせて6回半を観たのかな(大劇場公演を含む)。東京宝塚劇場では、B、Aの順で、1回ずつ観ることができた。 A日程を観劇したのは、中断期間を経ての5月20日。「やっと劇場に来れた。ヴェローナに来た」。そんな

雪の巨大惑星のフォルティッシッシモ的大爆発*宝塚雪組『f f f -フォルティッシッシモ-』

とうとう今日という日が来てしまった。 望海風斗さんが宝塚を去る日。そこそこの天気になることは天気予報で知っていたけど、でも、何かの間違いで暴風雪みたいな異常現象が起きてしまわないようにと願っていた。ほんっとうにいろんなことがあった宝塚人生だったから。ここでまた何か起こってもおかしくないもん。 『f f f -フォルティッシッシモ-』。作・演出の上田久美子先生は、望海風斗という演者を得て、とてつもない作品をつくりあげた。 望海風斗さんのこれまでの作品すべてを、そこから生ま

麻実れい 芸能生活50周年記念コンサート 三重奏

麻実れい芸能生活50周年記念コンサート 「三重奏~Rei Asami Trio~」 構成・演出 広渡 勲 北島直樹(Piano) <特別出演>寺井尚子(Violin) エレガントとはターコさんの50周年記念コンサートに行ってきました。 会場は銀座ヤマハホール。ビル正面のガラス壁面には「おかえり、おんがく。」という大きな文字。延期になっていたコンサートが、無事に開催できてよかった。ホールに入ると、ソーシャルディスタンシング仕様の入場者数になっていたのがせつなかったけれど。見た

私の原点『炎のボレロ』

「タカラヅカって、ほんとに楽しい!」 彩風咲奈さん主演の『炎のボレロ』の感想をひと言にするなら、こんな単純な言葉になる。 『炎のボレロ』は、当初、『Music Revolution! -New Spirit-』との二本立てで全国ツアーの演目として企画されていた。この作品を観るのをとても楽しみにしていたのだけれど、 コロナ禍の影響で梅田芸術劇場だけでの上演となり、観劇は叶わず、ライブ上映でのスクリーン観劇となった。なのに、その二本立ては、それを差し引いてもなお余りある、宝塚

大切なことは、目には見えない*《スカイ・ステージ・トーク リクエストDX#72「壮一帆・水美舞斗」》

タカラヅカ・スカイ・ステージで、《スカイ・ステージ・トーク リクエストDX#72「壮一帆・水美舞斗」》を見た。 Twitterにこんなふうに書いたのだけど、ハートのマークをつけてくれた方がたくさんいたので(自分比)、調子に乗ってもう少し。 マイティーなら仕方ない水美舞斗さんをキライな人っていないんじゃないかと思う。 いわゆる「人好きする」タイプ。素直で屈託がなくほがらかで、心の扉がいつも開いている。ハッピーなオーラではち切れそう(笑)。何かをやらかしたり、言い過ぎたり

Dream On! 水美舞斗が踊るとき

マイティー(水美舞斗)の初主演作だった『Senhor CRUZEIRO(セニョール クルゼイロ)!』。観たときに強く感じたのは、「マイティー(水美舞斗)のダンスはすごい武器だ」ということだった。 タカラヅカの舞台で素晴らしいダンサーをたくさん見てきた。もちろんマイティーのダンスも見てきたけれど、こんなにも「踊るマイティー」の世界を作り上げたところを見るのは初めてだった。圧巻だった。 「これほどのスペシャルを持ってるんだもの、マイティーが組を背負って大劇場のゼロ番に立つ日が

そして汽車は走る*宝塚雪組『特急20世紀号に乗って』

ON THE TWENTIETH CENTURYBook and Lyrics by Adolph Green and Betty ComdenMusic by Cy ColemanBased on a play by Ben Hecht and Charles McArthur and also a play by Bruce Milholland“On the Twentieth Century” is presented by special arrangement w

鴎よ、伝えてよ!―『恋の花詞集』とカールの真心

『霧深きエルベのほとり』新人公演を見てきました。 カールを演じた極美慎(きわみしん)君。屈託がなくてまっすぐで、それは本来のカール像とは離れているかもしれないけれど、新人公演らしいアプローチで、とてもよかったです。 橋本治さん(1月29日に亡くなられてしまった…)の『恋の花詞集』という本があります。 昭和の年数と同じ64曲の歌謡曲について書かれていて、タイトルはタカラヅカの『花詩集』から取ったもの。「すみれの花咲く頃」も入っているのですが、その大トリを飾ったのが「霧深き