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生まれたばかりの子猫を保護した話

新型コロナウイルス禍による外出自粛真っ最中、憎ったらしくなるくらい晴天になった四月末ある日のお昼前、インターホンが鳴った。

インターホン越しにみえたのは、近所に住むSさん。玄関に下りていくと「うちの前の道路に、目が開いてない子猫がいるんだけど...どうしよう。」と、ものすごく慌てていた。

我が家には猫が二匹いる。
「近所の友達にほかに猫のことわかりそうなひといなくて...こんなときに急にごめんね。」と言う彼女と一緒に、数十メートル先のSさんの家の前に行くと、側溝の日当たりの良い場所に小さな塊が落ちていた。

よく見るとその塊は白黒模様の三匹の子猫たちで、本当に「落ちてる」としか言いようのない状態だった。
もぞもぞと動きながら「ミー、ミー」と鳴いていたので、生きていることはわかったのだが、なんか変だ。三匹がくっついているようにみえる。どうやら臍帯がついたまま、それが三匹の足かどこかにぐるぐる巻きに絡まっているようだった。

(うげえ...。猫を飼ってるったって、さすがにこれはどうにもこうにも。)

臍帯が絡まり傷になった部分にハエがたかりはじめてる。まわりにいた近所のおじちゃんおばちゃん達は、母猫の姿はみかけていないという。

生まれたばかりの子猫だけ。このままじゃ間違いなく死んでしまう。

「ちょと入れるものとってくる。ここから一番近いの〇〇動物病院だと思うけど、そこいまから診てもらえるか電話してくれる?」

Sさんにそう願いして、ダッシュで自宅に戻り、段ボール箱、タオル、ティッシュ、ビニール手袋とスマホを持ってきた。そのついでに、近くに住む、我が家の二匹の猫の保護主さん(個人で動物保護のボランティアをされている)にヘルプの電話をかけてみるがつながらない。

(これは、とにかく自分たちでどうにかせにゃならん。)

幸い、電話をかけてもらった動物病院で「その状態だと助けてあげられるかわからないけれど、つれてきてください。」と言ってもらえた。覚悟を決めて、手袋をはめ、子猫を三匹まとめて箱に入れようと持ち上げた瞬間だった。

にゅるにゅる。

子猫のなかの一匹が、うんちをした。体勢をかえられた刺激からなのか、つられるように他の子も、黄色い絵の具のようなうんちをにゅるにゅるっと。

(ひええーーっ)

おかげで、子猫三匹ともうんちまみれになってしまった。体温を下げたらまずいのでウエットティッシュでゴシゴシ拭くわけにもいかず。傷つけないようにそっとそっと濡れていないティッシュでうんちをつまむようにするしかできず、もともと汚れていた子猫たちはさらに汚くなってしまった。

でもなんだか私はこの瞬間「あ、きっと助かる。」と思ったのだ。

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Sさんと一緒に病院で待ってる間、外に大きなカラスが飛んできたので、思わず二人で顔を見合わせてしまった。

「あぶなかったね。」

診てもらうと、子猫の体重はみな100g以下で、まだ生まれて一日やそこらだろうということだった。たぶん、ほかにも兄弟がいて、この三匹は臍帯が絡まって動けなかったので母猫に置いていかれてしまったのかもしれないね、と。

一番大きい子は両足とも無事だったけれど、一番小さい子は後ろの足が両足ともだめになっていた。もう一匹は後ろの左足が壊死。

この大きさで、この怪我だと母親がいなくては育たないかもしれない、本当は病院で預かりたいけど、残念ながらコロナで対応できない。なので、一週間、とにかく一週間まず頑張ってくださいと言われた。

2〜3時間おきのミルクに排泄のお世話。体温管理。投薬のため毎日の通院...。

帰り道、Sさんが「わたしいまコロナで在宅勤務だからうちでとりあえず面倒見る。あとの事はまた考えるよ。」と言ってくれた。

我が家だと、先住猫と隔離できる場所が脱衣所とトイレしかなかったので、万が一のことを考えるとSさんのお家でお世話をしてもらえるのはとてもありがたかった。

そして、できる限りのお手伝いをすることを約束して、1週間。途中、ミルクや通院のお手伝いにもいったが、あまりに小さく今にも死んでしまいそうな存在を育てるのは、とてつもなくプレッシャーのかかることなのだと思い知らされた。

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でも、わたしの勘はあたった。

Sさんとご家族はすごかったし、子猫は生きるチカラと運のある子たちだった。子猫たちは3匹ともみんな、一週間無事に生き延び、Sさん一家は子猫たちをおうちに迎える決心をした。

暑いくらいのお天気の日で良かった。
カラスにより先にみつけてあげられてよかった。
コロナでみんなおうちにいる時でよかった。
優しい先生に診てもらえてよかった。
Sさんのお家に行けてよかった。

子猫たちはいま、生後2ヶ月。不自由な足も何のその、部屋中を元気に走り回っているそうです。



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