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【連載小説】ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい[#097]76 日記

ケモ耳っ娘になったからにはホントはモフられたい~前世はSランク冒険者だったのでこっそり無双します~

76 日記

 今日は皆との顔合わせだった。
 クリストファー王子の事は、以前から良く知っている。知らない人はいないだろう。

 騎士のアレクサンドラは、王子の婚約者なのだそうだ。本当に大丈夫なのかしら。

 冒険者の二人は、やっぱり不思議な組み合わせだ。
 英雄のアシュリーは美人だけれど、あまり口数の多いタイプではないみたい。
 逆にサポーターのシアンは、おしゃべりでなんだか騒がしい。

 今回の勇者も少女だそうだ。ルイと名乗った。
 気弱な雰囲気の子で、メルヴィンに見惚みとれていた。

 メルヴィンにその話をしてみたけれど、どうやら気が進まないみたい。
 まだ旅はこれからなのだし、先ずは皆と仲良くならないとね。

 王子の提案で、互いに愛称で呼び合う事になった。
 こんな事初めてで、ちょっと不思議な感じ。

 * * *

 ラントの町についた。
 時間が早かったので、町中を皆で見てまわった。
 あまり王都の外には出た事がなかったので、色々と物珍しかったし、楽しかった。

 ルイに話し掛けてみたら仲良くなれた。
 どうやら私の事を幼い少女だと思ったみたい。それでもいいけど。
 彼女と趣味が合った様で、話をするのがとても楽しかった。

 夕食は皆でシアが選んだ店に行った。料理もお酒もとても美味しかった。
 ヤマモモのお酒なんて初めてで、欲しいとねだったら、アッシュが買ってきてくれた。意外に面倒見の良い人なのかもしれない。

 * * *

 洗濯なんて、店に出してやらせればいいのにと思ったけれど、そうもいかないらしい。
 驚く事にルイもアレクも洗濯をした事がないという。
 シアが大分手慣れていて、色々と教えてくれた。騒がしいだけの人だと思っていたけれど、そうでもないみたい。
 ルイは勇者だからやらなくていいのに、やたらと張り切っていた。勇者の剣を持っているだけの役割に引け目があるみたい。

 * * *

 知らない町が珍しいのか、夜になるとメルは出掛けているようだ。
 アッシュの事を話したら嫌そうな顔をされた。
 もっと皆と仲良くならないとダメなのに、不愛想な彼には向かないんじゃないのかしら。

 * * *

 いつの間に、剣士たちは皆で朝の練習をしているらしい。
 私たちは部屋で魔力精錬をしているので、今まで気が付かなかった。
 クリスとアッシュは大分打ち解けてきたみたい。

 ルイがハルピュイアを倒せなかった。
 昨日のワイルドボアもやっとの様子だったし、彼女が戦うのは難しそう。

 * * *

 ルイもだいぶここの生活に慣れてきたみたい。
 シアと仲良く話す様子を見て、クリスがホッとしていた。
 真面目な彼に、あの役目は合わなかったのだろう。

 メルは最近はアッシュとよく出掛けているらしい。
 教えてくれればいいのに。メルに聞いても話してくれないし。

 もうすぐ王都に帰る日が来る。
 姉様に会えるのが楽しみ。いい報告もできそうだ。

 * * *

 アッシュとシアが貴族と会うそうなので、彼女たちの服を選んだ。
 シアはともかく、アッシュのセンスは壊滅的だった。今着ている服は全部シアが選んでるらしい。
 アレクに聞いたら、彼女もドレスの事はあまりわからないと言うし。女性騎士とか冒険者って、みんなこんな感じなのかしら。

 せっかく綺麗にしてあげたのに、二人とも中座して帰って来たらしい。
 失礼な事を言われたと、シアがすごく怒っていたんだけれど、何がいけないのだろう。
 他の皆も怒っているようだし、多分人間にしかわからない何かがあったのだろう。

 * * *

 ルイはかわいい。
 あの子にも家族がいないそうだ。
 アッシュも家族がいないと言っていた。

 家族ってなんだろう?
 いないとダメなのかしら?

 でもルイが喜んでくれるのなら、皆で家族みたいになれればいいと思う。

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 今日はルイと部屋が同じになったから、ルイの国のお話を色々と聞かせてもらった。
 この国にはないような話が沢山あって面白かった。

 * * *

 アッシュに手帳を見られた。
 でも誰にも言わないと、言ってくれた。

 クリスの事も知っているのかもしれない。驚く様子はなかった。
 私とメルの事にも気が付いていたらしい。

 シアはアッシュに何か借りがあるようだ。詳しい話は聞けなかった。

 * * *

 アッシュはいつも通りだった。クリスにも何も言ってないみたい。

 ルイはシアの事が好きらしく、こっそり打ち明けてくれた。
 そういう事はよくわからないけれど、応援すると言ったらとても喜んでいた。

 * * *

 ルイは、シアとアッシュの仲が気になるみたい。
 よくわからないけれど、どうやらシアを独り占めにしたいようだ。恋とはそういうものらしい。

 今日もルイに物語を聞かせてもらった。
 ルイの国の話には、魔獣と戦う話もたくさんあるけれど、実際に魔獣と戦う事はないらしい。
 遊びの中で戦うんだって聞いたけれど、よくわからなかった。

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 少々予定は狂ったが、おおよそ予定通りにシナリオを進められている。

 * * *

 ナインテールを倒しにきたはずなのに、なんだかおかしな事になっている。
 目的のナインテールは魔族に倒されてしまったし、親を亡くした仔狐には妙に懐かれてしまった。
 それどころか高位魔獣たちが集まってきた。

 高位魔獣たちが仲間意識を持っている事は知らなかった。
 人の言葉を話すという噂は知っていたけれど、まるで獣人と見分けがつかないとは思わなかった。
 色んな事がありすぎて、びっくりを通り越してしまった。

 ナインテールの尻尾はアミュレットにする事にした。
 私たちに託してくれたものだから、あのハゲ領主には渡せない。
 ナインテールの毛を沢山拾う事ができたので、これで十分でしょう。

 しばらく仙狐せんこの家に泊まる事になった。なんだか不思議な感じ。

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 よくわからないけれど、悪い事をしてしまったらしい。
 シアをものすごく怒らせてしまった。
 皆も泣いていた。どうしていいかわからなかった。

 今朝、アッシュがいつものように挨拶をしてくれて、安心した。
 皆もなんだか疲れているみたいだったけれど、この町には居たくないからと出立する事になった。

 昨日の事は、今度ルイに聞いてみよう。

 * * *

 メルが教会に帰りたくないと言い出した。
 理由を聞いても答えようとしない。
 今日はアッシュたちと、町に泊まるらしい。
 大司教様たちが残念がるだろうけれど、仕方ないわよね。

 * * *

 メルがあの事を嫌がっていたなんて、知らなかった。
 どうやら彼は人間に近いらしい。
 アッシュが教えてくれた。

 ルイの言う通り、アッシュも嫌だったらしい。
 本当に悪い事をしてしまった。

 * * *

 アッシュの話によると、王都に家を買ったらしい。
 次は私も行きたいと言ったら、いいと言ってくれた。

 * * *

 昨日は皆でアッシュの家に泊まって、今日はカフェに行って来た。
 とても楽しかった。
 王都に戻った時くらい、こんな楽しみがあってもいいわよね。

 アッシュの家の留守番用にと、ダンジョンで採取してきた霧を使ってゴーレムを作った。
 この家にいつ誰が来てもいいようにと、この全員のマスター登録をした。
 アッシュは冒険者ギルドに財産登録もしたらしい。いつ死んでも大丈夫なようにだって。

 この任務で誰か死ぬわけはないのに。アッシュは心配しすぎ。

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 * * *

 魔族領に入ったら教会の魔法が使えなくなるなんて、聞いてなかった。
 メルはその前から魔力が落ちている。もう彼には英雄をさせられない。

 * * *

 アッシュが死んだ。
 こんなの聞いてない。

 * * *

 呼びかけても、姉様は応えてくれない。
 まだ進まないといけないの?

 * * *

 なんで彼女がいたの?

 クリスも怪我をしてしまった。

 もう嫌だ。私にはできない。
 姉様、助けて。

 * * *

 終わった。
 王都に帰れる。

 シアがずっと泣いている。
 アッシュの入ったバッグを放そうとしない。

 皆も、何も話さない。

 姉様はもう大丈夫だと言ってくれた。
 王都に戻ったら、ルイを帰してあげないと。
 アッシュとの約束

 * * *

 ルイを帰してあげるって言ったのに。
 聞いてない。
 なんで? なんで?
 なんでこんな事をするの?

 約束したのに。
 ルイが

 * * *

 メルが死んだ。

 ごめんなさい。
 私にはどうする事もできなかった。

 気が付いた時には、メルは勇者の剣で刺されて、息絶えていた。
 姉様は私に、メルの死体を使ってゴーレムを作れと言った。
 そんな事が出来るわけがない。
 メルは大切な仲間なのよ。
 いくら姉様の願いでも、それはできない。

 ごめんなさい。本当にごめんなさい。

 アッシュも死んでしまった。
 ルイも守る事ができなかった。
 せめてクリスとアレクを助けたい。

 * * *

 姉様は予定通りだと言った。
 でももう、姉様を信用できない。
 どうしたらいいの。


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