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トッドの分析するトランプ大統領誕生の理由

 トッドは、トランプ大統領の誕生はエリートと大衆の分断を露わにしたと言います。

 高等教育の発展によって教育格差が生まれ、それを受けた人々は彼らだけで社会集団を形成し、その中だけで生きていけよるようになった。そこでは一種の内爆のような現象(implosion? インプロージョン:一国内での人種・民族紛争のが多発すること)が起き、彼らは民主主義の中にいると言い張りつつ、自分たちの集団こそが社会の上層部なのだという認識を持っている。これが分離の真の原因なのだ。

 教育レベルが異なる人々は、もはやお互いのことを知りません。上層部にいる人々は「文化的ゲットー(特定の民族や社会集団の居住する区域)」とも呼べる場所で、そうとは知らずに暮らしている。

 エリートは民衆を裏切っている。さらにエリート層の中には集団内部の順応主義によって引き起こされた愚かさが蔓延していると思われる。要するに集団的な知性の自己崩壊が起きている。

 しかし、だからと言って民衆の方が本質的に良いとは思わない。民衆の方が教育レベルは低く、運も悪い、だから彼らこそは道徳的には上だという考えはおかしい。

 クリントン候補とトランプ候補の大統領選挙では、黒人は大半が民主党に投票した。しかし棄権率も高かった。人種問題についてはオバマに比べて割と両義的だったからだ。

 トランプは、「白人党」ともいうべき伝統的な共和党の選挙運動テクニックと真逆の方向にあった。

 一つはメキシコを敵視した外国人嫌いの言説、もう一つは経済的な問題に関する言説。トランプは経済のテーマを持ち出すことで、それまでは人種的なことに基盤を置いてきた共和党を滅茶苦茶にし、その間、民主党は人種問題については非常に平凡な立場を変えなかったからだ。

 これ以外にトッドが触れた論点に、日本は核兵器を保有すべきだという主張もあります。

 「#専門家が選ぶ新書3冊」というTwitterのハッシュタグは、大学生に同じテーマの3冊を選ばせると「トンデモ本」が一冊混じってしまうので、あえて「専門家の選ぶ」を入れたと言います。一方、トンデモをトンデモと見抜くためにも他の2冊が必要だとも言われていました。

 同じテーマを多角的に捉えるという意味では、トッドの本は読む価値があります。

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