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ispaceが描く人類の幸せとは? CEO,CTOインタビュー

8/11、日本発の宇宙開発ベンチャーispace〈9348.T〉の株主向けイベントにて、ispace本社内管制室(ミッションコントロールセンター:MCC)の見学会が行われました。

大勢のispace株主から抽選で6組のみの限定イベントで、一般向け公開は今回が初めてです。筆者は登壇者の袴田はかまだCEO、氏家うじいえCTO へ直接インタビューしてまいりましたので、お二人の月面探査・宇宙開発にかける想いを皆さまにお伝えいたします。

ispace本社が入る日本橋三井タワー
ispace本社エントランスホール
左奥に見えるのがミッションコントロールセンター

 

インタビュー:袴田はかまだCEO、氏家うじいえCTO   ispaceが人類に提供する幸せ

筆者
「いきなり大変曖昧で難しい質問なのですが、お二人の考える人類の幸せや、ispaceを通じて人類をどう幸せにできるのかについて、お考えをお聞かせください」

袴田CEO
「非常に深い質問ですね。我々は宇宙が好きなので、宇宙宇宙って良く言います。ただ、自分で思っているのは、宇宙が好きだからやる、というだけでなく、宇宙をどう活用して人類の豊かな生活につなげていくか、幸せにつなげていくかっていうのが非常に重要だなと思っているんです」

筆者
「宇宙の活用で人類の幸せにつなげたいと」

袴田CEO
「どうしても、宇宙に関する事柄は最先端の、それこそ巨大な投資ばっかりになってしまう。これは、スケールが大きすぎて皆さんから離れたところにあるように思えますけど、今の世の中って宇宙を切り離して考える事はできない。そんな中で、宇宙から地球の持続可能性を担保するような仕組みが広まって来ていて、で、これからの地球社会においては、宇宙のインフラが担う役割って凄い大きくなっていくと思うんですね。ispaceとしては、その宇宙のインフラが大きくなるときにいかにコストを抑えるか、経済合理性を維持して発展していくか、という、まさにその部分を創っていきたい。なので『(宇宙)経済圏』と言っているんですけども、それを創ることで、将来の人類の豊かな生活、そして多くの人の幸福につなげていきたいと考えています」

氏家CTO
「そうですね、まずは株主の皆さんへという点では、事業計画を達成して、皆さんといっしょに幸せを分かち合うっていうのももちろんあります。けれども、一番私の中で、何をどう達成していきたいか、という話になると少し違う。私はアメリカのMITに一回留学しているんですけど、そのときに私の母親から、
『祖父(母親の父)が、あなたがMITで留学して修士を取ってくる、という事を聞いたらすごく喜んだと思う』
と言われたことがあります。祖父は私が産まれたときには既に他界していて、私は会ったことはないんですけど、その祖父自身がすごくアメリカというものに憧れを持った方でして。彼はアメリカに住んだこともないし、当然学位を取ったこともない。だから、母親はそう思ったのでしょう」

筆者
「世代を超えて果たされるものがあると」

氏家CTO
「多分、この私が宇宙開発などを通して、ispaceのビジョンを通して、その中でやらなきゃいけないことっていうのは、これと同様に、私の息子なのか私の孫なのかわからないんですけど、そういう人たちが実際に本当に宇宙に出ていってですね、月とかに出ていって、本当にそこで生活をする。そのときに月に何があるのか、誰がいるのかわからないんですけど、今現時点で、我々には不可能なことだとしても、次の世代につながっていくような、そういう世界です。そういう世界を築くことが、本当にね、幸せなんじゃないか。人類に対する貢献なんじゃないのかなと思っていて、世代ごとに、例えば私の祖父がアメリカで生活することを憧れたように、やっぱりこう、私の孫とかの時代にですね、実際に宇宙で生活するという世界を実現していくっていうのが、最も大切な貢献、幸せなのではないかと思っています

管制室(MCC)の運用について

筆者
「氏家CTOはJAXAからispaceに転職なさったとの事ですが、ispace管制室の運用体制をつくるにあたり、JAXAのものを参考にされたのでしょうか?」

月周回軌道にランダーを乗せたときのispace管制室の様子

氏家CTO
「JAXA譲りのものもあります、ただ、ispaceのような規模だと、通常は3名で運用しています。月への軌道に乗せたり、着陸時などのクリティカルなイベント時にはTVでも中継されていたように全員体制で事に臨みます。参考にしたJAXAでも、人工衛星の通常運用などは実は4名程度で維持できていましたね。ただ、クリティカルな時は職員総出で対応していました。規模は違いますがispaceでも同様ですね。通常時に必要な人員って、宇宙機の自動化が進んでいるため実はそれほど必要ないんですよ。それに、運用シフトを組まなければならないという現実的な問題もあります。なので、いつもいつも全員が管制室の席に座っている、というわけではないのです」


月面測量の今後と探査機について

月面測量データ事業の概要

筆者
「ispaceでは、こちらのランダー(月着陸船)でペイロード(荷物)を運ぶのみならず、月面のデータを取得し提供する事業も計画され、資材運搬と情報提供の両輪で収益化を目指していると株主総会でお聞きしました。月面の3次元的な測量データを取得するために、LiDARなどはついているのでしょうか?」

月着陸船  Lander(ランダー)
月面探査車  Rover(ローバー)

氏家CTO
「今現時点で、このランダーにLiDARなどはついていないのですが、レーザ測距器や高度計、速度計などが搭載されています。また、ペイロードやセンサを機体に搭載されるお客様との兼ね合いで、一部のセンサ取り付け位置をお客様にお譲りするなどもしていますね。ただ、月面マップ制作のための地形情報を取得するとなると、追加でセンサを取り付けする必要があります」

筆者
「では、将来的にはispaceのランダーを飛ばすことで、月面の凹凸まで完璧に再現した地形データを制作したい、ということでしょうか?」

氏家CTO
「そうですね。ただ一つ、マップの精度の部分も大切なのですが、『頻度』も大事になってくると思っております。というのも、今後は様々なプレイヤーが月面開発に乗り込んでくるわけで、開発が進めば進むほど月面の状況はどんどん変わってゆく。そこに対応するためには、なるべく高頻度で測量を行う必要があります。更に資源の観点から言うと、月の水がどこにあるかも重要です。ですので、ランダーに求めるのは測量精度と頻度の2つ、ということになります」

筆者
「『頻度』がキーワードになるということは、月の周回軌道や静止軌道から何度も測量することが求められそうなのですが、どのようにお考えでしょうか?」

氏家CTO
「ええ、常に計測していくという形になると、ランダー自身は月に着陸してしまうので、ランダーの着陸前に小型の衛星を分離して周回軌道に乗せて、その衛星から常時観測する事を考えていますね」

筆者
「ペイロードの搭載量、これはランダーの打ち上げを経るごとに増やしていくとの事ですが、実際どの程度まで増えるのでしょう」

氏家CTO
「このランダーでは左右で30kgずつの60kgまでが上限なのですが、次期フェーズで使用するランダーでは合計100kg以上を目指しています。このペイロード搭載部分以外にも、本体外部にお客様のカメラやセンサを載せる事が出来るのですが、最も環境が安定している、つまり、お客様側の難易度が最も低いのがペイロード搭載部分なんです。だからそれだけ需要が高いし、ペイロード搭載量を拡充できれば収益性も上がる、ということです」

筆者
「大変興味深く色々と質問させていただきました、本当にありがとうございます」

ランダーのペイロード搭載部分にローバーが格納され、
月面探査を行います


見学のあとはペーパークラフトづくり

株主の皆さん自身の手で、
ランダーの模型を組み立ててゆきます
氏家CTOによるランダーの解説
市場に出ている部品を多く使っているとのこと
姿勢制御のためのRCSや、補助スラスターもそう
完成!
この模型は非常に完成度が高く、
これをそのまま用いて議論するそう


私の質問に丁寧にお答え下さった袴田CEO、氏家CTO、そしてispaceの皆様、誠にありがとうございました。
これからもずっと応援させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

Expand our Planet. Expand our Future.



*サムネイルの写真はispace公式よりお借りいたしました。
ispace (ispace-inc.com)

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