もうええわ甘い夢ばっか見させんといて

きょう、夢にはじめて伊沢くんがでてきた。いよいよ本格的に彼にいかれているな、と思う。

わたしの家でわたしの親戚と一緒に、持参した食べ物をどんどん食べていく伊沢くんをとなりに座って眺めながら、わたしは勉強していた。眺めていると目があって、手製の刻み海苔をくれた。自分で板海苔を切って作ったという、ふぞろいの刻み海苔。ちゃんとジッパー付きの袋に入っていた。ふざけてべえっと出された舌が長くて、あなた舌が長いね、と言ったのをおぼえている。

さいきん夢をよく見る。眠りが浅いのだろう。今日のようにうれしい内容の夢ばかりではないので、目が覚めるとほっとすることが多い。悪い夢では、ものすごく怒鳴っていたり、刺したり刺されたりするのだ。消耗する。

夢の話をすると、いつも、朝吹真理子さんの芥川受賞作『きことわ』の書き出しをおもいだす。「永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない。」大学のゼミで読んだっきりで結末を忘れてしまったけれど、この書き出しだけは焼きついている。

夢。夢が見られなくなったら、わたしの人生の何割かは退屈になるだろう、とはっきり思う。

たとえば画面の中にいる好きな人と会えたり、言葉を交わせるのは、夢の中だけだ。夢の中の彼らはやさしかったりつめたかったりいろいろだけれど、ともかく、会える。

そして、見る内容やタイミングを自在に操れないからこそ、夢はおもしろい。望外、というものにわたしは常日頃焦がれ、高い価値を見出す。

(今日のBGM)
藤井風「もうええわ」


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