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【理事連載‐中沢】「何か」を考える――よのなか、まち、ひと  第1回

はじめに

今回よりnoteの連載を担当することになりました、みやっこベースで副理事長をしております中沢と申します。
連載初回ということで、わたし(中沢)がどんな人間なのか、またこの連載でなにを書いていこうか、簡単にご紹介したいと思います。
(わたしの生い立ちは、広報スタッフの清水さんに書いていただいたインタビュー記事をお読みいただければと思います。URL:https://note.com/miyakkobase/n/n5bd7e65ba6a3


【すこし長いプロフィール】
1991年、野菜農家の長男として生まれました。子どものころは実家で牛を飼っていたので、学校から帰ってくると牛舎で祖父の牛の世話をするのが日課でした。

宮古市立山口小学校、宮古市立第一中学校を経て、岩手県立宮古高校に進学しました。中学校と高校では陸上競技漬けの生活を送りました。学業は二の次でした(笑)

中学校・高校で社会科系の科目が得意だったという理由のみで青森大学社会学部に進学し社会学と出会いました。社会学の魅力に触れたこと、またよい先生方にも恵まれたこともあり、筑波大学大学院人文社会科学研究科(修士課程)に進学し、「研究都市つくば」で2年間を過ごしました。

青森大学・筑波大学大学院のいずれにおいても、宮古市をフィールドに消防団と東日本大震災をテーマにした研究をおこない、修士論文を執筆しました。専門は、地域社会学、防災社会学、生活史研究で、消防団や東日本大震災をテーマとしています。

大学院修了後は、平成28年4月に岩手県農業共済組合宮古地域センターに就職。自分自身も農家出身ということもあり、農家さんの一助になればと仕事をしています。

みやっこベースとの関わり合いは、団体設立前にさかのぼります。大学の夏休みで帰省し震災ボランティアとして活動していた時に、県外ボランティアとして訪れていた若かりし頃の早川輝と出会いました。平成30年より理事として参画し、令和元年より副理事長として現在至ります。

そのほか、宮古市消防団第9分団、青森大学付属総合研究所客員研究員としても活動しています。

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<青森時代の最大の敵は厳しい冬。学内に雪の壁ができるのは日常茶飯事でした>


【すこし長い】と前置きしながら、だいぶしっかりと自己紹介を書いておりました(笑)

さて、プロフィールで書いたとおり、わたしは大学・大学院の6年間、「社会学」を専門に学んできました。そこでわたしの記事では、「社会学」の考え方や視点を参考に、「みやっこベースの活動」や「宮古という地域」、そしてもうすこし足をのばして、「よのなか・まち・ひと」ついて皆さんと考えてみたいと思います。

たとえば、みやっこベースのOBOGやいつも応援してくださっているみなさんは「地元(宮古)が好き」という方がおおいと思いますが、「地元が好き」というのは、いったいなにを意味しているのでしょうか?おなじ宮古市出身者でも、イメージする「地元」がおなじとは限りません。より具体的にいうと、たとえば宮古一中学区出身者と田老出身者では、語っている「地元感」がすこし異なっているのではないでしょうか?(決して煽っているわけではないので、誤解しないでほしいのですが、、、、)

もうひとつ例を挙げてみましょう。みなさんは「社会運動」という言葉を聞いたことがありますか?聞いたことがある方はどんなイメージを持つでしょうか?「デモ活動」なんかを思い浮かべる方もいるかもしれません。では、みやっこベースの活動に参加したことがある方のなかには、ワークショップで「宮古の好きなところ、宮古の嫌いなところ」をふせん紙に書き出して、それを発表し合い、どうしたら嫌いなところを良くできるか話し合った経験があるかもしれません。「社会運動」というと難しく聞こえますが、みやっこベースでのワークショップも「社会運動」の第一歩といえます。

みやっこベースに身近な話題をふたつ挙げましたが、このような疑問に答えようとする方法のひとつが「社会学」です。なんだか「社会学」というものに、興味がわいてきたきがしませんか?

できるだけ分かりやすくまとめられるように努力をしていきたいと思いますので、月に1回の連載にお付き合いをいただければと思います。もし、小難しくなっていたら「ちょっとちょっと、、、」とお声掛けくださいね(苦笑)


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 なお、本連載記事はNPO法人みやっこベースのnoteに掲載されておりますが、みやっこベース(および他の所属団体)の総意ではなく筆者自身の個人的な見解ですので、ご了承のうえお読みください。
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社会学とは何か
これまでに考えてきたこと

くりかえしになりますが、わたしは青森県青森市にある青森大学社会学部で4年間、茨城県つくば市にある筑波大学人文社会科学研究科で2年間、「社会学」を学んできました。

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<つくばのキャンパスは広すぎて、よく迷子になりました>

6年間やってきたことを、もうすこしかみ砕いて説明しようと思います。まず専門は、社会学のなかでも「地域社会学」といわれる領域で、消防団を対象に、東日本大震災や地域防災にかんする研究を行ってきました。

具体的には、宮古市消防団に所属する消防団員に聞き取り調査(インタビュー)を行いました。これまでの活動を振り返っていただき、自分の人生の中で消防団活動をどのように捉えているのか、ということについて社会学の考え方を参考にして研究してきました。

この研究で、おなじ「宮古市消防団」に所属し活動していても、ひとりひとりの活動経験、所属年数(階級)、男性団員か女性団員かによって、消防団活動の捉え方、位置付け方が大きく異なっているということをあきらかにしました。

この一文を読んでも、わたしが6年間かけてなにをやってきたのかよく分からないですよね(笑)でも大丈夫です。説明している、私もよく分かっていないので安心してください。もし、興味のある方がいらっしゃいましたら、1時間でも2時間でもお話ししたいと思いますので、お気軽に声をかけてください。


「社会学」の定義とは

さて、この記事のなかでも「社会学」という言葉を、すでに何回か使っていますが、「社会学」とはそもそもどのようなものなのでしょうか?「中学校や高校の社会科の授業とはどこが違うの?」という疑問を持つ方もいると思います。

この「社会学とはなにか?」という問いは、シンプルですが社会学を学ぶ人を一番悩ませる難問です(正直言って、わたしも悩みましたし、いまだに答えられません)。イギリスの社会学者アンソニー・ギデンズは『社会学』(第5版)という、まさにその名の本を書いています。この本は大学で社会学を学ぶ人たちの代表的な1冊で、目次から奥付までを含めると1000ページを超す大作なので、週刊少年ジャンプより厚いので枕にするのにぴったりです(笑)

このギデンズの社会学なかでも、1章目で「社会学とは何か?」と論じています。ギデンズは、社会学を「人びとの形づくる社会生活や集団、社会を研究する」(Giddens 2009:20)学問であるとしています。また、社会学者見田宗介は、「社会学は〈関係としての人間の学〉」(見田 2006:5)と論じています。

さて、社会学がどんな学問なのか分かりましたでしょうか?この説明で「なーるほど!!」となった方は、だいぶ社会学の素質があると言えますね。でも、わたしをはじめおおくの方は、頭の中の「???」が増えたのではないでしょうか。


何をやってもいいのが社会学という仮の結論

社会学者の岸政彦は『質的社会調査の方法』という本の冒頭で、次のように社会学という学問を説明しています。

社会学という学問は、……さだまった定義もないし、共通の対象や枠組みや概念もなく、専門的に勉強している学生や、それで飯を食っている研究者でさえ、「結局それは何ですか」と聞かれて答えにつまってしまうほど、あやふやで、なんでもアリで、多様な姿をもつ、適当極まりない領域なのです(岸 2016:3)。

ここまで読んできて、この引用をみて「そんなまとめある!?」とツッコミをいれた方もいると思います。つづけて岸政彦はこう述べています。

「社会学がどういうものなのか、いまひとつはっきりわからない」と言われてきましたが、……おおまかに社会問題といわれるものを調査研究している、ということは共通しています(岸 2016:4)。

ここでいう「社会問題」とは、新聞やニュースなどで取り上げられる「貧困」や「差別」「少子高齢化」といったものだけではなく、「地域活性化」や「若者の社会参加」といった『身近な社会での出来事』も含まれるものすごく幅広い概念としてとらえてください。

実際、わたしの本棚には「地域社会学」「家族社会学」「ライフコースの社会学」「災害社会学」「インタビューの社会学」「医療社会学」「福祉社会学」といった、数々の「〇〇社会学」の本が並んでいます。このように、何をやっても社会学になる、そしてその人によって社会学の定義が異なるというのが、社会学の面白さであると思っています。

わたしの連載では、「社会学」という言葉を、岸政彦の「おおまかに社会問題といわれるものを調査研究している、ということは共通して」いるものとして、「仮に」捉えて話を進めていこうと思います。ただし、これはまさに「仮」であり、わたしがもっと勉強していくなかで、もっとしっくりとくる考え方と出会うかもしれませんし、この記事を読んでいる皆さんもおなじです。投げやりなわけではありませんが、もし社会学に興味を持っていただいた方がいましたら、どんどん社会学の本を読んで自分なりに「社会学とはなにか?」を考えてもらえればと思います。

なんとなく区切りもついたかな(?)と思いますので、連載の初回はこのあたりで締めましょう。次回は、冒頭の例でも挙げましたが、みやっこベースのキーワードでもある「地元」について考えてみたいと思いますので、1か月後にお会いしましょう!

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<岸政彦さんの作品の一部です。お声掛けいただければ貸出いたします>

P.S.
岸政彦さんはTwitterもやっていて、とても面白いのでよかったら覗いてみてはいかがでしょうか?猫のアイコンです。


【今回登場した本】
アンソニー・ギデンズ(2009)『社会学第5版』而立書房
見田宗介(2006)『社会学入門――人間と社会の未来』岩波新書
岸政彦(2016)『質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学』有斐閣


【筆者プロフィール】

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1991年、現在29歳。
宮古市立山口小学校、宮古市立第一中学校を経て、岩手県立宮古高校を平成22年3月卒業。青森大学社会学部、筑波大学大学院人文社会科学研究科(修士課程)で社会学を学ぶ。地域社会学やライフコース研究、生活史研究の視点から、宮古市の消防団と東日本大震災をテーマにした研究をおこなう。平成28年4月に岩手県農業共済組合宮古地域センターに就職。
みやっこベースには、平成30年より理事として参画し、令和元年より副理事長となる。
そのほか、宮古市消防団第9分団、青森大学付属総合研究所客員研究員としても活動中。