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東京の森林・林業(上)

みなさんこんにちは。
林務担当です。

ある日、私はふと思いました。
みなさんに森林や林業の実情をちゃんと知ってもらいたい!

ということで、
東京の森林・林業の概要について、今回から3部構成でお送りします。

1.東京の森林

見出しの写真は宇宙から見た東京都です。
森林(緑色)が多摩地域に集中しているのが分かりますね。

東京都の森林面積は全体面積の約4割を占め、そのうち7割が多摩地域に、3割が島しょに存在します。

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登山とかキャンプで行くので、山や森はみんなのもの、というイメージがあるかもしれませんが、殆どが個人の所有地(私有林)です。
多摩地域では7割が、全国的に見ても6割が私有林です。

森林所有形態

多摩地域では、私有林の次に都有林が多いですね。
この都有林の殆どは、東京都水道局が自ら所有し管理している森林です。

実は、都水道局は多摩地域だけでなく山梨県にも森林を所管しており、その合計面積は約24,000haに及びます。

水源管轄

上図の緑色部分が都水道局所管の都有林です。
なんかもう、山梨県側の方が緑色部分多いですね。

なぜ都が他県に森林を所有しているかと言うと、水資源の確保のためです。

東京独自の水源である多摩川は、山梨県の水源から都内を流れて東京湾へと注がれます。
1901年に皇室所有の御料林を譲り受けたことから始まり、かれこれもう120年間、都水道局はこの多摩川の水源林を管理し続けています。

流量調整

健康な森林の土壌は保水力が高く、そこに降った雨は地中深くにしみ込み地下水となり、長い年月をかけてゆっくりと河川へと流れ出ていきます。

健全な森林は、この働きによって、降雨後すぐに河川が増水することなく、また、降雨が少ない時でも河川に水を供給してくれます。


多摩川は都民にとって重要な水資源で、その安定した流量確保のため、水源がある山梨県まで含めて都水道局が森林を健全に保っているのです。

東京は人口が多いし、日中は他県からも往来があるので、みんなの水を確保するのは大変ですね。



2.東京の林業

さて、
島しょの森林は元々自然にあった森(天然林)が殆どですが、多摩地域では6割が人工的にスギやヒノキを植えた人工林となっています。

人工林・天然林

昭和の時代に、木材生産のため、天然林を人工林に変えるブームが全国的に起きたことから人工林が多いのです。
島しょではそのブームの影響は少なかったようですね。

人工林は詰まる所、林業活動が行われている(行われていた)森林です。
東京の人工林の状態を見ると、東京の林業の状況が見えてきます。

下の表は、人工林を林齢5年毎に分けた場合の面積を比較した表です。
(苗木を植えた年が1年生で、1齢級は1~5年、2齢級は6~10年。)

森林資源鋼製

11齢級(林齢51~55年)以上で成熟するものと推定すると、東京の人工林の大半が成熟した状態であると言えます。
もう伐って木材にして売れる状態ということです。

要するに、大半の人工林が放置されています。
(付加価値を出すために15齢級以上に育てている場合もなくはないです。)

怠けているわけではないですよ。


育てる費用の方が高くて、売ってもほぼ赤字だから伐採したくないんです。

図にすると大体こんな ↓ 感じです。
(緑が森林所有者の収入、オレンジは樹が大きくなるまでにかかった経費)

図1

緑(利益)よりもオレンジ(コスト)の方が高いので赤字です。

収益が出ないから伐らないし、このため新たに苗を植えられないので、若い人工林が極端に少ない歪な林齢構成になってしまいました。
このままだと40年後には人工林の9割が15齢級以上になってしまいますね。


採算性が著しく低下して林業活動が停滞している、この厳しい現状が東京都の林業の実情なのです。


今回の記事は以上で終わりです。
次回は「戦後から現在に至るまでの林業の歴史について」の記事です。
最後までお付き合いありがとうございました。

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