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「腸腰筋」を正しく理解すれば体は変わる!

こんにちは!

腰痛肩こり専門治療院BACK AGING院長の宮川です。今回はタイトルにもあるように、「腸腰筋」という筋肉にフォーカスして腰痛を考えてにたいと思います。

はじめに、大前提ですがどんな痛みであっても、単一の筋肉の状態が改善されたとしても、それだけで症状は良くなることはなかなかありません。僕がBACK AGING内で治療する際も単一の筋を狙って緩めたり、刺激したりということはしないのですが(むしろ全体を見て動きの改善にフォーカスします)、結構ネタの多い筋肉なので、この筋肉だけで話を広げてもなかなかの分量になるなと思って書き始めました。

治療家は体に対してマニアックな人が多いですが、僕もその人種の一人です。ただ、学ぶ姿勢はマニアックでも、伝える時はできるだけわかりやすくを心がけているので、このアウトプット自体はわかりやすいものにしないと症状説明を患者さんにする際にもそれが出ちゃう可能性があります。

専門家じゃなくても「なるほど〜」と合点してもらえるように、書いていくように心がけます!

では、どうぞ!


腸腰筋とは?

腸腰筋とは股関節周辺に発達する大きな筋の総称です。実際には「腸腰筋」という筋は存在せず、「腸骨筋」「大腰筋」の二つを合わせて「腸腰筋」と呼びます。「小腰筋」を含むこともあるのですが、この筋は約半分の人は持っていない(注:異常ではない)と言われているため、ここでは割愛。。。

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イラストを見ても分かるように、腸腰筋は腰の骨(腰椎)や骨盤から太ももの骨(大腿骨)をつなぐように走行しています。非常に大きくて人間の身体活動の上ではとても重要な筋です。この筋がぎゅっと収縮することによって足が持ち上がったり、骨盤が動いたりします。

「歩行」「走行」「立位」「座位」など人間が日常生活で行うさまざまな動作のほとんどに腸腰筋は深く関わっているため、この筋はとても大切です。


腸腰筋の働き

では、腸腰筋は具体的にどんな働きをする筋なのでしょうか?

体を「動かす」と同時に「支える」役目があり、その働きを細かく理解していくと腸腰筋に対しての理解が深まります。


(1)股関節を曲げる(屈曲)作用

腸腰筋は体幹と下肢をつなぐ筋なので、主な作用は股関節を曲げること(屈曲)です。

ただし、股関節を曲げる動作は腸腰筋だけが担当しているわけではなく、非常にたくさんの筋が関わることによって行われています。股関節を曲げるという動作は身体活動の中でも非常に重要度の高い動作なので、どこか1つの筋が仮に機能しなくなっても、他の筋でカバーできるようになっているということ。そういった意味では人間が生まれながらにして持つ”自己防衛機能”とも言えるかもしれません。

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ちょっと込み入った話になりますが、上記の筋は股関節の角度によってその貢献度が変わってきます。

つまり、それぞれの形状や筋の長さによって得意な動きがあるので、互いに連動しながら関節を動かしているということ。股関節を曲げるという動作は実はとても複合的で複雑な動きであり、筋同士の連動がどれだけとれているかはスムーズの足捌きに影響します。

腸腰筋に関しての先行研究は過去にもいろいろあって、よく見かけるグラフがこちら↓

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股関節の屈曲角度が浅い時も深い時も、腸腰筋の貢献度は高いのですが、股関節の屈曲角度が深くなればなるほど腸腰筋の貢献度が高まっていくことが分かります。

日常生活動作の中で股関節を90度以上曲げる動作といえば、しゃがみ込む動作ですが、和式トイレの数が少なくなり、椅子の生活が増えた現代日本人にとっては筋力が低下しやすい生活になっています。よく聞く話ですね。

意識的にこの筋を動かすようにしないと、転倒しやすくなるといわれていますが、大袈裟な話ではありません。股関節に痛みが出たりもします。


(2)股関節を安定化させる

腸腰筋は股関節の前面を通過するような位置関係にあります。太ももの骨の一部(大腿骨頭)の前面は腸腰筋が通過するため、立位時には腸腰筋が緊張することで太ももの骨をグッと押し付けて安定感を作ってくれます。

仮に腸腰筋が機能低下した場合でも、お尻の筋肉や靭帯など、股関節の安定に関わる様々な組織があるのですが、腸腰筋の作用が低下すればするほど、他の筋や靭帯に負担がかかるので、痛みや動きの硬さにつながってしまいます。

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腸腰筋の特徴

(1)機能が低下しやすい

腸腰筋は非常に重要な筋ですが、その機能は低下しやすいという特徴もあります。

活動量が落ちた高齢者、座位姿勢が多いデスクワーカー、運動不足気味の現代人は特に要注意。あまり動かさなければ、腸腰筋が「萎縮」してしまったり、「硬く」なったりしがちです。

本来しっかり動くべき筋が十分に動かさないことで機能低下してしまえば、日常生活に何かしらの支障が出てしまう可能性があります。もちろん運動パフォーマンスも例外ではありません。

(2)深部に位置するため表体表から触れることが難しい

人間の体は筋や脂肪など様々な組織が幾重にも重なる事で、内臓を保護しています。深部に位置する腸腰筋は体の表面から触れることが難しい筋です。もちろん個人差もあるので、体つきによって触りやすかったり触りにくかったりしますが、基本的には表面にある筋ではないので、直接がっつり触って緩めることは難しいです。

表面の筋であればその変化に気付きやすい(細くなった、硬くなったなど)のですが、深部の筋はそうはいきません。様々な動き(トレーニング)を行うことで、しっかり筋を動かすことが重要です。


腸腰筋のトレーニング

腸腰筋だけにとどまらず、筋肉はそれ単体で動くことはほぼありません。必ず、何か別の筋肉と連動するようにして協力しながら動きます。

一般的に筋肉を太くするトレーニングとしては、「ストリクト法(=ターゲット筋にでくるだけ負荷が集まるようなフォーム)」が採用されます。筋肉の肥大という意味では、非常に理にかなった方法ですが、臨床的な現場感覚としては、使えていない筋肉を動かすためのトレーニングとしては不向きだなと感じています。

念のため、補足をしておくと「ストリクト法」を否定しているのではなく、目的が違うということ。今回は腸腰筋を他の筋肉とともに合理的に動かすことが目的なので、肥大させることが目的ではありません。

股関節を動かす際に使われる筋肉の動きを考えながら腸腰筋”周辺”も連動させて上手に動かすことが大切です。


[ 下肢内旋と組み合わせた股関節屈曲のトレーニング① ]
①足を台の上に乗せて太腿を内側にねじる(内旋)
②膝を胸に近づけるように腿を上げる(屈曲)

[ 下肢内旋と組み合わせた股関節屈曲のトレーニング② ]
①実施脚を上にして横向きになり太腿にチューブを挟む
②大腿部を内側にねじる(内旋)
②膝を胸に近づけるように腿を上げる(屈曲)


まとめ

腸腰筋自体は非常に「奥深い筋肉」です。それ単体で注目されることもありますが、人間の活動の中で単体で動くことはないので、どんなふうに連動して使われているかに注目することが重要ですね。

腸腰筋の使い方が変わると、足の捌きも変わってきます。ぜひお試しください!!

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