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遠い記憶 第十話

学校から、帰ると、誰に言われる事無く、
宿題を片付け、お宮の掃除に風呂焚き。
もう、そんな事自然と身に付いてい居た。
母が、仕事から帰って来た時の、顔色を、素早く見る事も覚えた。

さあ~てと、宿題やろうかなと、とっくに終わっていても、
勉強するふりをする。
ほどほどしてから、さあ~てと時間割しようかなと、
ランドセルに、教科書を入れるふりをする。

次に、台所に立つ母の様子を見る。
その時の、献立を見ながら、必要なお茶碗を並べる。

弟は、その間テレビの前から離れない。
その内、母の顔が引きつり、早よう勉強せんかー!と怒鳴る声。
私は、その声に、びくっとする。

父は、上座に座る。
父が箸を付けるまで、私達は待たなければならない。
南国九州の、男尊女卑の風習は、色濃く残る。
静かな、食卓であった。
食べ終わると、一番に片付ける。
なるべく、母を怒らせたく無かったが、それも、無駄な事。
早よう勉強せんか!と、かん高く怒鳴る声。

私は、早々お茶碗を洗い。
お風呂でも入ろうかなと言い、風呂場に逃げる。
風呂から上がると、母の顔は鬼の様。
早よう勉強せんか!と、
私は、さてと、布団しこうかな?と、
家族全員の布団を敷く。

もう、その頃の母の顔は真っ赤、小言が始まる。
始めは、弟に怒っていたはずが、
どうしてそうなるのか、鉾先は、私に向かって来る。

結局、私が怒られる。
その声は、止まる事を知らない。
思わず泣くと、うるさい!と、又怒鳴る。
私は、布団にもぐり、掛け布団を、口の中に押し込み

声を、押し殺して泣いた。
それは、決して忘れられない、理不尽な事だった。

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