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遠い記憶 第五話

お宮の裏には、山があり、

岩肌が、白かったのを、覚えている。

その、岩肌を登って遊んだ物だった。

おやつと言えば、南国サトウキビの、枝をしゃぶっていた。

ほんのり甘いが、枝の繊維で口の中は、モサモサ。

お宮の外に出ると、県道だったか?

大きな、舗装された道路。

その、道路を渡ると、防風林。

その、防風林を潜り抜けると、どこからか、潮の香りと、波の音。

足元は、土から段々と、サラサラの砂に変わる。

丘を上がり、登り切ったら、そこは、見渡す限りの青い海。

砂浜は、サラサラと白い。

波は、寄せては返し、足元へ来る波は白い細かな泡の様。

泳げはしないが、波打ち際で水にたわむれる。

決して、豊かでは無かったが、自然だけは恵まれていた。

ただ、母の目は、

弟を、抱っこする時の、眼差しが何とも言えず、柔らかだっが、

私に向ける顔は、あんな優しい顔では無かった。

それが、私には物悲しかった。

夜になると、

酒に溺れて、騒ぐ父。

いつの間にか、私は、夜は怖い物と思う様になって行った。

部屋は、荒れ片付いたためしが無かった。

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