ランジにおける動作分析|局所からの機能改善アプローチ
足を前方に踏み込むランジ(lunge)を一度は臨床やスポーツ現場で使ったことは.あるのではないでしょうか。
フォワードランジ(以下ランジ)は片脚での下肢の接地時の動的安定性の評価、下肢の筋力強化、下肢障害の病態把握の評価、スポーツ復帰の判断材料などに用いられる機会が多いかと思われます。
ランジは一般的にスポーツ現場ではジョギング開始時の評価として用いられることが多い印象がありますが、実際に臨床の現場でランジを観察する際にはどんなポイントを重点に置いていいるでしょうか。
ランジの注意事項として
✔︎股関節-膝関節-足関節が直線になる
✔︎膝が内側に入らない
などという概念はあるにも関わらず、動作の意味や各関節の必要な機能などを説明されているものは少ないのではないでしょうか?
私自身も以前から臨床やスポーツ現場での評価としてランジを利用していましたが、はっきりとした意味合いを持たずに下肢の安定性をチェックするためにランジを取り入れていました。
キューイングによって動作修正できるのであれば問題はありませんが、動作修正ができない場合には根本的な原因を考える必要があります。
私はこれまでは主に筋力の問題だと考え、トレーニングの負荷を高めることばかりを行ってきましたが、ランジが安定せずにスポーツ復帰まで時間を要することを度々経験してきました。
ではランジを安定させるために必要な要素とはどういったものがあるでしょうか。
ランジは下肢における動的な安定性を評価することに適しており、不安定性がみられる場合には下肢の関節機能不全を有していることが考えられます。
一方で、ランジを評価することによって問題となっている機能を見つけ出すヒントにすることができます。
このnoteは臨床やスポーツ現場においてセラピストやトレーナーの方たちの問題解決に対して、少しでもヒントとして取り入れていただければ幸いです。
今回はランジの意味を改めて考え、普段のフィットネスクラブやスポーツ現場で実際に利用している
✔︎ランジの考え方と動作分析のポイント
✔︎ランジに必要な局所の関節機能
✔︎局所の関節機能改善のためのアプローチ
以上の3点を中心について解説していきたいと思います。
ランジの目的を考える
まずランジのスポーツにおける位置付けと動作の意味を改めて考えていきたいと思います。
多くのスポーツでは片脚での安定性が求められます。
バスケットやサッカーなどではストップ、カッティング、ターン動作、野球などの投球、打撃動作では下肢の安定性を基礎に、胸郭や上肢などの上半身の動きが連動します。
減速動作の重要性
多くのスポーツでは加速と減速という2つの要素をコントロールできることが重要になります。
足関節内反捻挫や前十字靭帯損傷などの代表的な急性外傷は急激なストップや切り返しなど方向転換、ジャンプからの着地など動作を"減速"させる局面で多く見受けられます。
減速とは
完全に停止する場合もあるが、方向転換をするために減速する場合や、多くの場合は単に1つの動作スピードから異なるスピードへと効率よく移行するために減速する。
引用|アスレティックムーブメントスキル 著者 Clive Brewer 監訳 広瀬統一
とされています。
つまりスポーツにおける減速の目的はただ止まるということではなく、動作を次の局面に移行する(方向転換)という目的を達成するための準備段階と捉えることができます。
つまりスポーツにおける安定とは次の予想される局面に対して動作を意図的に減速できることが重要になります。
また以下のようにも
効率的に停止するためには、適切な技術に加え、後方連鎖を介した大きな床反力そして伸張性の筋活動が関与する
引用 | アスレティックムーブメントスキル 著者 Clive Brewer 監訳 広瀬統一
このように記述されており、減速では移動方向に対して動作を制御する筋群の遠心性収縮が重要になります。
これをランジに置き換えて考えてみます。
股関節伸展筋|大殿筋、ハムストリングス
膝関節伸展筋|大腿四頭筋
足関節底屈筋|下腿三頭筋
簡単ではありますが、上記の筋肉の遠心性収縮機能が不足する場合には体幹は前方へ慣性に拮抗出来ずに前方に煽られ体幹前傾を招きます。
この前傾を修正しようとした場合には体幹を後傾させることで上半身質量中心が後方化、下半身質量中心の前方化による膝関節屈曲につながる可能性があります。
つまり前脚にたいして体幹前傾、膝関節屈曲が大きくなるランジは前方への慣性を相殺できていない状態となります。
このようにランジをする際には動作分析の観察のポイントを絞り込むことが重要になります。
そして動作分析から得られた情報をもとに、足関節、膝関節、股関節などの局所の問題点を評価し、その原因となる機能改善を図ることがランジの動作修正につなげるためには必要となります。
ランジ動作分析のポイント
今回取り上げるランジは主に減速を目的としたランジとして考えていきたいと思います。
ランジでは減速できること、つまり意図的に止まれるかということが非常に重要になります。
身体の前方での動作は減速局面となり、ランジでは減速局面を再現することができます。
つまりランジでは加速によって発生した前方運動量を抑制することが必要になり、減速=意図的に止まれるかということが非常に重要になります。
ここでのポイントは下腿の傾きに注目します。
床反力の影響を考える
減速動作を分析するうえでは床反力の影響を考慮する必要があります。
床反力はニュートンの第3の法則である作用-反作用の法則を参考にします。
この法則は物体に力かけた時、反対方向へも同様の力が働いていることになります。
これをランジに当てはめて考えてみると下腿の角度が観察のポイントとなります。
下腿が前傾すれば床半力は前方に向くため加速方向へ優位となり、後傾すれば床反力は後方に向くため減速方向に優位に活用できると考えられます。
下腿前傾|床反力方向は前方に向き加速に優位
下腿後傾|床反力方向は後方に向き減速に優位
床反力の働きを考慮すると
下腿前傾によって生まれた床反力は加速には優位に働きます。しかし、減速を目的とした場合に下腿は前傾は不利に働き、下腿の制動に関わる足関節、膝関節の機能不全によって下腿の前傾が制御できない場合には、体幹後傾による制御が求められることが考えられます。
結果的に上半身質量中心の後方化による相対的な下半身質量中心を招くことになります。
これらのことからランジでは減速方向に対する下腿の角度を観察することが有用だと考えることができます。
先述しましたランジの姿勢として膝関節屈曲が増加したパターンに遭遇することがあります。
このランジをトレーニングとして取り入れる場合には問題はないと思います。しかし、減速動作の評価としてのランジでは膝関節が屈曲した状態は不十分である可能性があります。
膝関節屈曲パターン
なぜ膝関節が屈曲したランジとなるのか。
ポイントとしてこの時の膝関節屈曲は能動的な動きではなく、減速が果たせない結果として起きたものとして考えられます。
足部接地時には前足部が接地するにしたがって、脛骨は足部上で前傾しようとする下腿前傾モーメントが生じます。これは体幹前方移動による推進力によって生まれたもので、減速ではこの下腿前傾モーメントを制御する機能が求められます。
この時に下腿前傾を制御できない場合には膝関節屈曲、足関節背屈を招き前方への運動量を制御できていないことにつながります。
膝関節屈曲による上半身質量中心後方化は、骨盤後傾に伴う膝関節伸展モーメントを増加させ、膝関節伸展機構への伸張ストレス、膝蓋大腿関節への圧縮ストレスを増加させる原因となります。
また膝関節伸展モーメントは大腿四頭筋の張力を増すことから、脛骨前方偏位を招くことも考えれ、前十字靭帯損傷の術後や膝伸展機構の傷害などでは特に注意が必要になります。
一方、ランジの後脚では主に推進局面を再現することができます。
この時の足部、足関節の機能を考えてみると、足関節底屈筋群の遠心性収縮にる下腿前傾の制御、母趾球と小趾球荷重への荷重、MP関節伸展によるウィンドラス機構による足部剛性上昇などが必要になります。
後脚の機能不全によって重心が前方に偏位した結果、膝関節の屈曲が増加してしまい減速動作として不十分となってしまいます。
膝関節外反パターン
もう一つの異常動作としてはknee-inと呼ばれる、膝関節の外反です。
膝関節外反の原因をあらためて考えてみると、関節の構造的な安定性が保たれているのかということが重要な要素となります。
この時の足関節の機能に着目をして距腿関節の背屈制限を有する場合には、足部接地時での関節軸偏位を招き、足部を中間位に維持しようとした場合には前額面上での股関節内転、内旋による骨盤側方変位、膝関節外反などの代償につながる可能性があります。
このような異常動作では、股関節内転や膝関節外反を制御する中殿筋や内側広筋の筋出力を向上させるよりも先に、運動軸の偏位を招いている足関節背屈制限の改善が優先されます。
ランジ改善アプローチ
ここからはランジに必要な局所の関節機能について解説していきたいと思います。
先述した減速を目的としたランジにも関わらず、膝関節の外反、下腿の前傾がみられる場合には関節の構造的な安定性が不十分な可能性があり、下腿前傾を抑制するための関節安定性を向上させる必要があります。
1.足部・足関節
足関節では減速における下腿の前傾をヒラメ筋の遠心性収縮、膝関節外反は構造的不安定性が関係し足部アーチ機能、距腿関節、距骨下関節の構造的安定性が求められます。
1-1.足部アーチ
足部アーチは内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つの構造によって衝撃緩衝、推進力の役割を果たしています。
内側縦アーチは舟状骨を頂点に構成され、足底腱膜や足部内在筋によるトラス機構によって支持性を高めることができます。
また、内側縦アーチは母趾外転筋、外側縦アーチでは小趾外転筋による働きが重要になるため足趾開排機能も必要な要素になります。
内在筋トレーニング
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