🍇登美の丘ワイナリー | サントリーフロムファーム・~前編~
日本におけるワイン発祥の地、山梨県。
大手メーカーから家族経営の小さなワイナリーまで存在する日本ワインの中心。
「デキャンタ―・ワールド・ワイン・アワード2024」において、『登美 甲州 2022』が最高位を受賞、日本では史上初という今一番ホットな登美の丘ワイナリーへ訪れました。
11:30に新宿を出発、特急かいじ19号に乗って初めての甲府へ。
トンネルを抜け塩山を通過すると、棚仕立てのブドウ畑が一面に広がります。
甲府駅に降り立つと、青森とは比べものにならない暑さ。
背中に汗がじわっと滲み出てきました。
甲府駅から車で約30分
山梨県甲斐市に位置する大垈(おおぬた)に、サントリー登美の丘ワイナリーがあります。
⬛歴史
■園地
150ヘクタールの広大な敷地に、日当たりの良い斜面に25ヘクタールのブドウ畑が広がっています。
日照時間や標高差などの詳細な条件に基づき、約50の区画に分けて管理栽培を行っています。
風が気持ちいい、いや、涼しいくらい。
甲府市は夏暑さが厳しく、日本でも有数の
「暑い地域」ですが、ここは日中も35℃を超えることはあまり無く
夜は大体、27.8℃くらいまで下がるそうだ。
この寒暖差がブドウにとって大事という。
・土壌
土壌はシルトと粘土と砂利が混在しています。噴火による火山灰が基盤で、
その上にはシルト層が存在している。
・ブドウに重要な酸
ここで重要視しているのは、“酸”
気温が低いと酸度が高まりますが、弘前との違いは、完熟したブドウを収穫しつつも酸を保持することに重点を置いていることです。
・自園の強み
完熟を待つ間、雨や台風のリスクが常に存在します。
自然を相手にする仕事では、運も成果に大きく影響します。
通常の農家では、色づき糖度が上がった段階で収穫することが多いですが、サントリーではアロマやポリフェノール、フェノールを最大限に引き出すため、果実が完全に熟するのを待って収穫しています。
それが、サントリーの自園での栽培の強みであるという。
通常開花してから100日程度で収穫するが、
甲州やフラッグシップの「登美 赤」に使われるプティ・ヴェルドなどは、
10月下旬から11月初旬にかけて収穫されます。
自園で徹底的にこだわる。
ただ、ひたすら、待つ。
・適地適植
他の園では聞くことがなかった植え替えについて教えていただきました。
適地適植の原則を重視しています。
たとえば、ここにカベルネ・ソーヴィニヨンが植えられていたとします。
ワインとして客観的に評価した時、
「本当にこれが最適な品種なのか?もっと適したブドウはないのか?」という判断を下すには、少なくとも10年から20年の歳月が必要です。
20歳で会社に入り、40歳で植えたブドウが良いか悪いかを判断する頃には、定年が近づいています。
その中で判断をするというのは非常にシビアなことですが、よりこの土地で最適な品種の選択を行っているというのです。
■甲州
登美の丘ワイナリーでは、甲州を可能性を最大限に引き出す重要な品種としています。
甲州は1000年近くの歴史を持つ日本の土着品種で、日本での栽培に適したブドウです。
樹勢が強い品種。
棚仕立て(延ばして返して間を埋めていくという自然系を採用)長梢剪定。
古いもので、樹齢40年の甲州もある。
■特別な栽培法
昔はトップシークレットだったという
山梨大学とサントリーとの共同研究の
副梢栽培(わき芽栽培)
について教えていただきました。
春になって芽が出て、5・6月に開花します。
その際に咲いた花の枝ごと全部落としてしまう。そうすると、ブドウは子孫を残したいから脇から枝が出てくるという。それによって約40日間は通常の生育より遅くなるという。
あえて収穫時期を意図的に遅らせることにより、暑さによる酸の減少を防ぎ、酸を保持する方法として採用されています。酸が減少すると、アルコール度数が高いだけのフラットなワインになってしまう為サントリーが目指す、上質な果実感や酸に由来するアロマを表現するのが副梢栽培(わき芽栽培)だという。
こちらも収穫は10月の後半ごろ。
なぜ、今は非公開ではないのか尋ねると
ぶどうを見れば成熟が遅いのは明らかに分かるであろうし、
枝を見ればこの仕立て方というのは気付くからだという。
ただ、非常に手間がかかる栽培方法を行えることは、普通では成し得ない技術なのです。
最後に
登美の丘では、まるで「これ以上はない」と思うほど、自園でブドウと畑に対する徹底したこだわりを持ち、常に最良の選択を追求していました。
日本ワインの中心で、テロワールというブドウ畑を取り巻く自然環境要因と技術の継承について考えます。
良いワインは良いブドウから。
後半に続きます。
Photo: Shinobu Osawa
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