研究から見るプロバイオティクスの「下痢改善効果」
お腹がゆるい、つまりは下痢に悩まされている人は多いでしょう。私たちの消化器系は、食物を消化し栄養を取り込み、不要なものは排出する役割を担っています。食事を摂った後、食物は消化され、栄養素が体に吸収され、余分なものは便として排出されます。健康な便通は、未消化の食物や有害な細菌、毒素を体外に排出しますが、時々腸の働きに問題が起きて、下痢のように便が緩くなってしまうこともあります。下痢は、緩い便が頻繁に排出されることで、栄養が不足し、水分が失われる状態を指します。
ほとんどの下痢は自然に治りますが、重症になると10回以上の排便が1日に起きることもあり、その場合は体内の水分が急激に失われ、脱水症状が引き起こされることがあります。この状態は危険で、早急な治療が必要です。
アメリカの国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所にれば、下痢が原因で志望する人の数は、エイズやマラリア、麻疹の死亡者の合計よりも多いのだとか。2023年に発表された論文は、プロバイオティクス(善玉菌)を含む飲料によって、この下痢がどうやって改善されるかを調べました。その内容を紹介しつつ、腸の健康を取り戻して下痢を改善する方法を解説します。
下痢の病理
下痢は、主に3種類に分けられます。
急性下痢
通常1~2日続く一時的な症状で、水のような緩い便が出ます。特に治療の必要はなく、自然に治ります。
持続性下痢
このタイプの下痢は数週間、特に2~4週間続くことがあります。
慢性下痢
下痢が4週間以上続く場合は、慢性下痢と呼ばれます。大抵の下痢は4日で自然に治るため、慢性下痢の場合は医師の診察が必要です。
下痢の主な原因
下痢は様々な原因で起こりますが、主な原因は以下の通りです:
胃の感染症
この感染症は胃腸炎とも呼ばれ、食品や飲料を通じて広がります。
食物アレルギーや不耐性
特定の食物に対するアレルギー反応や不耐性が下痢を引き起こすことがあります。
薬の副作用
抗生物質や制酸剤、がん治療薬などが下痢を引き起こすことがあります。
感染症
ウイルス、細菌、寄生虫の感染は下痢を引き起こす主な原因です。例えば、ノロウイルスやロタウイルスはウイルス性の胃腸炎を引き起こし、カンピロバクターや大腸菌(E. coli)、サルモネラ菌、赤痢菌は細菌感染を引き起こし、寄生虫は特に汚染水を通じて感染して下痢を引き起こします。
旅行
異なる国や地域に旅行するとき、新しい環境や食事、水などによって下痢を経験することがあります。旅行者下痢は主に有害な細菌、ウイルス、寄生虫に汚染された食物や飲料水によって引き起こされます。特に清潔な水が不足している地域では、このような下痢が起こる可能性が高まります。
特に旅行者の下痢は、不衛生な水を摂取することで寄生虫感染によって引き起こされることがあり、下痢が長引くこともあるため注意が必要です。米国疾病予防管理センターでは、旅行者の健康と下痢に関する情報を提供しています。
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