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膝関節の可動性を支える「膝蓋骨」の動きを阻害する要因〜骨の問題、靭帯の問題、筋肉の問題

膝の屈曲伸展がここまでスムーズに動くのは、動物でも人間だけであり、その要因が膝蓋骨(パテラ)の可動性だとされています。膝蓋骨は膝関節伸展時には外上方へ、屈曲時には内下方へ動きます。柔軟に膝蓋骨が動くことによって、私たちの膝の可動性が確保されているのです。

では、その膝蓋骨の可動性が制限されるのはどのような状況か。いくつか考えられるパターンを解説します。

中間広筋の拘縮

膝関節の可動域というと、完全伸展時に基本0°となります。逆に屈曲方向はふくらはぎともも裏がぶつかるまでなので、160°前後とかなり広めです。

先ほど「膝蓋骨は膝関節伸展時には外上方へ、屈曲時には内下方へ動く」と書きましたが、膝関節の可動域が制限されている人の場合、膝関節屈曲時に膝蓋骨が内下方へ動かないという現象が起こります。

それを引き起こすのが、大腿直筋や中間広筋、外側広筋です。これらの筋群が拘縮すると、膝蓋上嚢が可動性を失ってしまいます。

膝蓋上嚢(膝蓋上包)とは、膝蓋骨の周辺にある軟部組織で、その役割については「キャタピラーの動きをする」とよく表現されます。膝蓋上嚢は膝の曲げ伸ばしに応じて動きますが、それに合わせて膝蓋上嚢の上にある膝蓋骨が動くというメカニズムがあるのです。

そして、膝蓋上嚢には中間広筋なども直接付着しています。そのため、中間広筋の拘縮により膝蓋上嚢が動かなくなり、膝蓋骨も動かなくなるわけです。

骨盤の後傾

高齢者の方々は臀筋の筋出力がいまく発揮できず、骨盤が後傾しやすくなるとされています。骨盤の後傾により膝関節が軽度屈曲位になるということは、空気椅子になるのと同じです。結果、大腿四頭筋の筋出力が促されハムストリングスは弛緩します。

また、骨盤が後傾すると身体の重心位置は下がり、足圧重心はかかとに乗ります。すると、足関節の背屈制限が起こり歩行時にトレンデレンブルグ症候群が起こりやすくなります。

このケースは高齢者に限定されません。日本人は大半が骨盤後傾のアライメントだとされています。女性は反り腰が多いという意見はありますが、実際に骨盤単体が前傾している人は稀です。若い女性の方のアライメントを見ると、腰椎が伸展しているだけで骨盤が前傾しているわけではないというケースがほとんどだと思います。

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