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使わなければ失われる。機械受容器を刺激して身体地図=ボディマップを書き換えよう

「Use it or lose it」

これは英語のことわざで、日本語に直すと「使わなければ失われる」という意味です。久しぶりにサッカーをしたら足首を痛めてしまったり、10年ぶりにカラオケに行ったら喉がすぐガラガラになってしまったりという経験がある人には、このことわざの意味が実感しやすいと思います。

私たちは、長年取り組んでいることに関するスキルは年齢を重ねても残っている、あるいは高い水準を保つことができます。還暦近くになっても素晴らしい歌声を披露できるアーティストがいますよね。彼らは何十年にもわたってその歌唱力を維持するためのトレーニングをして、ライブなどで歌う機会があるからこそ、その声を維持できています。

この「Use it or lose it」の考え方は、脳機能にも当てはまります。特に、私たちの身体機能に関係する神経系と、「Use it or lose it」は深い関係性があるのです。今回はそのことを、「機械受容器」「ボディマップ」「関節運動反射」という3つのキーワードで解説します。

体の感覚システムと「機械受容器」

私たちの体には、外界や体内の状態を感知するさまざまな感覚システムが存在します。これらは大きく分けて3つのカテゴリーに分類されます:

  1. 外受容感覚:いわゆる五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)が該当します。外界からの刺激を感知します。

  2. 内受容感覚:主に体幹内部の状態を感知します。心臓、肺、胃、腸などの内臓の状態を脳に伝えます。

  3. 固有受容感覚:体の位置や動きに関する情報を脳に伝えます。

今回注目するのは固有受容感覚、その中でも固有受容感覚の中でも重要な役割を果たす「機械受容器」です。機械受容器は、体の様々な組織に存在する特殊な感覚器官で、主に以下の情報を感知して脳に伝えます。

  1. 関節の角度と位置:関節の曲がり具合や位置を感知する

  2. 筋肉の長さと張力:筋肉の伸び縮みや力の入れ具合を検出する

  3. 運動の速度と加速度:体の動きの速さや方向の変化を感知する

  4. 圧力と振動:皮膚や深部組織の受容器が、体にかかる圧力や振動を感知する

  5. 平衡感覚:内耳の前庭器官に存在する受容器が、頭部の傾きや加速度を感知し、体のバランスを維持する

これらの情報が統合されて脳に送られることで、私たちは自分の体の位置や動きを正確に把握し、スムーズな動作を行うことができるのです。

ボディマップ(身体地図)と機械受容器の関係

私たちの脳は、体の状態や位置に関する情報を「ボディマップ(身体地図)」として保存しています。このボディマップは、体の各部位の位置関係や動きの可能範囲を表す脳内のイメージです。機械受容器からの情報は、このボディマップを常に更新し、精緻化する役割を果たしています。

ボディマップと機械受容器の関係は以下のように説明できます。

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