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筋肉の「効き感」が薄いときに試したい小脳のエクササイズ。小脳の機能を理解して活性化する

人間の脳には約860億個の神経細胞があるとされています。この内訳を見ると、運動・知覚・精神活動の中枢を司る大脳に160億個の神経細胞があるのに対して、小脳には690億個もの神経細胞が集中しています。質量としては全体の10%程度の小脳に、約8割の神経細胞が集中しているわけです。

今回は、そんな小脳の活動を活性化して、関節可動域を高めたり運動時の痛みを軽減したりする方法を解説します。

小脳が行う3つの仕事

小脳になぜこれだけ多くの細胞があるのか。小脳は運動のコントロールを司る部位であり、ここには視覚、前庭覚、体性感覚などあらゆる情報が集約されます。小脳はそれらの情報を統合・処理したうえで、大脳など他の部位に情報を伝達していくのです(一説では、小脳の段階で全体の情報が1/40程度にまで整理されるといわれています)。

小脳によって整理された情報がさらに統合され、ボディマップが形成されたり運動というアウトプットとして実行されている。これを絶えず繰り返しているのが、私たちの身体というわけです。これだけ多くの情報を処理するので、小脳は全身で消費する酸素量の18%を占めているとされています。

もう少し具体的に、「動作」という観点で小脳の情報処理がどのような役割をになっているのか解説します。

(1)正確性

間違いなく正しい動作を行う、運動時に発生したエラーを修正するなどの行動には小脳の働きが不可欠です。

(2)バランス

三半規管や耳石器といった前庭系から送られた情報をもとに、身体の位置関係や重力に対してどのような姿勢になっているのか(向いている方向、傾き、加速度合いなど)を判断するのにも、小脳が関係しています。

こうした位置情報に対して、屈筋群と伸筋群をどのようなバランスで収縮させるのか。こうした運動へのフィードバックにおいて、小脳の情報処理が役立っているわけです

(3)協調

協調とは何か、簡単にいうと「滑らかな身体動作の実現」です。私たちの身体は、一見シンプルな動作にも多数の関節・筋肉が協調して働いています。水を飲むとき、コップを持って水を注ぎ、口元にコップを運んで絶妙な角度にコップを傾け、水をこぼさないように・コップを落とさないようにテーブルにコップを置く。

これだけの動作でも、指、手首、肘、肩といった関節とそれに付随する筋群が総動員されています。小脳による情報処理とそれをもとにしたアウトプットがなければ、コップに水を注ぐときに水をこぼしたり、コップを持つ力の加減を間違ってコップを落としたり、口元にコップを運ぼうとして間違ってコップを唇にぶつけたりしてしまいます。

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