仙骨について極める
(1)概要
仙骨とは、脊椎の下部に位置する大きな三角形の骨のこと。骨盤の上方後部に位置し、くさびのように寛骨に差し込まれている。上部は腰椎の最下部と結合し、下部は尾骨と結合する。仙骨は誕生時、5個の椎骨(仙椎)で形成されているが、16~18歳頃から癒合が始まり、多くの人が30代半ば(34歳頃)に完全癒合して1つの骨となる。
仙骨は3つの異なる面を持ち、周囲の骨と関節結合している。全体に彎曲、前傾しているのが特徴で、前方へ凹面の形状を有している。仙骨の最上部である仙骨底は、前方に突出してて岬角(こうかく)を形成。仙骨底は前下方へ約45°傾斜しており、第5腰椎(L5)は前方へ滑り落ちる力が働く。
中央部は大きく背側に湾曲し、骨盤腔の空間を作る。側方への2つの突出は仙骨翼と呼ばれ、腸骨とL字型の仙腸関節を形成する。
(2)仙骨からの健康へのアプローチ
ヒトが誕生時に行う呼吸(肺呼吸)を「第二次呼吸」と呼ぶ。それに対して、第一次呼吸は頭蓋骨・仙骨で行われる「頭蓋仙骨リズム」を指し、このリズムによる血液循環によって、酸素が運搬されているのである。
第一次呼吸は胎児の時代より行われているものであり、誕生後もヒトは第一次呼吸・第二次呼吸の両方で、酸素を身体へ循環させている。そのため仙骨や頭蓋骨を揺らし、それぞれのポジションを矯正すると全身の冷えを改善するというアプローチも可能である。
(3)仙骨前傾の重要性
脊柱の終着点である仙骨が過後傾すると、それにつられて脊柱も後弯する。一方過前傾すると、脊柱は前弯する。この連動メカニズムを「腰椎仙骨リズム」と呼ぶ。いわゆる骨盤後傾のクライアントへのアプローチは、厳密には仙骨を前傾させるという認識で行うことが重要である。
例えば、左足の股関節を屈曲させると左寛骨はそれに伴い後傾する。寛骨の後傾に伴い、仙骨が連動し脊柱も後弯してくる。これはスクワットで腰を落とした際、臀部と脊柱が丸くなるメカニズムと同じである。
一方、スプリンターのなかには、競技中に股関節を約80°屈曲させている選手もいるが、その時に脊柱が後弯すると速く走れない。競技中のスプリンターは、股関節屈曲→寛骨後傾まで一般人と同じだが、仙骨はカウンターで前傾した状態を維持していることとなる。
このメカニズムは、歩行、ランニング、階段上り下りなど日常動作でも重要となる。仙骨は大殿筋の付着部でもあるため、ヒップアップ・美脚といったボディメイクにおいても、仙骨が後傾すると日頃の努力にかかわらず、お尻がたれている・短足といった見た目になってしまう。
1)「仙骨座り」の弊害
仙骨座りは、臀部が前方へ滑り骨盤(仙骨)が後傾した状態で、仙骨後面・胸椎付近)の二点で身体を支えて座っている状態を指す。理想的な座位である坐骨座り(骨盤を前傾させ、坐骨で座面を支える。背もたれにもたれすぎない姿勢)よりも身体への負担が大きいとされる。
2)仙骨前傾へのアプローチ
仙骨に付着している筋肉は、広背筋、梨状筋、大殿筋、多裂筋、胸最長筋、腰腸肋筋などが挙げられる。
広背筋
起始 胸腰筋膜の浅葉,Th4~8・腰椎・仙椎棘突起,肩甲骨下角、腸骨稜、第10~12肋骨
停止 上腕骨の小結節稜
作用 肩関節伸展・内転・内旋
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