東京には住めない。

昔むかし、東京の築地市場で働いている年下の彼に恋をした。
友人のいとこで仙台で出会った。
一瞬の出会いが運命になるかもと思って、
惹かれた直感だけを信じて、連絡を取り続けた。

不意に会いたくなって、一人で東京に会いに行った。
会えるかどうかも分からない、約束もしていない状態で。
今、考えるとホラーでしかない。

結婚して退職した同期が東京にいたから、
とりあえず、その同期に会うことにしていたけど、予定はそれだけ。
完全ノープラン。
社会人2年目でも、東京は少しドキドキする。

新宿を歩いていたら、男の人に声をかけられた。
立ち止まらない私に笑顔で、
「アルタってどこすか?」
いや、知らんけど。
トウキョウ、コワイ。

信号で立ち止まってたら、違う男の人に、
「ねえ、いま、時間ある?」
ないです、ごめんなさい。(めっちゃ暇だけど)
トウキョウ、コワイ。

帰りの高速バスの時間まで少し時間があって座り込んでいたら、
スーツを着たおじさんに、
「君、時間あるならお茶いかない?」
コワイコワイ。

これをもって、私は東京に住めないということを痛感した。
きっと、相手の皆様は、
何にも思ってないし、「ただ」声をかけているのだと思う。
でも、過去の出来事をきっかけに、
【声を掛けられる】ことが怖くてたまらなかったのだ。
その過去の出来事については、次の記事で。

ドキドキしながら東京にきたものの、
冷静になって、いろいろ無理なんだなって思ってからは、
博物館と美術館を見て、終わりにした。
年下の彼に連絡を取ることはしなかった。
代わりに、スタバの彼に連絡を取った。
上野の桜が散り始めていた。

あの時の私は、何かを変えたかったけど、
結局自分で自分をがんじがらめにしてたのかもしれない。
夢と現実。
ただ目的もなく東京にきている自分が、なんだか恥ずかしかった。
仕事をしている彼等に会える自分じゃなかった。

家から出たくて、県外に行きたくて、
大学も下見にいったけど受験しなかった。
県外の就職もしなかった。
結局、自分を変える一歩ができなかった。

それは、今も変わらない。
やっぱり、東京はドキドキする。
桜をみると、ちょっと心がざわつく。
今いる場所の安堵とちょっとの後悔。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?