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転職したい気持ちと、スタバの店員さんに恋した気持ちは同じだった

社会人一年目の冬、スタバの店員さんに一目惚れをした。

友人が働いているショップと同じフロアのスタバで、一目惚れ以来友人に会う度に立ち寄った。というか、スタバが目的になっていた。何回か会えなかったから、次に会う時は絶対に逃がしちゃいけないと思い、手紙を常に用意していた。ついに会えたときは、店先で鼓動が早くなるのを感じながら、声も震えて、手も震えながら、お会計と一緒に手紙も差し出した。驚いていたけど、連絡をくれて、同い年ということも分かり、仲良くなった。

友人同士を交えて飲み会をしたり、2人でも食事にいった。

目をキラキラさせながら、好きな音楽の話をしてくれた。

「ミスチルなら、(あ)から(ん)までの曲、全部歌えるよ」

有名大学に一年浪人して入学し、卒業と同時に東京の大手商社への就職が決まっていた。大手商社を選んだ理由も話してくれた。全部がキラキラしていた。私にとって、恥ずかしい表現だけど、まさに王子様だった。

声も表情も仕草も文面も、すべてに恋をしていた。

でも、12月に出会ったけど3月末には東京へ行ってしまう。宮城なら全然通えるし、東京の銀行に転職してもいいよね。好きが爆発しそうで、いらぬ妄想にまで発展していた。

彼には、ちょっとやんちゃな地元の友人達がいた。有名大学でたくさん勉強して、大手企業に就職する真面目さも兼ね備えていたけど、ちょっとやんちゃな友人がいるから存在できたのかもしれない。彼の友人の家で、彼と私とその友人と3人で一緒にオールしたりもした。映画を見ながら、友人は寝てしまって、私と彼はソファにいた。さりげなく手をつないでみたけど拒まれなかったから、嬉しさでたまらなかった。そのままくっついて朝を迎えた。

2月に入って、彼は東京へ行く準備で忙しくなってしまった。親戚に挨拶をしにいったり、教授に挨拶にいったり、そんな毎日を彼は私に教えてくれた。時々電話もしたけど、彼が行ってしまう寂しさと気持ちが溢れてしまって、意を決して気持ちを伝えた。

「ごめんね。東京に就職が決まってから、こっちでは彼女作らないって決めてたんだ。遠距離とか出来ないんだ。」

大好きな声で言われたことは、悲しかったけれど分かりきっていた事だった。そうだよね、仕方ないよね。大好きだから、春になってからは連絡を取らなかった。

それから10年経って、私には夫がいる。全然キラキラしていないけど、すべてをさらけ出せる人だ。キラキラしていない自分も出せる、言ってしまえば、愚痴とか闇の部分も出して、お互いブラックな発言ばっかりして、すっきりしたら美味しいものを食べる。そんな毎日。

今振り返ると、キラキラした彼には釣り合わないと出会ったときから分かっていた。私は凡人で、「努力する」才能も並レベルで、自己肯定感が低い。彼にはきっと、向上心もあって、キラキラした女性がきっと似合う。そうやって自分に納得させていた。

でも、果たして、本当にそうだったのかな。

キラキラした彼は私が作り上げた虚像だったのではないか。もっと近づいて、もっと話して、諦めていなかったら、違う未来はあったのかもしれない。(そもそも対象になっていないのでは、という点は置いといて)彼だって、ブラックな部分がきっとあったと思う。最後まで飛び込んでいけばよかったのかもしれない。

彼の住んでいる家のイメージは、生活感のない感じ。すっきりしていて、東京でオシャレなマンションに住んでいそう。一方私なんて、決して高くはない家具に囲まれて、大量のおもちゃとセンスのない部屋になってしまった。落ち着きは100%だと思うけど、オシャレとは程遠い。でも、もしかしたら、【危険なビーナス】で不倫していた旦那さんみたいに、豪邸よりも生活感のある方が落ち着くのかもしれない。


今、私は転職を考えている。

この会社に入りたい!と思える初めての会社だ。求人内容も申し分ない。でも、スタートアップ企業とかベンチャー企業とかってよく分からない。なんだか、東京のキラキラした人が起業していて、働いている人もキラキラしてて、ランチにはサラダランチとかして、プロテインとか飲んでいて、インスタ映えとかもやっちゃってっていう感じなのでは?という偏見。

憧れの彼に恋した気持ちと同じ気持ちになっている今なんだけど、

キラキラ見えていても、実際は違うのかもしれない。

実際なんて飛び込んでみないと分からない。

その先に何があるかなんて分からない。

自分の目で確かめていかないと分からないけど、その一歩踏み出すことが怖くてたまらない。勇気が出ない。

でも、

でもね、自分の人生だから。

挑戦することに年齢は関係ないよね。って自分に言い聞かせている。

頑張れ、自分。頑張りたい、自分。

一歩踏み出してみようと思う。


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