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UXライティングのテキストはユーザーの記憶に残ってはいけない

UXのテキストは、ほとんどの場合、人々の記憶から消えるべきなのです。

これは、GoogleのUXライターであるTorrey Podmajerskyさんが、あるインタビューで語った言葉(をDeepL翻訳で訳したもの)です。

わたしはこの一文を読んで、UXライティングの本質が凝縮されているな、と強く感じました。それとともに、これからUXライティングに取り組んでいく上で、自戒としてずっと覚えておきたい言葉だとも思ったのです。

UXライティングのテキストが人々の記憶から消えるべきである、というのは一体どういうことなのか。

こちらがそのインタビュー記事です。

Torrey Podmajerskyさんは「Strategic Writing for UX」というUXライティングに関する本を書かれています。

インタビューもこちらの本の出版に関連して行われたもので、「Strategic Writing for UX」のエッセンスがある程度わかるようなものになっています。

この記事を読んで、まずわたしが共感したのが、次の一節でした。

One of the hardest things is when you are in love with a great solution and it turns out that that solution doesn’t work, right? Like you can write something beautiful and clever and meaningful and delightful, and it just, it is pure poetry, and it doesn’t work or it doesn’t take off.

UXライターにとって最も困難なことのひとつは、美しくて、クレバーで、意味のある素晴らしい解決策だと思っていた言葉が、実際にはワークしなかった時であると述べています。

そうなんです!リアルにこれが困難なのです。わたしに至ってはこんなことはもう日常茶飯事で、マジで最高の案ができたからこれでCTRもCVRも爆上げでしょ!と思ってたら、A/Bテストの結果が惨憺たるもので絶望する、みたいなことがつい先日もありました。

逆に淡々と書いたテキストでめちゃくちゃ結果がよくてマジか!となったりします。

これは一体どういうことやねんという話なのですが、そのヒントになるかもしれないのが次の部分で、Torrey Podmajerskyさんは続けてこう話しています。

So there’s that side of it. Like, we all, every creative person I know wants to make things that are beautiful and sparkly in whatever way. But at the end of the day, that’s not what we’re there for. In fact, UX text, for the most part, it should disappear from people’s memory. It should just evaporate because they are there in this experience to accomplish a task or play a game or, or create their own wonderful writing or their own wonderful art. They’re not there to read those buttons and think, wow, what a great button label!

意訳するとこんな感じでしょうか。

クリエイティブな人たちは、美しくてキラキラしたものをつくりたいと思っています。しかしそれは、UXライティングの目的ではありません。UXのテキストは、ほとんどの場合、人々の記憶から消えるべきでなのです。わたしたちが考えるテキストは、ユーザーがタスクを達成したり、ゲームをプレイしたり、素晴らしい文章や素晴らしいアートを作成したりするために存在しているものです。ユーザーがボタンのテキストを読んだときに、「すごいボタンラベルだ!」と思ってもらうために存在しているのではないのです。

UXライティングのコピーは、あくまでユーザーの行動をサポートするものです。言うなれば脇役で、決して主役ではないのです。主役ではないからこそ、華のあるキラキラした言葉ではなく、読んだ人が忘れてしまうほど自然で淀みない言葉が求められるのだと思います。主役の侍に切られた時に悪目立ちするような派手な死に方で視聴者の視線を奪ってはいけないのです(謎の例え)。

あるコピーライターが「コピーは額に飾って眺めるようなものではない」と言っていた話を以前書きました。

UXのテキストが「すごいボタンラベルだ!」と思ってもらうために存在しているのではない、というのも、これに近い話なのだと思います。

わたしはコピーライターからUXライターになったのですが、コピーライターというのはそもそもクリエイティブなものに憧れてなる人が多く、わたしもそうでした。ただ、その中でも数字にコミットしたい意向がかなり強いタイプだったので、今何とかIT企業でUXライターをやれていると思うのですが、それでもどうしてもかっこいい言葉や綺麗な言葉を書きたいと思うことがあります。

しかし、UXライティングにおいては、それが書き手のエゴになってしまい、ユーザーにとって気持ちの良い体験を阻害する可能性があることを、忘れないようにしたいです。

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