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仕事で使う言葉にもUXライティングを

楽天から外資系のスタートアップに転職して、もうすぐ1年になります。私は日本語しか話せないのですが、社内には外国の方も多く、集まるメンバーによってミーティングが日本語で行われたり、英語で行われたり、両方で行われたりしています。

そんなカルチャーだからなのか、私が今の会社に入って、普段使う言葉ですごく良いなと思った言葉があります。

それは、「インプット」という言葉です。

「フィードバック」ではなく「インプット」

例えば、あるミーティングで、私がアイデアを提案したとします。そこで、これまでだと「何かフィードバックあればお願いします」という感じで、フィードバックという言葉を使って、参加しているメンバーから意見をもらっていました。広告代理店にいた時も、クライアントに提案した後にもらうのは、やはりフィードバックです。何かしらの提案物に対して、意見をもらうことは、「フィードバック」と呼ぶのが一般的だと思います。

ところが、今の会社では、同じような場面で「インプット」という言葉を使うのです。

ミーティングでメンバーが企画などを提案した時に、コメントをもらう際に「何かインプットあればお願いします」という言い方をすることがすごく多いです。そして、それに対して私が何かコメントしたりすると、「先ほどのミーティングではインプットありがとうございました」となるわけです。

この「フィードバック」と「インプット」という2つの言葉、使う場面と用途はほぼ同じなのですが、たったこれだけの差なのに、受け取る側の気持ち良さが全然違います。

フィードバックは「バック」という言葉が入っていることにより、悪い部分を指摘するというネガティブな印象が非常に強いです。それに対して、インプットは「イン」という言葉が入っていることにより、より良くするために追加するというポジティブな印象になります。

私は文章を書く仕事をしているので、フィードバックをもらうのが仕事みたいなところがあります。難易度の高い仕事でコピーを送ったのになかなか返事がこなかったりすると、あれじゃダメだったんだろうか…とめちゃくちゃ不安になります。そして案の定めちゃくちゃ重いフィードバックがきたりすると、絶望的な気持ちになります。フィードバック恐怖症と言ってもいいかもしれません。

そんな気持ちも、フィードバックではなくてインプットだと言われると、「そうか、さらに良くするためのアイデアなのか」と前向きな気持ちで仕事を前に進めることができるのです。

「修正」ではなく「アップデート」

インプットという言葉の良さに気付いた時、私も最近同じような理由で言い換えた言葉があったことに気付きました。

「修正しました」を「アップデートしました」に言い換えたのです。

前述のとおり私は文章を書く仕事をしているので、いろんな人から「ちょっと自分で文章のたたき台を書いたので、レビューしてもらえませんか?」と言われることが本当に多いです。そんなときに、これまでは私が文章を直した後、「修正しました!」と言って送っていたのですが、「せっかく時間をかけて書いてくれたのに、偉そうに修正しましたって送るのはなんかやだな…」と思っていたのです。

その後、いつからか「修正しました!」ではなく「アップデートしました!」という言葉を使うようになりました。修正が悪い部分を直すという印象なのに対して、アップデートはさらに良くするという印象になります。「フィードバック→インプット」と同じように、ネガティブからポジティブに言い換えたのです。

また、これも、例えばSlackやfigmaで外国の方とやり取りをする時に、私がテキストを修正した後に「updated」と一言コメントを入れたりしていたのを、日本語もこれでいいのでは?と気付いていつからか使うようになったものです。

つまり、どちらも英語圏のカルチャーだったり言葉だったりに日常的に触れ合う中で、気付くことができたものでした。

アップデートのほうは私のこじ付け的な部分がありますか、フィードバックではなくインプットを使うのは、ポジティブな言葉を好む英語圏のカルチャーが反映されているのかもしれません。

ポジティブな言葉に言い換えることもUXライティング

ネガティブな言葉はなるべく使わず、ポジティブな言葉で言い換えるというのは、UXライティングで大事なことのひとつです。「パスワードが間違っています」は「正しいパスワードを入力してください」と言い換えることができます。また、有名な話だと、コップに水が半分入っている状態を「コップにはもう半分しか水が残っていない」と言うか「コップにまだ水が半分も残っている」と言うかで、その印象は正反対になります。

言葉をポジティブに言い換えることにより、仕事がスムーズに進むのであれば、「より仕事を快適にするための言葉のデザイン」という意味でのUXライティングとも言えます。

言葉に気をつけなさい、それはいつか行動になるから。

とマザーテレサが言った(と言われていて実は言ってない)そうですが、普段使う言葉に気をつけることで、もっと気持ちよく仕事ができるようになり、最終的にはよりよいプロダクトをつくることにもつながってくるのかもしれません。


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