プレゼンテーションの体験をモデリングしてみる
こんにちは、Uniposプロダクトデザイナーのmybです。
最近、社内外でプレゼンテーションや登壇を行う機会が何度かありました。
プレゼンの目的をしっかり組み立てて構成に反映したら、周りから分かりやすいと言っていただけたり、今までにはなかったプレゼンを通した次の取り組みにつながったりということも発生して良いこと尽くめだったので、プレゼンテーションの設計について、体験設計的な観点で考察をしてみます。
👪そのプレゼンは誰の何のため?
そもそも、プレゼンテーションは何のために行うのでしょうか?
自身の取り組んでいる仕事や理論を説明するとき、ついつい筆が乗って気づいたら自分の興味関心のあることばかりをつらつらと書いてしまって、いざ発表となると「ポカーン」とされてしまうことはないですか?
(私はオタクなのでよくありました)
しかし、こういったプレゼン発表や資料というものは耳を傾けてくれている方々(オーディエンス)がいてこそ成り立ちます。
プレゼン発表や資料を通して、それを試聴したオーディエンスがどのようなことを持ち帰るとその方の学びになるのか?という部分のゴール設定をすることで、一方通行ではなく双方向コミュニケーションを発生させるきっかけにできます。
ということで、どのようにオーディエンスのゴール設定をしてどんなふうに構成を立てていったか、振り返りながらモデリングしてみようと思います。
具体例に出しているプレゼンは、こちらのnoteで紹介しているSaaS Design Conferenceの登壇記事になります。
「当たり前だろ!」みたいな内容もたくさんあると思うのですが、考察&言語化なのでご了承ください!
🏁オーディエンスのゴールはなにか?
そもそも、オーディエンスは長いプレゼンをどうして聴いてくれようと思ったのでしょうか。
仕事や技術の情報収取をしたいオーディエンスの心情や行動動機をリバースモデリングしてみます。
オーディエンスは自身の興味関心に近いイベントの情報を知り、試聴を決めています。
興味関心が生まれる背景には、何かしら興味を持つようになったきっかけがあるようです。
そういったきっかけは、大体が今の状態に満足していない問題が発生しているでしょう。
・もやもやと感じている問題
・過去の原体験
・何かを損なっている
・学びが足りていない
・もっと知りたい(快を得たい)問題が発生していると知覚しているということは、理想と現状にギャップ(課題)がある
例>
・理想状態「デザインシステムで開発効率を上げたい」
・現状の問題「デザインシステムの設計がうまくできない」
・ギャップ(課題)「デザインシステムの設計を体系的に行うには?」そのギャップを埋めたい(=課題を解決したい)と思っている
👉プレゼンを試聴する、本質的な目的
例>
・デザインシステムの設計方法を学ぶには、まずはうまく行っているところから情報収集をしたい。なので興味関心がある
自身の時間を投資してそこそこ長いプレゼンを聴いてくれているというのは、聴くことが目的ではなく、聴いた先に自分の学びにして何かを解決したい・良くしたいと思っている。
それがオーディエンスのゴールではないでしょうか。
プレゼンテーターは、
「自分のどんな話をすれば、オーディエンスの実践知・形式知にできるような情報を持ち帰ってもらえるだろうか?」
というオーディエンスのゴールを想定をしながら、話すテーマを考えると良さそうです。
👀オーディエンスの試聴シナリオを叶える構成
では、オーディエンスの方が実践知・形式知にできるような情報を持ち帰ってもらえるためにはどんなプレゼンテーション構成がいいのでしょうか?
私が先日登壇したイベントでのオーディエンスの試聴シナリオを、このように設定してみます。
シナリオからタスクを書き出してみます。
▼Aさん(オーディエンス)のタスク
では、このシナリオに対して、どのようにプレゼン構成をモデリングするのがいいか?を考察してみます。
オーディエンスは、テーマに興味関心がわく
そもそもカンファレンスなどだと、すでに興味関心がある状態で試聴してくれていることも多いかと思います。
一方で、プレゼンに対して「お、これは聴いてみたい」と冒頭で思ってもらうことでよりしっかり聴いていただけるかなと考えているので、
最初に「〇〇すると△△が得られたので、手法を紹介します」と、
「このプレゼンで得られそうなこと」を一言で紹介します。
また、話の流れを目次にして一覧にまとめておくと、オーディエンスは「あ、こういう流れで話するのね、ok」と視聴しやすい姿勢になるかなと思います。
目次をしっかり作るとちょっとごちゃごちゃしてダサくなるのですが、ちゃんと流れがある方がわかりやすいかなと思っているので、情報過多になりすぎない程度に採用しています。
会社でルーティン的に行われているプレゼン会などだと、興味関心が薄いことも多いと思うのですが、プレゼンの趣旨をしっかり紹介することで、自分に活かせることあるかな?と意識を持ってもらいやすいです。
(ぶっちゃけPREP法です。)
オーディエンスは、内容に共感する
オーディエンスが共感できることで、より「身近だ」「使えそう」とwowを感じてもらいやすいです。
そもそも興味が生まれるのは、現状の問題と理想状態にギャップがあるからと先述しました
であれば、共感を生むのは、オーディエンスの身近にある問題と理想の内容ではないでしょうか。
ノウハウ系のプレゼンをする際は、自分が向き合った事象と課題の紹介をすることが多いのですが、共感を生みやすい伝え方をすることが多いです。
例)問題が起きている事象の紹介
以前デザインレビューの登壇で話していたデザインレビューのNGパターンとしての例は、結構いろんなデザイナーさんが経験したことのあることじゃないかな〜と思い、それらしいコミュニケーションを場面を想像できるくらいの粒度に抽象化して紹介しました。
Twitterの反応では「わかる、良くやってしまう…」「エンジニアでもあるある」などいただいていたので、共感を生む目的は達成できました。
オーディエンスは、信頼できる新しい情報を知る&理解することができる
アカデミックな研究をしていたり専門書を出されているような、その人自身のブランドが情報への信頼リソースになる場合は別ですが、
私はただのサラリーマンデザイナーなので、信頼できるソースやロジックを、どのように再解釈し、課題を解く中でハックして活用しているかという観点を伝えることを心がけています。
例えばこのように、SL Ⅱモデルに当てはめたときに、自組織でどのようにレビュー状況を捉えて目標にしているか、というナレッジの紹介です。
インプット(本・理論) → アウトプット(仕事) → 評価 → 改善
という仕事の中で、インプット-アウトプットの関係の設計についてなるべくロジカルに伝わることを心がけています。
また、プレゼンを試聴して概要を捉えたオーディエンスの方がそれをきっかけに学んで活かせるように参考文献や記事なども紹介することが多いです。
(半分は個人的にも本読むのが好きというのもあります)
オーディエンスは、実践的で活かせそうな情報を自分の仕事に持ち帰られる
何よりも大事な、オーディエンスの目的です。
「話は分かるんだけど、それって実践できるの?」
と感じられてしまっては元も子もないので、できるだけ現場で実施できるhowが想像できるような生の話や、工夫していることをお伝えするようにしています。
このように、実際の実務でのコミュニケーションの様子がわかるよう、観点の実現手段である「問い」の言葉を紹介しています
また、紹介しているテーマに対して良い結果のアウトプットだけでなく、
「今後こういう改善もできそうだ」というアウトカムも紹介することで、理想論ではない現実的な話として理解いただけるかと考えています。
👻まとめ
色々書きましたが、ここまでやってきたことは
・ユーザーのゴール設定(価値の特定)
・ユーザーの行動シナリオ設計
・タスクの特定
・プレゼン設計
と、普段プロダクトデザインの仕事でUX/UIの設計をしている観点でそのままモデリングしてみました。
(最近改めて体系的に学んだのもあって使ってみたかったというのもあります笑)
またカンファレンスや勉強会などはオーディエンスの目的だけでなく、
プレゼンテーター側も個人ブランディングや採用などの目的があると思うので、そこも接合して体験設計できるとよりアウトカムを得られる場になりそうです。
✍️学びとこれから
3年ほど前に立てた個人的な長期のキャリア目標のひとつに、
「3年以内にプレゼン力を高めて、カンファレンスなどで登壇できる(だけの経験や実績を積む)」というものがあり、色々なご縁もあって今年良い形で達成できました。
あらためて自分のアウトプットを振り返りながらモデリングしてみたことで、今後のプレゼンテーションの改善ができそうです。
毎回こんなふうにガッツリ設計できているわけでもないですし、抜けている知識やノウハウもあると思うので「こういう手法や考え方も良いよ!」というものがあれば教えてください!🙏
また、まだまだ場数は踏めていなくので、機会がありましたら勉強会などに呼んでいただけますと嬉しいです。(会社が許す限り)話せることは話します!!
あと純粋に、プレゼン以外の、誰かに宛てた資料作成などでも応用できそうな考え方だなと感じます。
参考文献
ユーザーのゴールやシナリオ設計を改めて学習していて、とてもわかりやすい本です。こんな良著が無料なの、デザイン界の宝ですね。
PREP法はなんだかんだとても活用できるな〜と感じました。
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