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政治家と産業リーダーは国民を豊かにする政策をとること。国民が豊かにならなければ経済は発展しない

「日本経済の失われた40年」
第2章 人間の経済社会の基本構造

2.3 日本産業のリーダーは日本経済を衰退させた

本来なら企業の競争力を高めるためには、1970年代に日本生産性本部が、品質管理運動とともに、企業の生産性を大幅に向上させたように、国民運動としての生産性向上運動をおこさなければならない。しかし1990年以降日本産業はこのような運動を全くやらなくなった。そのために企業は商品の品質に手抜きをし、欠陥製品を出し、それをリコールするという産業として大変無駄なことをしている。かつては日本の製品は付加価値の高い高品質なものであったが、今日では日本の製品は「安かろう悪かろう製品」になってしまった。世界をリードしてきたトヨタグループも欠陥商品、認証不正品を出している。

日本では、商品の流通業分野で革新的な仕組みを作った。
POSを使って無駄な在庫を排除し経営を合理化したセブンイレブンの「コンビニエンスストアー」、日本全国に商品配達網をつくり短時間の配送システムを確立したクロネコヤマトの「宅配システム」、協力部品会社とのスムースな物流システムである「トヨタのカンバンシステム」は、画期的なイノベーションで、日本産業の成長を促進した。しかしこのシステムは、「ムリ・ムダ・ムラ」を排除してコストを下げたが、従業員の仕事を単純作業化させてしまった。未熟練者でもできるということで、賃金を切り下げ、働く意欲をなくしてしまった。単純作業は労働者にとって耐えられない仕事である。労働者は職場を退場する。こうした仕組みは日本全体として労働の生産性を低くし、付加価値を産まないものにした。その結果その業界に働く人が減り、企業は人手不足に悩まされ、賃金の安い外国人を使っている。しかし今日の円安で外国人も日本に働きに来なくなった。

かつてアメリカのフォード自動車が「ムービング・アッセンブリー・システム」を開発し、生産性を大幅に上げた。作業者は単純な2つか3つ動作の作業をやらされたために多くの社員はフォード社を辞めていった。そのためヘンリー・フォードは社員の賃金を一挙に3倍に上げた。フォード社はイノベーションにより生産性の高い生産方式を開発したので、賃金を大幅に上げても利益を上げることができた。しかし人間は、単純労働ではなく、ある程度頭脳を使って、人間として意味のある仕事をすることを求めるものである。

1980年代までは、日本の家庭には一台か二台の「ミシン」があった。輸入のシンガーミシンや国産のジューキミシンが家庭にあり、家族の着る普段着は家庭で作られ、修理もされていた。中小企業の和服・洋服の製造メーカーが多く存在し、街には洋服屋、洋裁店が沢山あった。衣料素材の行商人もいた。衣料は地産地消であった。
ところが日本のアパレルメーカーは、中国の安い労働力を使い衣料を安く作り出した。これにより日本全国にあった洋服屋は姿を消し、家庭からミシンが消えてしまった。そして日本の衣料産業を衰退させた。ユニクロのような一部の大規模アパレルメーカーは売上が増大し、巨大企業になり、利益を上げたが、日本全体の衣料産業の企業数は激減し、日本のGDPも減少した。

本来消費者が買いたくなる商品というものは、その国の伝統、文化、歴史、風習をベースにして開発されたものである。しかし経済がグローバル化したなかで、抽象的な、コスモポリタン的な、無機質な安い商品しかなく、このような商品は世界の消費者は買い求めない。
最近は、日用品は品質を落とした「100円ショップ」で買うことになった。ボールペンのインクの出が悪いものがほとんど。その多くが中国などの労働賃金の安いところで作られ、輸入されている。安かろう悪かろうの中国製自転車が世界で売られている。アメリカでも同じく「One Dollar Shop」の商品は中国や東南アジアで作られているものである。

この40年は、かつての魅力ある日本商品は開発されていない。デジタル商品はアメリカに支配され、その廉価商品は中国製である。
米国Apple社 のSmart Phoneは電話以外のいろいろの機能が詰め込まれている。時計、電卓、万歩計、メモ帳、情報検索、音楽再生、カメラ、地図、GPS、カレンダー、支払いカード、フィットネスソフトなどの機能がSmart Phoneに入れられた。そのためにこれまで時計、万歩計、電卓、カメラ、GPS機器などの商品を生産していた企業は衰退し、消えてしまった。

コストカッター:カルロス・ゴーン

2000年、大きな赤字を抱えて倒産寸前に陥った日産自動車にフランスのルノーからカルロス・ゴーンが乗り込んできた。彼は「コストカッター」という異名を持つ経営管理者であり、1年で日産自動車の窮地を救った。ゴーン氏はコストを削減するためにあらゆる手段を使った。モラルも倫理も、共同体精神も消してしまい、労働組合を解体し、徹底的な人員整理をした。下請け業者を整理し、下請けへの発注価格をカットし、鋼材その他の素材の発注価格を引き下げるなど、日本人ではできなかった情け容赦のないコストカットを断行した。この「ゴーン流コストカット経営」が、日本の他の企業にも広がっていった。しかし、これで日本産業は技術開発力、イノベーション力を失い、日本の労働者は働く意欲を失い、日本産業は衰退した。

2.4 日本の政治家による日本経済の弱体化

中曽根総理
1981年、中曽根内閣はアメリカのロナルド・レーガン大統領にそそのかされて、「自由化」、「新自由主義」と言って、日本経済をグローバル化の道に進ませた。これで日本産業はもっと安い商品、もっと安い労働力を求めて海外に出ていった。企業はコストを下げるためにリストラをし、賃金を引き下げ、安い賃金を求めて工場を海外に移した。労働者の首を切った。そして非正規社員制度を作り、移民を入れて、日本の労働者の賃金を下げた。

橋本総理
1997年、橋本龍太郎首相は「構造改革」を旗印にし、緊縮財政主義に走った。いろいろの構造改革政策を打ち出したが、これは政府の支出を削減することであった。当然橋本首相の政策はことごとく失敗し、日本経済は悪化した。それに加え、橋本首相は消費税の増税を実施したのでGDPを押し下げた。橋本氏は日本経済を破壊したのである。
しかし橋本首相は自分の政策失敗を反省し、「構造改革政策」を廃止したが、手遅れであった。次の小渕内閣は、財政投資を始めたが、すぐ病で亡くなった。そのあとの内閣は、Deep Stateにコントロールされている財務省に支配されて、赤字国債による財政投資をしなくなった。日本の公共インフラも劣化し、公務員も削減された。

小泉総理
2001年、小泉政権はクローバル化をさらに推し進め、郵政民営化を断行し、日本の郵便貯金をアメリカ金融資本家の前に差し出した。現在「郵政民営化は間違っていた。公共事業に戻さなければならない」という声がでている。
竹中平蔵氏は小泉政権下で、「人材派遣制度」「非正規社員制度」を作り、日本の労働賃金を引き下げ、日本の労働者を分断させた。これで日本を完全にデフレの淵に落とし込んだ。
そしてバブルを崩壊させて、銀行は貸した金を返済させ、貸し剥がしをし、不良債権の処理ということで日本の多くの銀行を倒産させた。そして消費税を増税した。

安倍総理
次の安倍政権も消費税を増税し、公共投資を止めた。このため日本の実質賃金は25か月連続実質賃金が下がっている。これから日本はデフレになり、これから失われた30年が始まった。デフレになり企業は設備投資ができなくなった。政府は公共投資をやめ、政府支出を削減した。実は財政投資を抑えたのはDeep Stateにコントロールされている日本の財務省である。

「政府支出」とその「国のGDP」とは強い相関関係にある。これは事実である。つまり政府支出を削減すると日本のGDPは減少した。「政府支出」を増大すると「GDP」は伸びる。これは実績あり、理論ではない。

つまり日本の自民党の政治家が人為的に日本をデフレにし、日本の経済成長を止め、国民を貧しくしたのである。日本の政治家は国賊ものである。政治家は国のため、国民のために仕事をするのであるが、国民の税金から給料をもらいながら、日本経済を破壊し、国力を落とし、国民を貧困化させているのである。岸田首相はアメリカの国益のために動いている。これは犯罪である。

アベノミクスの失敗

安倍首相は、「デフレを脱却し、日本経済を成長させる」と言ってドライブした「アベノミクス」(3本の矢)を掲げた。「異次元の金融緩和」「積極的な財政投資」「成長戦略」である。しかし実際に実行したのは「第一の矢」の「異次元の金融緩和」だけであった。
いくら金融緩和をしても、デフレのために、金を借りて投資をしたい企業はいなかった。日本銀行は膨大なお金を印刷しただけであった。金が動いたのは森友学園詐欺、加計学院詐欺、桜を見る会だけであった。そして安倍内閣は年金基金を使い株式に投資し、日本の株価を吊り上げ、そして円安にした。

安倍首相は、「第二の矢」の「財政投資」をギブアップした。安倍首相は、「本当は財政出動をしたかったが、Deep Stateにコントロールされている日本の『財務省』に押し切られた」と回想録に書いているが、それは言い訳にはならない。
日本国には「通貨発行権」がある。国債による財政出動は政府の「負債」になるが、これはそのまま国民または企業の「資産」になる。国民はこの金を住宅建設に使うか、子供・若者の教育費に充てることができる。政府は国債を発行して、国のインフラ整備、国道の建設に使うことができる。企業はこの金を設備投資、生産性向上投資、新製品開発投資に充てることができる。重要なプロジェクトであれば、「50年債」、「永久国債」を発行しても良い。
国の国債発行、銀行の金の貸し出しは「信用創造」である。そして日本の通貨である限り、いくら通貨を発行し、国債をいくら発行しても、国の財政破綻は起こらない。ただハイパー・インフレにならないように注意し、国のインフレが大きくなり、ハイパー・インフレになりそうなったら、国債発行の量を縮小し、金融の引き締めをすればよい。

過去の世界各国の実績としてみると、財政投資の伸びと実質GDPの伸びは「正の相関関係」にある。イノベーションを別にすれば、財政投資を多くした国のGDPは成長している。財政投資をしない国は経済成長していない。そして財政投資のプロジェクトが乗数効果の高いものであればより大きくGDPは伸びる。

日本では終戦直後ハイパー・インフレが起こったが、これには別の理由があった。つまり戦争に破れ国内の生産工場がアメリカの空爆で破壊され、日本には生産能力がなかった。そして多くの日本人が海外から引き上げてきて、生活物資の需要が一機に高まったが、生活物資を生産する能力が十分なかったために、ハイパー・インフレが起こったのである。需要と供給のアンバランスの問題である。通貨の量や国債発行の量の問題ではない。 
戦後日本政府は重要な産業に資金を集中的に投入して生活必需品を生産し、ハイパー・インフレを終息させた。政府は「傾斜生産政策」で鉄鋼産業、石炭産業、造船産業、機械産業などに投資し、日本産業の復興を推し進め、池田勇人内閣は「国民所得倍増計画」で、日本経済の奇跡的な発展をもたらせた。

しかし安倍政権と岸田政権は"Buy My Abenomix"、"Please Invest in Kishida" と言っては外国資本家に日本の株式へ投資してくれと頼み込んだ。そのために外国投資家が投資しやすいように規制を撤廃した。これにより日本の株価は上がった。しかしこれは日本にとってポジティブな効果にはならなかった。アメリカの投資家は日本の株式に投資し、高い配当を要求した。企業は内部留保を配当に回した。つまり日本のカネがアメリカに流れていったのである。

日本政府の投資計画は誤ったところに金をつぎ込んでいる。中国製の太陽光発電機器(公害になる、山のがけ崩れ、有毒金属レアアースの流出)、風力発電機器(低周波騒音、風がないとき効率が悪い)に金をつぎ込み、政府は海外と国内の製薬企業から適切でないワクチンを大量に買い上げ、しかも使われなかったものを破棄している。つまり国民の税金を溝に捨てたのである。日本政府は、自民党の政治家への票になるところに国の金を投資しているのである。

岸田首相の政策と失敗

岸田文雄は、新自由主義から脱却して「新しい資本主義を作る」と宣言して首相の座についた。岸田氏は首相の座につくや「国民の所得を倍増する」と宣言した。しかし「新しい資本主義とはどういうものか」と記者から聞かれても答えられなかった。「では国民の所得をどのような政策で倍増するのですか」と記者に聞かれても、岸田首相は返答しなかった。

そこで岸田首相は「国民所得倍増」の公約を破棄し、「国民の資産を倍増させる」と言った。これは国民が持っている金を株式に投資して資産を増やせというものである。つまり「新NISA制度」を作り、国民は自己責任で自分の金で株式に投資せよということである。実はこの考えはアメリカのDeep Stateの手先であるウオール街の「ブラックロック」のCEOの入れ知恵であった。岸田首相はブラックロックに日本の国民の貯金(1200兆円)を運用させるのである。しかしそのためにブラックロックは高い運用手数料を取る。しかし運用したものが元本割れになっても知りませんという契約である。つまり岸田文雄は日本の資産を安く外国に売り飛ばすのである。

岸田首相の移民法改定

これまでは東南アジアから多くの出稼ぎが日本に来ていたが、今では円安で日本では稼げなくなり、出稼ぎのためには日本に来なくなった。そのため政府は金や太鼓で移民を呼ぼうとしている。

日本で少子高齢化が起こり、人口が減少している。アメリカのジャパン・ハンドラーや米駐日大使エマニエルが日本は移民を入れなければ日本経済が崩壊すると言っている。このアメリカの進言を受けて、今度岸田内閣は、移民法を改正して、80万人以上の移民を入れる法整備(移民人材育成就労法)をした。岸田内閣はこれまでの移民の枠組みを変え、移民に永住権を与え、日本政府が特定技能を移民に教育し、そして移民者の家族を呼び寄せ、その家族にも永住権を与えて日本に永住させるのである。

日本は1985年からグローバル化に走り、コストを下げるために海外の安い労働力を求めて、工場を海外に移した。そのために日本の内需が激減し、労働者は失業し、日本経済は衰退した。これは日本がグローバル化に走ったために、企業は生産性向上のための投資をしてこなかったからである。日本産業を維持するためには生産活動を担う人が足りないので外国から移民を入れなければならないと岸田首相は言う。
資本主義経済社会は「イノベーション」と「生産性向上」によって生き残り、発展するものである。今まで100人で100生産していたものを、生産性向上投資により、50人で120生産する能力が生まれる。こうなると日本経済は発展し、国民は豊かになり、外国から移民を入れる必要はなくなる。
日本はかつて1960年から1980年にかけ、「日本生産性本部」を設立して、全国的な国民運動・生産性向上運動を起こした。「日科技連」をつくり品質管理手法を広め、日本産業の生産性向上を更に促進した。これにより日本経済は飛躍的に伸びた。当然ながら人手不足は起こらず、移民を入れることはしなかった。

しかし1985年頃から日本はグローバル化に走り、日本産業はイノベーション投資や生産性向上投資をしなくなり、労働者の賃金を下げてコストを下げた。日本産業は海外の安い労働力を求めて工場を海外に移した。適正な賃金を払ってくれる職場が少なくなったので、日本の能力ある人は出稼ぎのために海外に移住した。それで日本は人手不足になった。つまり介護の仕事や建設の職場も賃金を適切に払うのであれば働く人は日本に沢山いる。移民をいれる必要はない。そして生産性を向上させると、移民は必要ない。

1970年以降、アメリカが起こした中東、アフリカでいろいろの戦争があり、そのために戦火を逃れようと多くの人が難民、移民としてヨーロッパ諸国に逃げ込み、人道的見地からEU委員会とドイツのメルケルが大量の移民を受け入れた。こうした移民はイタリア、イギリス、フランスなどのヨーロッパに大量に入ってきた。そのためにヨーロッパ諸国は社会の治安を悪化させた。窃盗、強盗、暴動、麻薬、レイプ、殺人が増大している。そして移民はその国の文化、伝統、風土を壊し、社会を荒廃させる。移民により全体の賃金が下がり、経済を衰退させた。そのためにイギリスはEUから離脱した。

難民・移民が少数の時は、移民は国の文化、風習、社会組織に適合し、帰化する。しかし移民の数が相対的に大きくなると移民はその国に帰化することなく、移民村を作る。しかし移民のマスがある限界を超えると移民は祖国の文化、風習をそのまま持ち込み、移民先の社会を破壊してしまう。今でもすでに日本では、移民のクルド人、中国人、ベトナム人がクルド村やベトナム村を作り、レイプ事件、窃盗事件を起こし、地域の文化を壊している。

アメリカは、もともとアングロサクソンが作った人口国家であり、観念でアメリカ国家を作り、人種の坩堝の社会であった。黒人は奴隷か家僕であった。移民は入っていたが、殆どがヨーロッパからの白人がアメリカに入っていた。そして少しずつアフリカの黒人が入っていた。
しかしアメリカは1960年に移民政策を変えた。これ以降60年間でアメリカの人口構成が変わった。もはやアメリカは、ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント(WASP)を中心とする国家ではなくなった。多くの移民が入り、アメリカ本来の文化、イデオロギーがなくなった。自由、平等、正義の国ではなくなった。アメリカの文化も壊されてしまった。バイデンはメキシコとの国境をオープンにして多くの不法移民を招き入れている。それは不法移民に選挙権を与え、彼らに民主党に投票させるためである。そのためアメリカ社会は分断し、多くの州は連邦政府と対立する。民主党と共和党の対立、移民と共に入ってきたテロ組織が麻薬を持ち込み、テロや暴動が毎日起こっている。アメリカ社会は崩壊しつつある。アメリカの世界の警察力もなくなった。アメリカは言論の自由もなくなった。

実はこれがDeep Stateの狙っていたことである。Deep Stateはこのアメリカを大混乱させ、国民をバラバラにして、アメリカを支配することである。
トランプは2016年に大統領になってすぐ、メキシコとの国境線に不法移民を入れないための壁を建設した。しかし2020バイデンが大統領になりメキシコの壁を壊し、移民、不法移民をどんどん招き入れている。

2024年の欧州議会の選挙の争点は移民問題で、移民に反対する極右といわれる保守グループがマジョリティを取った。これからヨーロッパ諸国も移民を大幅に制限することになる。
岸田首相は、これから日本に更に多くの移民を入れて、日本社会を破壊しようとしているのである。

岸田政権の2025年度「骨太の方針」

①   岸田首相の方針:脱デフレを実現、物価上昇を上回る賃金上昇を実現
②   日本銀行植田総裁は円高にするたに金利を上げると宣言した。
③   台湾TSMC(第一工場、第二工場)とラピダス社および米マイクロン・テクノロジー社に公的資金5兆円の資金を出す。
④   財務省は2025年に財政のプライマリー・バランスを黒字化すると宣言した。

これが岸田内閣の2025年度の予算の骨太の方針である。

①   については、岸田首相の「脱デフレ」はまだデフレが進んでいることを意味しているが、デフレから脱却するには「内需の拡大」をしなければならない。需給ギャップがまだ大きい。内需を拡大するためには財政出動をしなければならない。そうしなければ岸田首相の言う「物価上昇を上回る賃金上昇」は実現できない。しかし岸田政権は2025年にはプライマリー・バランスの黒字化を計画しているので、財政出動はしない。

②   については、円安を円高に転換するために金利を上げると植田日銀総裁は言うが、現在の状況で金利を少し上げても円高にはならなし、銀行融資を受けている中小企業、住宅ローンを抱える日本の国民は金利が上がると大変になり、日本の景気に冷水をかけることになる。アメリカの金利が5%前後であるので、日米の金利差が大きいから、日本の金は依然としてアメリカ(ドル)に流れる。政府は金融緩和でアメリカの国債を買った。その結果日本の海外資産は1500兆円にふくれあがった。

2005年にアメリカのブッシュ大統領が「リパトリエーション・減税政策」をやり、アメリカ・ドルを強くし、その結果国内の投資が増え、GDPは伸びた。「リパトリエーション・減税政策」とは海外にある金融資産を本国に還流させる政策で、還流したものに対してある率の減税をすることである。
そうすると還流した資金は国内の投資にまわり、通貨は強くなる。基本的には為替のレベルはその国の国力・経済力を反映するもので、円高にしたいのならその国の国力を増強し、経済を発展させなければならない。しかし増税メガネの岸田氏はリパトリエーションという減税はやらないだろう。

③   については、政府は経済の安全保障を強化するために日本の半導体産業を再興しなければならないと考え、台湾のTSMCを熊本に誘致し、そのためにTSMC社に1兆2000億円の補助金を出すことにした。TSMCの熊本工場のインフラ整備のための費用を日本政府が支払う。そして日本政府は米半導体メモリー大手マイクロン・テクノロジーの広島工場(広島県東広島市)の設備投資や研究開発に最大1920億円を補助することを正式に発表した。IBMの技術を使い先端半導体(1.5ナノ)を製造する計画を持つ日本のラピダス社に9200億円の国費を投入することを日本政府は決定した。ラピダスの北海道工場のインフラ整備のための資金を政府が出す。さらにラピダス社向けの民間融資に政府保証を付ける法規制を作った。

ラピダスは2027年に工場を完成すると言っているが、1.5ナノの半導体を必要とする日本の顧客は存在しない。1.5ナノの半導体が欲しいのはアメリカのAppleかNvidiaしかいない。彼らがラピダスの製造工場に依頼することはまずないであろう。TSMCの熊本工場では28ナノまでの半導体を製造することになっている。それ以上の先端ノード半導体を製造する設備にはなっていない。しかし28ナノ以下の半導体でも、TSMCは日本の顧客が必要とする半導体を製造するという確約はしていない。TSMCがすでに抱えている顧客の注文のために熊本の28ナノプロセスを使う。TSMCの熊本工場で生産することによって得られる利益はすべて台湾企業TSMCに属する。TSMCが日本政府に配当金をだすという確約はない。米国マイクロン・テクノロジーへの補助金に対しても日本政府には何のリターンもない。これらの外国企業への補助金は国民の税金から出されているものである。本当なら日本のルネサステクノロジー社やソニー社などの製造工場の拡大及び技術開発に政府は補助金を出すべきであった。

④   については、財務省はアメリカに強要され、日本の財政のプライマリー・バランスの黒字化を求められている。しかし日本は、資本主義経済社会の原則である「信用創造」力を持っている。つまり日本政府は、赤字国債を発行する力を持っている。自国通貨建ての国債を発行して、その国債の期限が来れば、新しい国債を発行して差し替えればよい。ハイパー・インフレにならないようにコントロールすれば、長期国債、永久国債でもよい。政府の「負債」(国債発行)は、民間の「資産」である。つまり財政のプライマリー・バランスを黒字にする必要はなく、赤字であっても日本の財政は破綻しない。

戦後直ちにGHQは日本の「財政法第4条」を作った。その第4条は、赤字国債の発行を禁じ、財政の黒字化を強要するものであった。財政法第4条の目的は、日本の経済を弱体化し、日本を軍事力を持たない弱小国にすることであった。このアメリカの日本をコントロールする政策は成功している。即ち、日本経済は今日のように衰退してしまったからだ。

つまり岸田内閣の2025年度「骨太方針」は、日本経済を良くするのではなく、脱デフレどころではなく、さらに日本経済を悪くするものである。
岸田首相はバイデン大統領の命令に従い、ウクライナ復興支援のために「ウクライナ経済復興推進準備会議]を東京で開催した。今後10年間で58兆円の支援をすることに決めた。岸田首相はNATOにも足を踏み込んだので、これからウクライナ戦争が核戦争になりそうになったが、日本はNATOにも金を出すことになる。

しかし2024年1月に起こった能登の大地震の復興には岸田内閣は極めて冷淡である。未だに能登は地震による瓦礫の山が多く残っている。増税メガネの岸田首相は「ウクライナ支援増税」をやるのであろう。日本国民はますます貧困化する。

2.5 日本が進む道

人間は先人の残した知恵という歴史に学ばなければならない。歴史は、経済のグローバル化の道に進むとその国の経済は崩壊し、その国の文化、倫理、道徳も壊され、国民は貧困化し、不幸になることを教えている。

今やアメリカ一極支配構造が終わったので、これから我々は世界の多くの国々と付き合う必要が出てくる。

そしてG7諸国(アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本)と中国は、この20年のグローバル化と戦争で経済を大混乱させ、経済が疲弊している。

従って、これからはどこの国も、当分「自国第一主義」で、自国の経済復興に動くことになる。ドナルド・トランプも「アメリカ第一主義」で動き、戦争はしないと約束している。

世界の国々は、独立国として、それぞれ違った歴史と文化と伝統を持ち、違った考えを持つ。その違いをお互いに理解し、他国には寛容でなければならない。つまり問題を戦争で解決すると考えてはならないし、他国への介入主義を捨てなければならない。戦争は次の戦争を呼び、いろいろのテロ集団の永遠の活動を生む。

日本は、経済を復興して、アメリカとの対等な同盟国としてのポジションを確かなものにする。そして日本は、まず近隣のASEAN諸国に近づくこと。国際分業による交易をASEAN諸国とやる。

日本はNATOに関与してはならない。国際連合は、第二次大戦の戦勝国のメンバーが設立したもので、戦勝国の利害で行動する。国際連合とは距離を置く必要があり、WHOと決別しなければならない。

その国が、資本主義経済社会であれば、その国の歴史、文化、伝統をもとにした産業・商品を開発し、その国民を豊かにする政策をとることである。国民が豊かにならなければその国の経済は発展しない。世界スペースでは、デヴイド・リカードが提唱した「比較優位生産」に基づく国際分業および外国貿易を進めることになる。しかし決して国境を取り去り、「ヒト・モノ・カネ」を動かし、グローバル化に走ってはならない。

政治家はこの考えに基づき行動をし、国益のために働き、国民の豊かさを追求しなければならない。政治家は自分の利益のために活動してはならない。

岸田首相は、日本の国益に反することをやり、この「日本の進むべき道」とは反対の道を進んでいるので、ここで岸田氏は首相の座を降りてもらうことになる。これは今日の日本国民の強い意思である。

世界とはこうしたものだ。何者でもなく、何者にもなろうとしない人間には、そこに居場所はない」。これは、ヨーロッパ諸国が経済衰退する中で、ヨーロッパ国民が何もしないことに対して、イギリスの作家であるV・S・ナイポールがかつて発した警告である。これは今の我々日本人への警告でもある。

「日本経済の失われた40年」完
2024年6月20日
三輪晴治