欠けている月が一番あたしらしいかもしれない

ふと思った。

満月は人の心を狂わすとも言われる。が。

満月ほど人の心を狂わす要素も持ってないし。そもそもみんなに「今夜の月は綺麗だな。」って見上げて貰い、注目を浴びるほどの容姿でもない。

どっか欠けてる。

いや、どっかどころじゃなく欠けてる。

貴方の歩く夜道を照らすぐらい輝いてもないし、貴方の心を照らすぐらい輝いてもいない。

それでも貴方にはつまづかないで歩いて欲しい。

だって貴方の手はあったかい。

貴方のあたしに向ける微笑みはとてもとても

…優しくてあったかい。

夜の危ない道を楽しい散歩道へと変えてくれる。

「あぁ…今夜は月も綺麗だね。星もよく見えるね。寒い日はやっぱり空気が清んでるのかな？」

小さな小さな幸せをいっぱいあたしに降り注いでくれる。

欠けたあたしに。

欠けてるのに欲望だけはたっぷりお腹の中に飼ってるあたしに。

「…なに？そのお腹の音？なんか喋ったよね、今。」

「さっきおやつ食べたから消化中だもんっ😳」

こうやって笑える。

そもそも。欠けてない人間なんていない。

みんなどっかおかしいはず。

それなのにみんな「あたしは常識人です、貴方とは違います」みたいな顔して生きてる。

なーによ、ほんとはあたしより欠けてるくせに。欲深い、あたしより腹黒いくせに。

欠けたグラスはいくらお気に入りでも捨てなきゃね。だって貴方の唇を傷つけるかもしれないから。貴方の大事な人も間違って傷付けるかもしれないから。

それでも、どうしても捨てられないような儚いグラスになりたい。儚い女になりたい。

欠けた事で他人の傷を見た…？

月夜の晩に欠けたあたしと欠けた貴方が

星空見ながら手を繋ぐ。

それって素敵な事でしょう？

なにもないから。そこになにもないから

その先が見えることだってあるでしょう？

ああ、やっぱり「欠けてる」って素晴らしい！！

そしてそう思わせてくれる貴方にも感謝。

また月を見上げたら思い出してね

あたしの事を。

ここまでお付き合いいただき、誠にありがとうございました。