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ピーちゃん

中学生その頃。これはあたしのあだ名だった。

今、中学生の時の友達に会って、「なんでピーちゃんって言うんだっけ?」って聞いても色んな説がありすぎてどれがほんとだかわからない。

よく、放送禁止用語を言うとか(もうエロ発揮)ピッグのピーだとかなんとか(ちょっと待てこの時あたしはまだガリガリ期だ)言われていたが、あたしの記憶が正しければ。

いつも一緒に学校に行く、可愛いお嬢様のような口調の子がいた。その子はあたしの事を「ペット」だといい、「ピエール」となずけた。

朝、迎えに行くと「ピエール、今日もいい天気ね、おはよう」と迎えてくれる。(ホントだよ)

なんかどっかで聞いたことあるなーと思った方は黙って今後の展開をお楽しみください。

その子はホントに可愛くて、男子からもモテていて、しかも強い(合気道習ってた)から一目置かれる存在だった。そんな子のペットになれるなら。こんな本望な事はない。

それなのに、こんなデカイ、弱い、可愛くないあたしを側に置いてくれて。気に入ってくれて。

荷物持ちでもなんでもしますよ!と思ったが、その子は普通に重い鞄を自分で背負う。たまーに、「ここに付き合って。あっちに付き合って。」と振り回されるぐらいで後は「ピエール!!」と大きい声で呼ばれるからみんなから不審がられるぐらいで。

それでもそれは長く続かなかった。

うちの中学校は結構人数が多く、9クラスあるのに、毎年シャッフル(組変え)が起きる。なので、もう何年の時になん組で誰と一緒だったかもわからなくなる。「中学校一緒だったよねー」とかなんとか言われても、ほぼほぼ思い出せない。

そんな混沌に紛れて彼女のクラスとも遠く離れてしまい、一緒に学校に行くこともなくなった。

そうしてしばらく姿を見かけないまま卒業。

数年後に行われた同級会で「そういえばあの子、どこの高校行ったんだっけ?」という話になった。

そしたら「あれ?知らなかったの?あの子の親がやってたお店がつぶれてあの子もどっかに行ったよ。ここら辺にはいないはず」

…愕然とした。そういえばお店はシャッターを閉めていた。いつもあたしはそのシャッターをガラガラと開けて迎えに行ってたのだ。

それでもペットと主人という立場は自然消滅していたし、他の事や他の友人と遊ぶのに夢中になっていたので気にも止めていなかった。

あの、可愛くて、モテて、強いお嬢様のような口調のあの子が、親の事業の都合でどこかに行ってしまっていた。

どれだけ切ない思いをしただろう。

あたしはあの子が好きだったから。ずっと「ピーちゃん」でもよかったのに。

それならもっと気持ちにだけは寄り添えたかもしれないのに。でも、彼女の事だからそんな弱い自分をみせるのも嫌だったかもしれない。だからそれはそれでもよかったんだ。

いまだにあたしの事を「ピーちゃん」と呼んでくれる仲間と。大人になったからと言うことでだろう。名前で呼ぶ仲間がいる。

あたしはいつまでも「ピーちゃん」でいいのに。

ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。

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