逃避行　#1

ゾンビ人間の世界で言うところの旅行ってさ
ぼくにとっての現実逃避そのもので
飛行機に乗るときには他の国へ亡命してやるんだってくらいの気持ちなわけだよね

搭乗時刻を10分も過ぎてるのに
格安航空会社のおねえさんは優しくて
この恩は忘れないよって思うんだけど
10分後には気圧の変化でそれどころじゃなくなっちまうし、ぼくはなぜこんなに弱いんだろうか
『ぼくの注文したプレミアム幕の内弁当って忘れられてる？』
函館に着くまでそんな顔してたんだろうな

■大森浜のカモメ
啄木が戯れてるカニってやつを見たくって
観光スポットには程遠い浜辺を歩いていたんだ
そしたらカモメがすごくって
とにかくたくさんいたんだ
きっと啄木の時もいたんじゃないかな
でもそんなのはおかまいなしに
横歩きしかできないカニに泣いたんだろうな
ぼくは浜のどこかでカニがカモメに
食べられやしないか心配になってしまった
ぼくもツラいけど
食べられるのはもっとつらそうだ
感が極まりかけた所で
ぼくの脳内MDが勝手に再生されて
PUFFYの渚にまつわるエトセトラが流れた
♪カニ食べ行こう〜
等身大の女性2人組PUFFY
多くの女性がうらやまず、見下さず、そこまで鼓舞されないPUFFY
歌がうまいやつは絶対に歌わないPUFFY
そのせいで感極まることが出来ず
ぼくはPUFFYのことをちょっとだけ恨んだ
せっかくの逃避行だってのにさ
恨んだ割合はユミ6のアミ4だ
そこは平等って訳にはいかないよ
申し訳ないけどね