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逃避行 #2

■函館の街
とにかくひとりぼっちには
歩きやすい街なんだよ
東京の次くらいにイイね
人が少ない分
こっちの方が良いって人もいるんじゃないかな
道路が新しくて綺麗で冷たくって
好きだね
観光客用のホテルがたくさんあるのと
観光客用の山と海とのバランスが最高じゃないか
これはダイヤブロックの函館があったら
買っちゃうな
お土産屋で売ってないかな
そんなことを思いながら
観光客用の山を眺めてみると
雲を突き抜けて
フェルト生地の"ヤツ"が降りてきた
シルバニアファミリーのウサギだ
山の頂上に乗っかるシルバニアファミリーは
この世の終わりを知らせにきたように
無表情だった
ぼくはダイヤブロックのことを考えて
いたのにおもしろいなって思ったよ
要はあれだろ?
『プラスチック素材にフェルト生地合わせたら
面白くありません?』
って言うオシャレアパレル店員の
無責任な提案みたいなもんだろって、
思った訳だよ

■修道院
虫の知らせみたいに
自転車に乗りたくなったんだ
だからレンタルした
30分くらい知らない街を走っていると
『ぼくは知らない街を自転車で走るのが好きだな』ってさ
知らないってイイよね、うん、良いですよね
って、敬語になるくらいには好きだよ
でも30分も経つと少し知っちゃうよね
だから坂を登りたくなったんだ
ぼくは坂を座り漕ぎで、
しかも疲れてませんよって、
平気なフリして登るのが好きなんだよね
それはむかしからなんだけど
坂を探したら近くに修道院があって
ここは坂の上にあるって言うんだ
レンタル自転車は電動アシスト付きだし
これは平気なフリを楽しめるぞと
ワクワクしながら坂を登ったんだ
すると平気なフリってか
本当に平気だったんだ
そう、まさに平気とはこのことだよ
ぼくは平気な感覚を掴んだ訳だよね。
これは最高のお土産だと思わないかい?
修道院には行かなかったよ
目的は坂だからね







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