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都七福神5

 都七福神の4件目は福禄寿フクロクジュをお訪ねします。

 福禄寿がいらっしゃるのは東山三十六峰の北から数えて三番目の赤山せきざんの麓にある赤山禅院せきざんぜんいんです。
 実際に伺ったのは昨年の12月でしたが「もみじ寺」とも呼ばれるほどに秋の紅葉でも有名な寺院です。

 赤山禅院は天台宗寺院で比叡山延暦寺の別院の一つであり、五十日ごとおび発祥の寺院です。
 五十日とは、「ごとおび」または「ごとび」と読み「ごとうび」は誤りとされています。
 何故でしょうねぇ。

 具体的には毎月の5日、10日、15日、20日、25日、30日 (または月末) を言います。
 元々は申の日の五日に赤山禅院に詣でると吉運に恵まれると評判になったことにあります。
 それが発展して江戸時代には『赤山さんは掛け寄せ (集金) の神さんや』と言われるようになります。
 五日講ご縁日に商売繁盛を願う参拝が多かったのですが、ご縁日詣でが進化して五十払ごとばらいの商習慣ができたと伝えられています。
 現在も、赤山禅院では毎月5日に延暦寺の大阿闍梨による祈祷が行われ、商売繁盛を願う方が大勢参拝にこられるようです。


 赤山禅院は、仏教寺院に道教の神を祀っているにもかかわらず、明治の神仏分離・廃仏毀釈の後も神仏習合の形を残したまま現在に至っている珍しい寺院なんです。
 また御所から見て表鬼門に当たるため王城鎮護・方除けの神でもあります。
 そのほかに、御所の東北角・猿ヶ辻の猿と対応するように、拝殿の屋根に御幣と鈴を持った神猿まさるが置かれています。

いたずら猿

 しかしこの猿は夜な夜な抜け出して悪さを繰り返したために金網の中に入れられてしまい抜け出さなくなったとか。
 正確にいうと抜け出せなくなったが正しいと思うのですが。


 さて御本尊は中国大陸の五霊山のひとつ東岳泰山とうがくたいざんの山神・道教の神・陰陽道の祖・泰山府君タイザンフクン (またの名を赤山大明神セキザンダイミョウジンまたの名を福禄寿フクロクジュ) を勧請し、天台宗の鎮守神として祀ったのがこの寺院の始まりです。
 因みに赤山大明神=泰山府君 =福禄寿の組み合わせは私の調べた限りではこの寺院特有のラインナップのようです。
 なので、福禄寿のいるところいつでも泰山府君や赤山大明神がおられるとは限りませんのであしからず。


 泰山府君は人の寿命を司る神です。
 陰陽道おんみょうどうでは最重要神であり日本では地蔵菩薩の化身とされました。
 赤山大明神は天にあっては福禄寿、地にあっては泰山府君とされ森羅万象、万物の命運を司る神です。
 御利益は、商売繁盛・健康長寿・除災があります。


 赤山大明神=泰山府君 =福禄寿であるように、福禄寿も『福星・禄星・寿星』の三つの星を神格化し一体の神となっています。
 福禄寿は元々中国は道教の神です。
 そして中国では人生の三大目標として『福・禄・寿』が掲げられます。
 ですから道教では福禄寿の中に幸福・封禄・長寿の三つの御利益が入っていることになるのです。


 本殿には泰山府君 (地蔵菩薩) が祀られています。

赤山大明神=泰山府君 =福禄寿=地蔵菩薩で菩薩様は次の写真を
貫禄十分な地蔵菩薩様


 赤山大明神=泰山府君 =福禄寿であるはず・・・ なのに福禄寿堂は別にあります。

立派なお堂です


 福禄寿の言によると同じ中国出身で長寿という御利益もかぶっている寿老人じゅろうじんと間違われることもしばしばだそうです。
 一部では同一神だとも言われています。

 そうすると六福神になってしまうのですが、見た目こそ似ていますが実は持ち物などで区別できたりしますから、まったく別の神だということをこれを機会に覚えてほしいということです。


 それでは福禄寿の特徴を述べましょう。
 一番の特徴は背丈が低く異様に長い頭と長くて白い顎髭を蓄え大きな耳たぶがあります。
 でもここまでは寿老人とさほど変わりがないから、これだけで見分けるのは難しいかもしれません。

 それでは決定的な見た目の違いをお知らせしましょう。
 まず左手に宝珠、右手に巻物を括り付けた杖を持っています。

 でも作品によってはこれだけでも見分けられないかもしれません。
 さらなる決定打は鶴を連れていることです。
 でも作品によっては鶴がいない場合もあります。

 ではどうすればいいのか?
 簡単です。


 七福神の神々が並んでいたとすれば、頭が長いと思われるお二人に聞いてみればいいんです。

「あなたが福禄寿ですか」と。

 きっと優しく真面目な神だから素直にお答えしてくださるでしょう。


 因みに御利益の幸福・封禄・長寿はそれぞれ、

   ●幸福……子宝に恵まれること
   ●封禄……財産が得られること
   ●長寿……健康に長生きできること  となっています。


 拝殿と本殿、地蔵堂しかなかった境内に弁天堂を建立され、出世弁財天として多くの参詣者がお参りされています。

オンソラソバ ティエイソワカ


 境内には他にも雲母不動堂があります。
 元々は比叡山延暦寺と赤山禅院を結ぶ雲母坂きららざかにあった雲母寺うんもじの本堂と本尊・不動明王が移されたものです。
 雲母寺は、平安時代に千日回峰行の創始者・相応和尚そうおうかしょうが開いた寺院でしたが明治に入って廃寺となりました。
 不動明王像は、伝教大師 (最澄) の作と伝えられています。

雲母(きらら)坂から移設された雲母(うんも)不動堂
凛々しいお姿のお不動さんです


 こちらは縁結びの神様がいらっしゃる相生宮。
 調べてみましたが、どの神様なのかは分かりませんでした。
 縁結びのための珍しい絵馬があることでも有名です。
 お社の手前にある夫婦鳥居を潜ると効果があると言われています。

案内看板が少し曲がっていますが決して効果がないわけではありません


 こちらは金神宮。
 名前からしてお金に関する神社かと思われがちですが、鬼門方除の神様である「金神こんじん」様が祀られており北斗七星信仰や聖天信仰などと関係しているそうです。
 うしとら金神様こんじんさまと聞けばご理解いただける方も多いのではないでしょうか。
 私でも何かを感じるくらいですから、ここはかなりのパワースポットだと思います。

祟りをも生むとされる金神様 丁寧にお詣りを


 おみくじは福禄寿の形をしています。
 すべて手作りでお顔が違いますので、これだと思うお顔を選んでくださいということでした。

見ているだけでも楽しくなります


 ついでといっては何ですが福禄寿繋がりです。
 福禄寿という名の秋田産の日本酒もあります。
 その名も福禄寿酒造さん。
 大吟醸と本醸造があるそうですので日本酒通の方はお好みでどうぞ。

福禄寿繋がりでご紹介


 赤山禅院には気学発祥の地というモニュメントもあります。

日本気学発祥地のモニュメント

 気学は九星気学と似て非なるものとか。
 どちらも吉凶を占うものだそうですが、

*九星気学とは生れた年月日の九星と干支、五行を組合わせた占術。方位の
 吉凶を知るために使われることが多い。
*気学とは園田真次郎が九星術をベースに1924年に創始した日本生まれの占
 術。3×3の魔方陣である洛書から生まれた紫白九星を使って様々な事柄
 を占い、また移動の方位の吉凶を論じる。

Wikipediaより

 だそうですが、この説明で分かる人はスゴい。
 興味のある方は調べてみてください。

中国風 (?) の狛犬さん

 今回は盛りだくさんでした。
 七福神は残り三つ。
 お楽しみに。


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