もしも僕が鳥だったら彼女を助けられたかもしれないなんて言えるわけないじゃないか【青ブラ文学部】
白い壁、白い天井、部屋の割に大きな窓。
僕は今病室にいる。とうとう身体の自由が利かなくなった。
最初に考えたのは社会復帰ができるのかということ。
連日の検査と点滴三昧の毎日にいささかうんざりしている。
それでも検査結果を待っているのに医者は何も伝えてくれない。
まぁ僕には言っても無駄だと思ってるんだろうな。
唯一の救いは連日長い面会時間を僕に寄り添ってくれる彼女の存在だ。
見えてませんよと看護師に言われてもいつも笑顔を僕に向けてくれる。
聞こえてませんよと医者に言われても懸命に話し掛けてくれる。
何一つ答えられない僕なのに精一杯の愛情をたっぷり注いでくれる。
でも、ふとした時に感じるんだ。
淋しさや悲しさを一瞬だけ漂わせていることを。
そんな時、僕はやるせなくなる。
僕が鳥だったら病院以外の彼女に会いに行けるのに。
僕が鳥だったら塞ぎこんでいる彼女を元気づけられるかもしれないのに。
僕が鳥だったら彼女の悩みから解き放ってあげられるかもしれないのに。
医者の診断では意識がないと言われている。
だけど音はすべて聞こえているし、理解もできる。
それに反応できないだけなんだ。
そんなことはないと医者は言うかもしれない。
でも本人が実際にそうなんだから仕方ないだろう。
数日前から毎日窓の外に鳥が来るようになった。
僕が鳥だったらとずっと願ってたからだろうか。
耳からだけの情報を馬鹿にしてはいけない。
間違いなく同じ鳥だ。
ちゃんと声で分かるんだから。
おーい鳥くん、お願いがあるんだけど、ちょっと彼女の様子を見てきてくれないか?
ちょっと待って、それより僕とちょっとの間だけでいいから入れ替わってくれないか?
これでいつでも彼女の様子を知ることができるはずだよね。
僕にできることがきっとあるはずだよね。
でも困ったことが一つあった。
僕は高所恐怖症だったのを忘れていた。
お題「#鳥だったら」に日本語で参加させていただきます。
山根さま よろしくお願いいたします。
関西人ならここで「なんでやねん」が入るでしょう。
さらに私の先入観が邪魔をしました。
鳥だからといって大空高く飛ぶ必要はないわけで、低空飛行でも良くて、なんならピョンピョン飛び跳ねることやポテポテ歩くことだっていいんだから。
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