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天使のお仕事2

 エルって天使が我が家に棲みついた。
 これがまた困ったヤツで天使のくせに自分の部屋、自分の寝床、三度の食事など要求がやたらと多い。
 昨日だってそうだ。

「シュウちゃんって何やってる人だっけ?」
「何もしてねえよ、ただの高校生」
「高校生ってことは未成年? 暇だからお姉さんが色々教えてあげようか?」
「俺が100歳越えたよぼよぼの爺さんでもエルの方がお姉さんだろが」
「私ってそんなに老けて見える?」
「婆さんには見えねえけどな。ていうかエルのホントの姿って俺は知らないから」
「それを知ったらシュウちゃんは変わるの?」
「俺たちとさほど変わらないなら受け入れられるかもしんないけど、想像できないような姿形ならどうすりゃいいか分かんねぇ」

「見せてあげようか?」
「裸の天使をか?」
「そっちがお望み?」
「何も望んじゃねえよ。だから大人しくしといてくれると助かるんだけどな」
「だって暇なんだもん。シュウちゃん揶揄からかうくらいしかすることないよ」
「ホントに迷惑なヤツだな」

「あっそうだ、迷惑と言やぁエル、着てたモノをその辺に脱ぎ散らかすの止めろよな」
「だって私の部屋にクローゼットがないんだもん」
「だとしても自分の部屋の中だけにしろよ」
「それだと部屋が汚れちゃうよ」
「何だよそれ、特に下着は勘弁してくれ。一応これでも年頃の男子なんだぜ」
「使用済みの方が嬉しいのかなって思って」
「もういい、次見つけたら捨てるからな」
「お願い、私を捨てないで」
「話しをややこしくするなよ」


「そんなことよりさぁシュウちゃん、どっか遊びに行こうよ」
「そんな金ねえよ。親の仕送りだけで過ごしてんだぜ、エルの食費だけでも大変だっつうの」
「そんなに食べてないでしょ」
「俺より多いじゃねえか」
「シュウちゃんが年頃なのに少なすぎるんだよ」
「毎月やり繰りが大変なんだよ」
「それは可哀想ね」
「誰のせいなんだよ」
「じゃあ私の食費は何とかするよ。だから遊びに行こうよ」
「食費は助かるな。宿泊代も貰ってもいいんだぜ」
「できるだけ善処するわね。だから遊びに行こうよ~」

「ちょっと待て、2つほど聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「個人的なこと? スリーサイズは一応秘密ね」
「そんなことじゃねえよ。それにエルは伸縮自在なんだろ、聞いたって意味ねえじゃん」
「それはそうね、さすがシュウちゃん」

「まず一つ目だけど、エルの姿は俺以外にも見えるのか?」
「それはどっちでも可能だよ。つまり他の人に見えるようにもできるし、見えなくすることもできるわよ。ついでに言えば特定の人に入り込んで意のままに動かすこともできると思う。もっと言えば半分だけ見えるようにするとかもできるよ」
「何だよその半分だけ見えるっての」
「身体が透けてるとか、上半身だけとかかな。下半身だけもできるけどそれはNGね。前半分とか、後ろ半分とかもナシだから」
「下半身だけだとうるさくなくていいのにな」
「私って喧しいの?」
「色々と邪魔してくれるからなって、ちょっと待て、前半分ってどんな状態だ?」
「やったことないし、自分の姿は自分で見えないから分かんないよ」
「想像するだけでホラーだな」
「ホントだね。って私のことでしょうが」

「例えば他の人に見えなくても俺には見えるのか?」
「えっスルーなの? まあ、いいけど。それもどちらもできるわね」
「じゃあずっと消えてもらうことも可能なんだな」
「勿論それもできるけど、シュウちゃんは私が嫌いなの?」
「好きか嫌いかはよく分からんけど迷惑だとは思ってる」

「で、もう一つは?」
 スルーかよ。

「エルはどうして俺のところに来たんだ」
「天から降って来たんだよ。ここ大事だからよく聞いてね、って来たんじゃなくてくだって来たんだから」
「どっちでもいいよそんなこと。そうじゃなくてどうして俺を選んだかを聞いてんだよ」
「ああそっち。私が選んだわけじゃないから意味とか意義とか基準は分かんないよ」
「じゃあ誰が選んでんだ?」
「簡単にいえば神が選んで私が指示を受けたってことね」
「どんな指示を受けたんだ?」

『|《か》の者と共にあれ

「何だその呪文みたいなの。それで分かるのか?」
「シュウちゃん光ってたからね」
「俺って神たちの間で有名なのか?」
「そうじゃないと思うわよ」
「だって光ってたって」
「ターゲットは光るのよ」
 ターゲットってどういうことだよっていうのは怖くて聞けなかった。

「シュウちゃん遊ぼうよ~」
「さっきも言ったけどな俺は高校生で遊んでばかりいられねえんだよ。エルこそいい大人なんだから仕事しろよな」
「私の仕事は『|《か》の者と共にあれ』。つまりシュウちゃんと一緒にいることだから」
「そんな仕事あんのかよ? それで飯も寝床もこっち持ちってのはどういうことなんだよ。エルはホントに神の手先か?」
「神はね、乗り越えられる試練しか与えないんだよ。だから大丈夫」
「何が大丈夫なんだか」

 エルは今後も居続けるようだ。


前のお話しはこちらからご覧いただけます。 ⇩

今年の8月に一つ目を書いて、同じ月に二つ目を書き上げていたのにずいぶん表に出すのが遅くなりました。何故なんでしょうね?
タイミングはあったはずなのになぁ。


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