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三浦豪太の探検学校

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冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ…
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2022年10月の記事一覧

長時間行動、靴擦れ注意

 先週のコラムで實川欣伸さんと小田原から富士山まで登った話をした。実川さんは富士山の登頂回数の記録(1838回、9月24日現在)を持つだけでなく、数日間掛けて富士山に登るルートを考え実行する。僕は彼に誘われる時、少なくとも一晩中歩き続けることを覚悟する。以前の村山古道も下山まで27時間を要した。  今回は小田原から始まり金時山、西丹沢の山々、そして富士山須走口五合目まで歩いた。連続行動時間は30時間、距離76㌔、累計登高4600㍍、累計下降3300㍍という長くて厳しい道のりだ

富士登山は不死の妙薬?

 9月3日、実川欣伸さん(72)に誘われて富士山に向かった。実川さんはこの時既に1826回登頂。まぎれもなく人類史上最多の富士山登頂者だ。  実川さんは数だけではなく、その登り方にもこだわりがある。富士山8回連続登頂、東京駅から東海道を抜けて富士山登山、大阪にある日本一低い山(天保山)から8日間掛けての富士山登頂などその挑戦は枚挙にいとまがない。  僕が前回、誘われたのは実川さんの1千回目の登頂を記念した日本最古の富士登山道「村山古道」だった。この時は田子の浦から始まり村山

アムンゼンの軌跡

 ノルウェー人のロアール・アムンゼンは20世紀初頭を代表する探険家の一人である。今回のスバールバル諸島で彼が歩んだ軌跡を見ることができた。  彼の最も有名な探検はイギリス海軍のロバート・スコット大佐との南極点到達レースであろう。スコット大佐は学術調査と国家の威信をかけ、アムンゼンは幼い頃からの極地の憧れを実現すべく南極点初到達をかけてのレースが始まった。  結局、イヌイットから極地のサバイバル術を学び、軽量な犬ゾリを使ったアムンゼンが先に到達。スコット大佐と彼の仲間4人は極

迫るシロクマの恐怖

 北極圏に位置するスバールバル諸島では、シロクマとの遭遇は観光の最大の魅力であり、最大の脅威でもある。シロクマは北極圏では捕食動物として頂点に君臨する。その体重は700キロにもなり、時速50キロ以上で走り、時には百数十キロも冷たい北極海で泳ぐことができる。  シロクマの事故はスバールバルでも年2、3件ある。そのほとんどはシロクマ対策を十分とらずに起きる事故で、シロクマにとっても人にとっても悲惨な結末となる。クルーズ3日目、船からゾディアック(エンジン付きゴムボート)に乗り換

最北地 独特のルール

 スバールバル諸島に家族で行って来た。スバールバル諸島は1920年に締結されたスバールバル条約によって定められたノルウェー領土である。この条約は国際的にスバールバル諸島をノルウェーの領有と認める代わりに、条約締結国は、スバールバル諸島に自由に観光、就労ができるうえ、さらにその気になれば移民することもできる。  スバールバルは北極圏に位置しており、最北端には人が定住している。土地の60%は氷河に囲まれ、沿岸はフィヨルド、冬は零下30度、白夜の短い夏には極地に順応した野生動物が闊