見出し画像

長時間行動、靴擦れ注意

2015年9月26日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先週のコラムで實川欣伸さんと小田原から富士山まで登った話をした。実川さんは富士山の登頂回数の記録(1838回、9月24日現在)を持つだけでなく、数日間掛けて富士山に登るルートを考え実行する。僕は彼に誘われる時、少なくとも一晩中歩き続けることを覚悟する。以前の村山古道も下山まで27時間を要した。
 今回は小田原から始まり金時山、西丹沢の山々、そして富士山須走口五合目まで歩いた。連続行動時間は30時間、距離76㌔、累計登高4600㍍、累計下降3300㍍という長くて厳しい道のりだった。

 こうした長時間行動するのにあたり僕が最も気にかけるのは靴擦れである。「靴擦れ?」と笑うかもしれないが、靴擦れができる場所というのは当たる箇所で、そこは行動を続ける限り痛みも傷も悪化し続ける。さらに靴擦れを放置すると感染したり膿など本格的な治療が必要とされる。
 靴擦れはできてから対処よりもできる前の早い対処と予防が大事だ。靴擦れの原因は主に靴と足の一部に圧力のかかる「当たり」と「湿気」だ。当たりは履きなれない靴や靴下が原因であることが多い。登山に慣れていない人がこれから登山をするときに、靴を新調することが多い。しかし、足になじんでいない靴はあたりが起きやすい。少なくとも事前に1週間以上は履いて慣らし、痛い当たり箇所を分っていた方がいいだろう。

 靴下は足の指の付け根に縫い目があり、そこが”ダマ"になり当たりのもとになる。できれば登山用の靴下は縫い目のない「シームレスソックス」があるのでこちらをお薦めする
 もう一つは足の蒸れからくる靴擦れ。長時間行動しているとどうしても汗で足がふやけてしまい、皮が破けやすくなる。靴下の材質は綿よりもナイロンやアクリル等の素材のほうが蒸れを防ぎやすい。
 また替えの靴下を準備するのも有効だ。強行軍に僕は靴下を3つ持って行った。足が蒸れたら靴下を替え、湿気のある靴下はザックの外で干した。常に足が乾燥していることを心がけておく。

 靴擦れは、その挑戦を諦めさせるほどの痛みを伴う。大きな挑戦の前に立ちはだかるのは大きな障害であるとは限らない。細部に気を配って初めて成功するのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?