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三浦豪太の探検学校

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冒険心や探究心溢れる三浦豪太が世の中について語った日本経済新聞の連載記事「三浦豪太の探検学校」(2019年3月に最終章)の、リバイバル版。わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリ…
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2022年3月の記事一覧

多様な登山 異なるリスク

2013年11月30日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先日、ミウラ・ドルフィンズBCで国際山岳医の研修会が行われた。国際山岳医制度は国際山岳連盟(UIAA)、国際山岳救助協議会(ICAR)、国際登山医学会(ISMM)が共同で会議を行い、医師自身が実践的に山岳活動を行いながら、世界各地の山岳環境で医療提供できることを目的に発足した。日本では2010年からこの制度がある。  すなわち山岳の知識、レスキューの知識、医学の知識が兼ね備わっていないと山岳医にはなれない。今回行わ

適正ジャッジあってこそ

2013年11月9日日経新聞夕刊に掲載されたのです  先週、国立スポーツ科学センターで行われたFIS(国際スキー連盟)フリースタイルAレベルジャッジクリニックに行ってきた。  フリースタイルスキーは現在5種目ある。モーグル、エアリアル、ハーフパイプ、スロープスタイル、そしてスキークロスだ。これらの競技はスキークロスを除いて、すべてジャッジの採点によって競技が進められる。  そのため、こうしたジャッジの判断基準を理解することは、今後のフリースタイル競技の流れを知るためにも重要

生きがい追求 健康で長寿

2013年11月2日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  10月13日、文部科学省が2012年の体力・運動能力調査の結果を発表した。その結果は「70歳代の体力は過去最高」だった。また日本人の平均寿命も12年は男性が79.94歳と過去最高、女性は86.41歳でともに前年を上回り、先ほどの体力測定の結果と合わせて見ると、これまで高齢者の取り組みのなかで叫ばれてきた「健康寿命」からさらに一歩踏み込んだ「健康寿命の意義」つまり「生きがい」というのが大きな課題となるのではないか。

父の心臓と家坂先生

2013年10月12日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  2007年、父と共に翌年に控えたエベレスト登山のために中国・チベット自治区にあるシシャパンマ(8021㍍)を登っていた。この遠征で、最も注意すべき点は前年に父が診断された心房細動という心臓の不整脈であった。  心房細動とは洞房結節(規則正しく心臓が脈を打つために必要な電気信号を送るところ)以外の電気刺激が不規則に起こり、心房が細かく震え、心臓が十分に収縮しなくなる。そのために血栓ができ易くなり、脳梗塞や心筋梗塞の引

温暖化 北極圏を漁場に?

2013年7月27日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  「これから北極圏の海は地球温暖化が進むにつれて、もっと重要な拠点となる」  先日、ウッズホール海洋学研究所の本庄丕(すすむ)名誉教授が北極圏についてこう話してくれた。  地球温暖化について語るとき、グリーンランドや南極の氷が解けることが大きな問題となる。もしグリーンランドの氷がすべて解けてしまうと海水面は約7㍍前後、南極大陸の氷がすべて解けるとさらに約36㍍前後も海面が上がってしまうという。  こうなると沿岸部の都市

シェールガスの光と影

2013年10月5日日経新聞夕刊に掲載されたものです。  先週、安倍晋三首相がカナダのハーパー首相とオタワで会談し、「シェールガス」をカナダから日本に輸入することで合意したというニュースが流れた。シェールガスは地下100~数千㍍に含まれている頁岩(けつがん)層に含まれているメタンを主成分とした天然ガスである。  元々、頁岩層は粒子の細かい泥岩の層で、ガスや石油を抽出するのが非常に難しいとされていた。近年、採掘技術の向上と水圧破砕(フラッキング)という技術が開発・確立され、頁