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適正ジャッジあってこそ

2013年11月9日日経新聞夕刊に掲載されたのです

 先週、国立スポーツ科学センターで行われたFIS(国際スキー連盟)フリースタイルAレベルジャッジクリニックに行ってきた。
 フリースタイルスキーは現在5種目ある。モーグル、エアリアル、ハーフパイプ、スロープスタイル、そしてスキークロスだ。これらの競技はスキークロスを除いて、すべてジャッジの採点によって競技が進められる。
 そのため、こうしたジャッジの判断基準を理解することは、今後のフリースタイル競技の流れを知るためにも重要である。特にモーグルは僕が競技を行ってきたときよりもジャッジ基準も洗練され、技のバリエーションも増えている。これまで選手、コーチや解説者の立場でモーグルを見てきたが、改めて評価する側のジャッジとして競技を見ることになるので、とても新鮮な気持ちで臨んだ。

 クリニックの基本的な進め方は、それぞれの競技の映像を実際に何十人かと一緒に見てジャッジシートに書き込み、それをプロクター会議で協議された基準と比較する。プロクター会議とは世界各地のジャッジが集まり、選手やコーチから成り立つモーグルアドバイザリーグループの意見を加えて、今シーズンの大会の結果や傾向を考慮、ジャッジの基準や新しい技の採点方法を決定する会議だ。
 多くの選手を見て評価を繰り返していると、最初はジャッジ同士でばらついていた点数がだんだんと近くなり安定してくる。この作業の過程で、ジャッジは選手が滑る短い間に実に多くの情報を得ていることを実感した。そしてみるポイントも、僕が考えているスキーの本質的なテクニックにとても近いというのが印象的であった。

 僕はスキーの根本的な技術を積み上げ、洗練させ、それを応用することが最も正確なモーグル競技だと思っている。ジャッジ基準の中にこうした要素が根底にあるということは、モーグルが特殊なスキー技術ではなく本質的なスキー技術の延長線上にあるという認識が世界中で広まっているということだ。
 アスリートがそのスポーツの限界を押し上げて、それをどう解釈して基準を作っていくか。フリースタイルスキーに限らず、ジャッジ競技というのは、選手、コーチ、それに勝敗を決めるジャッジの適正な基準と判断があってこそ初めて成り立つのである。


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