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シェールガスの光と影

2013年10月5日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先週、安倍晋三首相がカナダのハーパー首相とオタワで会談し、「シェールガス」をカナダから日本に輸入することで合意したというニュースが流れた。シェールガスは地下100~数千㍍に含まれている頁岩(けつがん)層に含まれているメタンを主成分とした天然ガスである。
 元々、頁岩層は粒子の細かい泥岩の層で、ガスや石油を抽出するのが非常に難しいとされていた。近年、採掘技術の向上と水圧破砕(フラッキング)という技術が開発・確立され、頁岩層に埋蔵されているシェールガスやシェールオイルが掘削できるようになった。新たな化石燃料として注目されている。

 特に米国は世界的にみてもシェールガスの埋蔵量とそれを掘削する井戸の数が多く、米国では「シェールガス」はエネルギー問題の救世主として「シェールガス革命」ともいわれている。
 しかし、僕が今年7月、グリーンランドでウッズホール海洋研究所の名誉教授である本庄丞氏と「シェールガス」について話をしていた時、「米国がシェールガスに手を付けたのは人類として最も大きな悲劇であるかもしれない」と語っていた。

 本庄教授はこれまで海が持つ「生物ポンプ」の仕組みの解明をしてきた。それは海洋生物が二酸化炭素を吸収し、食物連鎖を通じて海底に固定する仕組みである。これで温暖化の予想を数値化する。
 温暖化予想モデルで重要なのは、温暖化ガスの排出量と自然界における吸収量だ。
 シェールガスによる温暖化についてコーネル大学のロバート・W・ホワーズ教授(環境学)は、メタンの温室効果を考慮するとシェールガスの温室効果は石炭や燃料油よりも強いとの研究結果を報告している。
 米国は世界最大の石油消費国であり、世界全体のエネルギーの20%を消費している。それでも米国の石油消費を制限していたのは、自国での石油産出量が少なく、政情不安定な中東に頼っていたからだ。しかし自国が「シェールガス」の原産地になるのであれば、その歯止めすらなくなってしまう。

 日本は太陽光や風力、地熱発電やスマートシティー開発等を進めている。他国にエネルギー依存や環境負担を強いることなく、日本ならではの技術力を生かした持続性のある災害に強い新エネルギーの方向性を世界に示すことができるのではないか。

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