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温暖化 北極圏を漁場に?

2013年7月27日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 「これから北極圏の海は地球温暖化が進むにつれて、もっと重要な拠点となる」
 先日、ウッズホール海洋学研究所の本庄丕(すすむ)名誉教授が北極圏についてこう話してくれた。
 地球温暖化について語るとき、グリーンランドや南極の氷が解けることが大きな問題となる。もしグリーンランドの氷がすべて解けてしまうと海水面は約7㍍前後、南極大陸の氷がすべて解けるとさらに約36㍍前後も海面が上がってしまうという。
 こうなると沿岸部の都市、そして標高の低い島々に壊滅的なダメージを与える。もし沿岸部が浸水により大幅に面積を減らしてしまうと、膨大な人口を養うための耕作面積も同時に失うことになる。
 地球温暖化は避けられない事実として捉え、こうした時代を生き抜くすべを前向きに検討するのが、海洋学者に課せられた使命だと本庄名誉教授は言う。

 熱塩循環(Thermohaline circulation)という地球を表層から深層までくまなく大きくゆっくりと周回する海洋循環がある。この大きな循環は現在の気候や海洋生態系の基盤でもあり、豊富な栄養も循環するが、これまで海流は北極圏まで入らず、その恩恵を得ていないように考えられていた。
 しかし温暖化が進むと、その熱により海の体積が大きくなり、それが太平洋と大西洋の堆積の違いで、太平洋の膨張が大西洋よりも大きくなり、海面の高さに30㌢ほどの差が出てくる。このため、大西洋とつながる北極海にベーリング海峡を通して膨大な量の海水が流れ込むようになるという。
 ベーリング海峡のすぐ南にあるオホーツク海は、海洋循環の恩恵でまれに見る豊潤な海域だ。多くのプランクトンを含み漁場としても名高い。それが北極海に流れ込めば漁場としても有望になる。

 現在、北極海の漁獲が期待されていないのは、近辺の氷河や氷山の解けた水が海に流れ込み、生物が乏しい表層ができてしまい栄養価の高い中層にある海水に太陽光が届かないためといわれている。
 「もし、こうした豊潤な海水をうまくかき混ぜることができたら、北極海域は豊かな漁場となる可能性を秘めている」。本庄名誉教授は無人探査機を使ってその調査に力を入れている。温暖化は確かに人類が抱える問題であるが、悲観的に考えるだけでなく前向きな取り組みが行われている。

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