内部通報UPDATE Vol.8:改正公益通報者保護法を踏まえて①-消費者庁「公益通報ハンドブック(改正法(令和4年6月施行)準拠版)」の公表-
1. 改正公益通報者保護法の施行
2022年6月1日に改正公益通報者保護法が施行されました。
改正公益通報者保護法、「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(令和3年8月20日内閣府告示第118号、以下「指針」といいます。)、および消費者庁の「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年内閣府告示第118号)の解説」(以下「指針の解説」といいます。)については、下記の記事にまとめておりますので、ご参照ください。
また、主に外国企業の日本子会社のご担当者の方々等を想定して、英語版の解説記事も公表しておりますので、ご活用ください。
内部通報UPDATEの連載では、「迫る改正公益通報者保護法施行を見据えて」という副題にて、内部通報制度の基礎から公益通報者保護法の内容の解説、同法に関連するトピックまで、同法の施行日を見据えてさまざまな切り口で解説してきましたが、施行日以降は同法を「踏まえて」内部通報制度の運用を行っていく必要があります。
そこで、今後は「改正公益通報者保護法を踏まえて」という副題に装いを新たにして、内部通報制度を運用していく中で役に立つ実践的な情報を読者の皆さまにお届けできればと思います。
新連載の初回として、2022年6月28日に消費者庁のウェブサイトで公表された「公益通報ハンドブック(改正法(令和4年6月施行)準拠版)」(以下「公益通報ハンドブック」といいます。)について解説します。
2. 公益通報ハンドブックの概要
(1)公益通報ハンドブックの全体像
公益通報ハンドブックは、1頁で「『公益通報者保護法』の内容についてまとめたもの」と自らを定義しており、以下の構成で公益通報者保護法の基礎的な部分を解説しています。
また、参考資料として、以下の資料を掲載しています。
(2)Q&A
公益通報ハンドブックの「Ⅵ. ご質問にお答えします!」という章(公益通報ハンドブック26頁~39頁)では、公益通報者保護法、通報対象事実(通報の内容)、公益通報者、保護要件、解雇その他不利益な取扱い、内部公益通報対応体制の整備、従事者、罰則その他事項に関するQ&Aがまとめられています。
これらのQ&Aの内容を一覧表の形にまとめると、以下のとおりになります。
公益通報者保護法に関するQ&A(基本的事項)
通報対象事実(通報の内容)に関するQ&A
公益通報者に関するQ&A
保護要件に関するQ&A
解雇その他不利益な取扱いに関するQ&A
内部公益通報対応体制の整備に関するQ&A
従事者に関するQ&A
罰則その他事項に関するQ&A
3. 公益通報ハンドブックの活用法
公益通報ハンドブックは118頁に及ぶボリュームのある資料であり、公益通報者保護法に関する情報が詳細にまとめられています。
また、重要なポイントを赤字で示すなど、分かりやすい解説がなされており、公益通報者保護法の知識の習得や整理に役立つ資料と言えます。
特に企業のご担当者の方は、公益通報者保護法、指針、指針の解説という改正公益通報者保護法を理解する上での3点セットを確認するという活用法はもちろんのこと、疑問を解決するためにQ&Aを参照する、従事者向けの研修や全役職員向けの周知・教育のための資料づくりの際に活用するといったさまざまな活用方法が考えられるところです。
4. おわりに
内部通報制度はコンプライアンス・内部統制の「最後の砦」と呼ばれる非常に重要な制度であり、改正公益通報者保護法の施行後、各企業のご担当者の方はさまざまな議論や工夫を重ねながら、内部通報制度を適切に機能させるべく尽力していることと思います。
消費者庁のウェブサイトでは、公益通報ハンドブックなど、有用な情報が随時公表されますので、定期的に確認することをお勧めします。本連載でもさまざまな情報発信を続けていきますので、今後ともお読みいただけますと幸いです。
Author
弁護士 坂尾 佑平(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2012年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、ニューヨーク州弁護士、公認不正検査士(CFE)。
長島・大野・常松法律事務所、Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr 法律事務所(ワシントンD.C.)、三井物産株式会社法務部出向を経て、2021年3月から現職。
危機管理・コンプライアンス、コーポレートガバナンス、倒産・事業再生、紛争解決等を中心に、広く企業法務全般を取り扱う。