三浦法律事務所/Miura & Partners
中国最新法令UPDATE Vol.7:外商投資法施行後の中国新規進出時の手続・留意点(後編)~2022年版市場参入ネガティブリスト、市場主体登記管理条例、市場主体登記管理条例実施細則の公布を契機として~
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中国最新法令UPDATE Vol.7:外商投資法施行後の中国新規進出時の手続・留意点(後編)~2022年版市場参入ネガティブリスト、市場主体登記管理条例、市場主体登記管理条例実施細則の公布を契機として~

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【前編はこちらから】

4. 会社設立登記フェーズ

(1)概要

会社設立登記フェーズについては、直近で法改正が生じています。

市場主体登記管理条例の制定前は、会社設立登記については会社登記管理条例(2016年改正)に規定されていました。この度の市場主体登記管理条例の制定により、会社登記管理条例(2016年改正)は廃止されています。

以下ではまず、市場主体登記管理条例における重要な改正点を紹介します。その上で、会社登記と許認可の関係につき整理しつつ、留意点につき説明します。

(2)旧法令からの改正点

市場主体管理登記条例における変更点のうち重要と考えられるものには、①会社名称予約手続の廃止、②電子化の促進、③即日登記(「当场登记」)、④簡易抹消登記制度(「简易注销制度」)があります。①~③は会社設立の簡素化、④は撤退時の手続の簡素化を図るものです。日本企業にとって中国からの撤退が容易でないことが悩みの種となっており、撤退時の手続の簡易化に関する④簡易抹消登記制度(「简易注销制度」)は注目に値します。

以下では、それぞれについて説明します。

a. 会社名称予約
中国における会社名称管理は比較的厳格で、多くの文言の使用が禁止されています。

会社登記管理条例(2016年改正)においては、会社設立登記に先立ち、名称予約を行うものとされていました(同17条前段)。また、会社設立登記に先立ち審査・承認認可を行う必要がある場合には、先に会社名称予約を行った上、審査・承認申請の際に、予約済みの名称を提出しなければならないとされていました(同17条後段)。このように、会社登記管理条例(2016年改正)においては、会社名称予約が進出手続の出発点となっていました。

市場主体登記管理条例においては、会社名称予約手続が廃止されています。市場主体登記管理条例においては、「市場主体の名称は、申請人により法に基づき自己申告される」と規定されています(同8条)。このように、市場主体登記条例下では、会社名称が法令に従っているかにつきあらかじめ当局が審査を行うことはせず、申請者の自己判断に委ねられるものとされました。

これにより、会社新設手続が簡易化された一方で、もし事後的に会社名称が法令に違反していると判断された場合には、事後的な名称変更が必要となる可能性もあるため、名称の適法性につき事前にしっかりと確認しておくことが重要となります。

b. 電子署名の導入
会社設立登記申請書類に申請人が署名又は押印しなければならない点は、会社登記管理条例(2016年改正)でも市場主体登記管理条例でも変わっていません。

もっとも、会社登記管理条例(2016年改正)においては、この署名を電子的方法でおこなうことを許容する規定はありませんでした。

市場主体登記管理条例においては、新たに、電子署名を許容する規定が置かれています。市場主体登記管理条例実施細則15条2項において、申請者は、全国統一電子営業許可システム等を用いて、電子署名又は電子押印を行うことができるとされています。

会社設立手続の電子化を進めるものと評価できます。

c. 即日登記(「当场登记」)
会社登記管理条例(2016年改正)においては、会社登記機関は、会社登記の申立を受け付けた後、まず申請資料がそろっているか否か、法定の格式にあっているか否かなど、形式的な部分を審理し、その申立を受理するかどうかについて決定しなければならないとされていました(会社登記管理条例51条、52条)。このように、旧法令下では、会社登記申請を「受理」するまでにも一定の期間を要することが前提とされていました。

しかし、市場主体登記管理条例においては、申請資料が揃い、法定の形式要件を満たしている場合には、会社登記機関がその場で確認して登記を承認するものとされています(同条例19条)。その場で登記承認できない場合にも、登記機関は3営業日以内に登記を実施する必要があるとされています(状況が複雑な場合には、登記機関の責任者の許可を得て最大3営業日の延長が可能とされています)(同条例19条)。

このように、原則即日登記が完了することが明記され、会社設立登記手続の迅速化が図られています。

d. 簡易抹消登記制度(「简易注销制度」)
市場主体登記管理条例においては、新たに「簡易抹消登記制度」が設けられています。市場主体登記管理条例33条によると、市場主体が債権債務を発生させておらず、または債権債務の決済が完了しており、費用、従業員賃金、社会保険料、法定補償金、未払税金(遅延損害金、過料)が発生せず、または決済完了している場合で、すべての投資家が上記の真実性について法的責任を負うことを書面により承認している場合には、簡易手続により抹消登録が可能であるとされています。

(3)会社登記と許認可の関係

では、実施予定の事業につき許認可が必要とされている場合に会社登記申請と許可申請の前後関係はどうなるのでしょうか。

市場主体登記管理条例14条では、経営範囲に、登記前に法令に従い許認可を取得する必要がある許可経営項目が含まれる場合には、新会社を設立しようとする者は、登記申請時に許可を取得済みであることの証拠を提出する必要があるとされています。このように、「法令上登記前に許可を取得する必要がある」とされている場合には登記前に許認可の取得を終わらせておく必要があることになります。予定事業につき、登記前に許可が必要なのか、当期後の許可で良いのかは、個別業法等を確認する必要があります。

なお、上記の経営範囲規範記載検索システム(試用版)においては、各事業ごとに、事前の許可が必要なのか、事後許可や届出で足りるのかが整理されており、参考になります。

また、市場主体登記管理条例実施細則22条によれば、新会社の経営範囲に登記前の許可が必要な許可経営項目が含まれている場合には、登記申請時に、有効期間内の許可証を提出する必要があるとされています。許可証が有効期間を明示していない場合で、許可の日から90日を超えている場合には、登記申請者は、許可を与えた機関に対して、許可証の有効期間の確認を行うか、再度許可申請を行わなければならないとされています(市場主体登記管理条例実施細則22条)。これらの規定を踏まえると、許可申請から会社設立登記までをスムーズに行う観点からは、①許可証取得時点でその有効期間を確認し、有効期間の明示が無い場合は予め許可発行機関に対して有効期間の明示を求めること、②許可証取得から90日以内に設立登記まで行えるようにタイムラインを組んでおくことが重要であると考えられます。

5. 小括

中国新規進出に関連する法令が改正されているため、中国への進出を検討している皆さまにおいては、最新の法令に従った検討を行うことが重要となります。


Authors

弁護士 井上 諒一(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2014年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2015~2020年3月森・濱田松本法律事務所。2017年同事務所北京オフィスに駐在。2018~2020年3月同事務所ジャカルタデスクに常駐。2020年4月に三浦法律事務所参画。2021年1月から現職。英語のほか、インドネシア語と中国語が堪能。主要著書に『オムニバス法対応 インドネシアビジネス法務ガイド』(中央経済社、2022年)など

弁護士 趙 唯佳(三浦法律事務所 カウンセル)
PROFILE:2007年中国律師資格取得。2007~2019年森・濱田松本法律事務所。2019年4月から現職

袁 智妤(三浦法律事務所 中国パラリーガル)
PROFILE:2018年中国法律職業資格取得。2018年中国華東政法大学卒業、2021年慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了。2021年7月から現職。

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三浦法律事務所の公式noteです。法律ネタから弁護士インタビューまで。 HP:https://www.miura-partners.com/ 公式Twitter:https://twitter.com/miura_partners (代表弁護士:三浦亮太/第二東京弁護士会所属)