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【速報】内部通報UPDATE Vol.7:迫る改正公益通報者保護法施行を見据えて⑦-内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の当面休止と見直し-

1. はじめに

2022年2月1日、消費者庁は内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の当面休止および見直しについて公表しました。

【参考リンク】
消費者庁「内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の見直しについて

上記ウェブサイトでは、「令和4年6月に施行が予定されている改正公益通報者保護法において、常時使用する労働者数が300人を超える事業者に内部公益通報対応体制整備義務が新たに課されたこと等を踏まえ、今般、内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)を見直す」と述べた上で、「今後、改正法の施行状況や事業者の要望等も踏まえつつ新たな制度を検討することとし、内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)については、当面、休止」する旨を宣言しています。

今回は、当該制度についてごく簡単にご説明した上で、登録事業者への影響および今後想定される動きについて解説します。

2. 内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)とは?

「内部通報制度認証」は、消費者庁の「内部通報制度に関する認証制度検討会」の2018年4月付けの「内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」において導入の提案がなされたものであり、2019年2月から自己適合宣言登録制度が開始しました。この認証は「Whistleblowing Compliance Management System認証」、通称「WCMS認証」と呼ばれており、登録事業者は以下のWCMSマークの使用許諾を受けることができました。

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出典:公益社団法人 商事法務研究会ウェブサイト「内部通報制度認証 内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)の見直しについて

上記「内部通報制度に関する認証制度の導入について(報告書)」2頁では、「コンプライアンス経営の推進や安全・安心な製品・サービスの提供を通じた健全な事業遂行の確保や企業価値の向上に向けて、各事業者の内部通報制度の実効性の向上を円滑に図っていくためには、事業者自らが自身の内部通報制度を審査した結果を登録する自己適合宣言制度と中立公正な第三者機関が事業者の内部通報制度を審査・認証する第三者認証制度を導入することが適当であると考えられる。」、「また、それらの円滑な導入・運用を図るため、まずは比較的簡便な仕組みといえる自己適合宣言制度の導入から行い、その運用状況を踏まえつつ、第三者認証制度を導入していくことが適当であると考えられる。」と記載されているものの、現時点までに第三者認証制度は導入されていません。

内部通報制度認証のうち、「自己適合宣言登録制度」とは、「事業者の内部通報制度を当該事業者自ら評価を行った結果、『公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン』(平成28年12月9日消費者庁)に基づく内部通報制度認証基準(以下『認証基準』という。)に適合していることを当該事業者自らが認める場合において、当該事業者からの申請に基づき指定登録機関が当該結果を登録し、所定のWCMS(Whistleblowing Compliance Management System)マークの使用を許諾する制度」と定義されています(2018年7月13日付け「内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)実施要綱」第2条第1号)。

制度概要については、下記の図をご参照ください。

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出典:2019年10月11日付け 消費者庁 消費者制度課「内部通報制度の実効性向上の必要性」31頁

3. 内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)登録事業者への影響

2022年1月31日時点での内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)登録事業者一覧は消費者庁のウェブサイトにおいて公表されています。

これらの登録事業者の処遇に関し、消費者庁のウェブサイトにおいて、「指定登録機関との契約開始日(登録日)または更新登録日から1年間、引き続き同制度の登録事業者として積極的な宣伝、活動を継続できることとし、またWCMSマークを使用できることといたします」と説明されています。

そのため、既存の登録事業者への当面の影響はないものと考えられます。もっとも、今後認証制度自体が新たな制度に変更されることが予想されるところ、今後の認証の取扱いに関し、消費者庁の動向を確認していく必要があります。

4. 今後の動き

消費者庁のウェブサイトでは、「今後、改正法の施行状況や事業者の要望等も踏まえつつ新たな制度を検討する」と記載されていますが、新制度の具体的内容は現時点では不明であり、未導入であった第三者認証制度がどうなるかといった点も定かではありません。

現在、各社において、迫る改正公益通報者保護法の施行を見据えて自社の内部通報制度の点検や内部通報規程の改訂作業に取り組んでいるところかと思いますが、改正法と併せて内部通報制度認証の見直しについても今後の動きを注視していく必要があります。


Author

弁護士 坂尾 佑平(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2012年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)、ニューヨーク州弁護士、公認不正検査士(CFE)。
長島・大野・常松法律事務所、Wilmer Cutler Pickering Hale and Dorr 法律事務所(ワシントンD.C.)、三井物産株式会社法務部出向を経て、2021年3月から現職。
危機管理・コンプライアンス、コーポレートガバナンス、倒産・事業再生、紛争解決等を中心に、広く企業法務全般を取り扱う。


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