ナイちゃんの華麗《カレー》なる人生の記録 第15話(終)

わたしはナイちゃんからブログ管理者として活動できる資格が与えられたのだ。

ここでもナイちゃんのことを知ってもらおうと、そのときのわたしは活動しようと考えようとしていた。

でも、それはもう少し、あとにしようと思う。

まだ自分の中で解決できていないから。

……パソコンにはメモがあった。

ダークウェブへの入り方である。

ダークウェブとは、検索エンジンに引っ掛からない闇の電子世界のことである。

メモにもロックがかかっていたのだが、ナイちゃんが「もしものときに使って」と託してくれたのだ。

そこには非合法なニトログリセリンを購入する方法、に関する文章があった。

「どうして、そこまで……」

わたしは胸が苦しくなった。

「ナイちゃん、あなたは……本当に世界を変える存在になれたのに……」

ナイちゃんは、ナイは……天才だったのだ。

普通に考えてみればわかる。

高校をやめて、たった一年でインドへ旅立っていた力量。

お金を稼ぐ力は人一倍あって、それでもカレーが好きで、カレーで一番になろうとして……。

わたしは涙を流した。

うっ、うっ、と嗚咽を漏らすように。

ひょうひょうと雪が降り積もる金沢の地。

わたしは今、ナイちゃんのお墓の前で……お墓にボムカレーのルーをかけていた。

それは少し特殊なボムカレーで金沢カレーっぽいボムカレーなのである……実はそれはわたしが発明した。

正式名称は、まだ決まっていないけど、「金沢ボムカレー」か「ボム金沢カレー」にしようと思う。

どうしてそんな、罰当たりなことをしているのかというと、やっぱりナイが喜ぶと思ったからである。

「おいしい、ナイちゃん?」

……ナイちゃんは答えてくれない。

そりゃそうか。

ナイちゃんは、もう、この世界にはいないのだ。

あるのは遺骨だけ。

でも、わたしはナイちゃんが華麗神《カレーしん》として、この世界を見守ってるって信じてる。

だけど……。

「……それでも、やっぱり友達がいないのは寂しいなあ」

わたしには、もう友達はいない。

だって、今までわたしに存在した友達はニセモノなのだから。

うわべだけの関係なんて続かないのである。

いくらナイちゃんが友達になってくれと言ったとしても。ナイちゃんが与えてくれた友達だとしても。

「ナイちゃん、わたしはあなたに生きててほしかった。ひとりぼっちは寂しいよ」

ナイちゃんの墓前にはスパイシーな、いい香りが漂っていた。

わたしは、ただ、ひとり、ひょうひょうと雪が降り積もる金沢の地を離れることにした。

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