3つの好きな映画|神秘のコーカサスに誘われて[ジョージア、アゼルバイジャン、アルメニア]
ジョージア、アルメニア、アゼルバイジャン__ そこはどこ?
国の名前は聞いたことがあっても、どこにあるかピンとこない人は多いはず。そこには理由があって、この地はロシア、ヨーロッパ、アジアの交差点として、さまざまな文化や歴史が折り重なっている複雑な場所なので。
地図を見れば一目瞭然、ロシア、トルコ、イランという巨大な国に囲まれて、大コーカサス山脈の南側で、カスピ海と黒海にはさまれた豊かな自然地形を擁するところ。
その上、ワイン発祥の地であり、世界初のキリスト教国であり、ユーラシア大陸最古の人類の里でもある、美しく深遠なる魅力に満ちた場所。そんな南コーカサス地域の理解が深まる映画で旅した気分になるもはどうでしょう?という話。
サッカーアジア杯で日本が負けたイランは
コーカサスの南側____
神秘のコーカサスに誘われて
ジョージア|エングリ川の中洲
とうもろこしの島
大自然と人間の営みと戦争を描く傑作
春の雪解けとともに、コーカサス山脈から悠々と流れるエングリ川が中州をつくりだす。そんな自然が織りなす豊かな中州で、土を耕しとうもろこしを育てる老人と孫娘の話。
舟で川を渡り中州へ行き、小屋を建て、土を耕し、とうもろこしの苗を植える。毎年繰り返される自給自足の生活はとても幻想的。でもそこは、紛争地帯の境界線。
誰の土地でもない、真空地帯の中洲
ジョージアの中にアブハジアという場所がある。ジョージアは自国に属すると主張しているけど、実情としてはアブハジア共和国として独立状態になっている場所。国際的にもジョージアの一部とみなされているけど、ロシアは独立を承認しているところ。
アブハジアとジョージアの境界線がまさにこの川で、川を隔ててお互いの兵士が睨みあう。老人と孫娘はアブハジアの人で、そこに負傷したジョージア兵が流れ着くことで物語は思わぬ方向へ転がり出す____
人の営みと国の争い、ここは誰のもの?
アゼルバイジャン|山間の列車
ブラ!ブラ!ブラ!
“迷子のブラジャー”を巡るファンタジー
アゼルバイジャンの山あいに実在した街をモデルに、青いブラジャーをめぐるセリフを排して描き切ったファンタジー。
なんとも魅力的なのは集落の中心部を貫通している路線。民家の庭や路地ギリギリに線路があり、線路の上で洗濯を干したり、遊んだり、普通に生活しているなかで、貨物列車が通る時だけ慣れた手つきで片付ける。
イスラム圏の国なので都市部はオイルマネーで奇抜な建物が建ち並ぶ中、山間では牧歌的な暮らしが垣間見れる。そのギャップも愛らしい。
胸いっぱいの愛を。
アルメニア|ノアの方舟
消えた声が、その名を呼ぶ
100年前の悲劇に切り裂かれた父と娘の物語
アルメニア地方は、世界最古の文明であるメソポタミア文明を育んだティグリス・ユーフラテス川の源流に位置する。旧約聖書の「ノアの方舟」伝説の舞台と言われるアララト山が最高峰。
1915年、オスマン・トルコ。夜更けに現れた憲兵によって、アルメニア人鍛冶職人は妻と娘と引き離され強制連行された。砂漠で声を失いながらも、奇跡的に生き延びたナザレットは、生き別れた娘に再び会うため、灼熱の砂漠を歩き、海を越え、森を走り抜ける。
アルメニアは1915年の事件について犠牲者は150万人であり、アルメニア人の民族根絶を狙った「ジェノサイド」だと主張している。一方、トルコはそれを認めず、100年を経た現在でも国際社会を巻き込んだ論争になっている。
歴史上のタブーに触れた、壮大なる物語
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