止まった世界のMIU Observation記録8
5日目
今私は巨大な洞窟の中に居ます。
それは前回の記録地点から2キロメートル東の地表に
突然現れました。
全長は6メートルほどで地表にぽっかりと口を開けており
中から音は聞こえません。
内部は円筒状になっており、入り口付近で斜めにカーブしています。
ライトで照らしても奥が見えないため、
潜入調査を行うことにしました。
これまでに発見した小さい穴と同様に
壁面はゲル状の何かで覆われていますが
非常に層が厚く、シリコンゴムのような感触です。
洞窟内の温度は摂氏マイナス50度と外部よりも暖かく、
所々に氷柱が見受けられます。
氷柱の塩分濃度は低く、毒性もほとんど検出されません。
幻想的な景色が広がっていますが
奥に行くにつれて暗闇は深くなり、
壁面が粘り気を帯びてきています。
洞窟内を20メートルほど進んだ地点で
前方から何らかの反響音を確認できました。
この辺りになると氷柱はなくなり、
代わりに足元2センチメートルほどに水が溜まっています。
頭上からも水滴が垂れ
しずくの弾ける音が静かに木霊しています。
前方の曲がり角の先に生体反応を検知しました。
警戒されないよう慎重に進み、
これより姿を確認します。
バッテリー残量は83%です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?