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止まった世界のMIU Observation記録10

6日目 洞窟の奥に潜む巨大な生命体からの攻撃を受け 右腕を失ってしまいました。 現在は輸送機に帰還し、 オートチャージャーにて充電を行っています。 その生物は水たまりの中で泳いでいたものたちよりも 遥かに大きく、素早い動きをしていました。 洞窟の最深部には円形の広い空間が広がっており 頭部らしき個所にいくつもの穴が開いたそれは 胴体の中ほどから生えた2本の腕だけで器用に地を這い、 私の姿を見つけると鋭い爪で迎撃してきたのです。 腕が鞭のように撓るのが

    • 止まった世界のMIU Observaaaation記録9p@,:

      emergency…… emergency…… 右腕が大きく損傷しています。 ただちにドックへ戻り修理を行ってください。 control roomと通信しています…… 通信できませんでした。 自動操縦に切り替えます。 緊急回避措置。ブースターを起動。 輸送機へ帰還します。 対象の破壊行動を確認。 速やかに回避します。 ……回避に成功しました。 洞窟出口まで残り10メートル。 彩度の上昇を確認。退避成功。 対象が追跡を中断し、引き返していきます。

      • 止まった世界のMIU Observation記録8

        5日目 今私は巨大な洞窟の中に居ます。 それは前回の記録地点から2キロメートル東の地表に 突然現れました。 全長は6メートルほどで地表にぽっかりと口を開けており 中から音は聞こえません。 内部は円筒状になっており、入り口付近で斜めにカーブしています。 ライトで照らしても奥が見えないため、 潜入調査を行うことにしました。 これまでに発見した小さい穴と同様に 壁面はゲル状の何かで覆われていますが 非常に層が厚く、シリコンゴムのような感触です。 洞窟内の

        • 止まった世界のMIU Observation記録7

          4日目 前回の記録地点より6キロメートル東へ到達しました。 周囲にあった砂丘はどんどん減少し、 現在はほとんど平らな地面が広がっています。 今日は2つの発見がありました。 1つ目は地表に開いた幾つもの穴です。 3センチメートル程の丸い穴が等間隔に開いており、 そこからは僅かに空気の流れを感じることができます。 円周部分はゲル状の何かで固められており、 遥か奥深くまで続いているようです。 この地点に至るまではこのような現象は確認できていないため、 何ら

        止まった世界のMIU Observation記録10

          止まった世界のMIU Observation記録6[Includes personal data]

          3日目 前回の記録地点より23キロメートル東へ到達しました。 残念ながら周囲の景色に変化は見られません。 ボディ表面に細かな粒子が付着しており、 検証の結果塩の結晶であることが判明しました。 これは水に含まれた塩分が舞い上がっているのではなく ごく僅かな気流に乗り東の方角から運ばれてきたようです。 引き続き前進します。 今日はそのほかに記録することもありませんね。 そのため私がいつか奇跡的に回収された際、 特定が容易になるようこのObservation

          止まった世界のMIU Observation記録6[Includes personal data]

          止まった世界のMIU Observation記録5

          2日目 先日の記録地より20キロメートル北へやって来ました。 驚くべきことに、ここには広大な水たまりが存在します。 砂丘は水たまりの手前で東西一直線に途絶え 水平線は遥か彼方まで続いているようです。 液体の簡易的な成分鑑定を行いましたが 水素と酸素からなる化合物で間違いありません。 ですがその他に地球上には存在しない物質が含まれているようです。 強い毒性を検知できますが詳細は不明、サンプルとして持ち帰ります。 映像解析から推定される水たまりの深さはおよそ

          止まった世界のMIU Observation記録5

          止まった世界のMIU Observation記録4

          1日目 この星の地表には無数の白い結晶が敷き詰められており、 地球の砂浜とよく似ています。 ですが砂丘は遥か遠くまで続いており、水の気配はありません。 足を踏み出すと地表に凹みはできますが、足首の高さで止まり それ以上ボディが飲み込まれることはありません。 電力消費を考え、輸送機進入時に切り取った搭乗口の欠片を足裏に接着し スキーの要領で進行しています。 ホイールが付いた旧式のボディであれば良かったのですが。 太陽は見えませんが空は明るく 灰色の絵の具

          止まった世界のMIU Observation記録4

          止まった世界のMIU Observation記録3

          自立型AI準備完了。 思考を切り替えます。 …… …… 「こんにちは。私は MIU2999 です。  とある白色矮星の調査にやって来ました。  ですが輸送機がクラッシュし、この星に不時着したようです。  地球上の文献にはこの星のデータはありません。  酸素濃度も……ほぼゼロに等しいですね。  幸いにも輸送機内のオートチャージャーがまだ使用できるので、  内蔵バッテリーと合わせて数ヶ月は活動できそうです。  地球との連絡も途絶えてしまいました。  電

          止まった世界のMIU Observation記録3

          止まった世界のMIU Observation記録2

          目的地へ到着。 搭乗口への信号を発信します。 ……応答なし。 映像解析中……。 搭乗口の著しい破損を確認。 レーザーカッター使用の許可を申請……。 control roomの確認が取れませんでした。 3分後該当システムのロックを解除します。 ……レーザーカッター使用可能。 速やかに破損個所の切断を行います。 バッテリー残量は 97% です。 ……切断完了。 搭乗口が開きました。 内部への侵入を開始。 絶縁体塗料を散布します。 ……散布完了。

          止まった世界のMIU Observation記録2

          止まった世界のMIU Observation記録

          Starting up…… Starting up…… システムはすべて正常に起動いたしました。 緯度経度を計測します。 ……計測できませんでした。 地球からの回線が切断されました。 再接続を行います。 ……接続不可。 自立型AI立ち上げまで24分。 活動可能時間約30日。 非常事態により輸送機への帰還を開始。 GPS信号を南方4キロメートル先より受信。 Observationを行いつつ進行します。 自立型AI立ち上げを中断。自動運転へ切り替わり

          止まった世界のMIU Observation記録