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ここだけの話

実は私はゴーストライターだ。


毎年今の時期になると、長女から依頼される事がある。長女は中学校の教師をしているのだが、学校では秋といえば、“読書の秋”推しのようで、年に一度の読書週間に“先生から生徒へのおすすめの本”について短い感想を書かなくてはいけないらしい。今年転勤したばかりだが、前の学校の時も同じ事を頼まれていたので、この辺りの中学校ではどこもこの時期にこの企画を行っているのだろう。


初めて頼まれた時、「お母さん、こういうの得意やろ?」と言われて「まあな‥」とちょっと偉そうに言ったのがいけなかった。毎年、当たり前のように頼んでくる。今年の分も前々から頼まれてはいたが、提出期限を聞いていなかった。そしていきなり「これ、お願いします」のラインがきて、「いつまで?」と聞くと「明日まで」と言うではないか。そりゃないぜ、と思ったが、そこは趣味が“読書ノートを書くこと”な私。あわてない、あわてない。


長女はこの日に向けて一応本を買って読む姿勢を見せていた。その本は『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。私が以前すすめていたのを覚えていたようだ。私もこの本の感想をnoteに書いていたので、ちょちょっとまとめれば良いか。


と思ったが、これが意外と難しい。まず感想を書く紙(スペース)が狭い。A4の半分。ここに私がnoteで書いたような長い感想は書ききれない。しかも相手は中学生。長女からは、

なぜその本を中学生にすすめたいか
その本から何を学んでほしいか



を織り込んで書いてほしいと依頼されている。
私は短い文章は苦手なの。だから私には長い文章が書けるnoteが良いの。そうは言っても期限が迫っている。とりあえずわぁーっと書いて、最後は「専門家の方が書いた難しそうな言葉を並べた差別や格差についての本を読むより、実際イギリスに暮らす親子の実体験のほうが学ぶ事が多いのかも知れない。何より読み易い。」とまとめてみた。長女からやっとOKが出た。



いやいや、アンタ何様よ。お礼も言わずに。
でも、私自身結構楽しんでいるのも事実なり。生徒たちは、長女の感想をまさかゴーストライターが書いているとは思わないだろう。何だか少し後ろめたさと申し訳ない気持ち。いやいや、それ長女が感じるべきだよね。

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